【イベントレポート】Xsector Kyoto OPEN DAY online
多様なセクターのプレイヤーが集い、対話を通じて社会の課題にアプローチしていくX Cross Sector Kyoto(クロスセクターキョウト)。
広く市民から「京都がもっとよくなる」「もっと住みやすくなる」まちづくりの取組提案を募集し「まちづくり・お宝バンク」に登録・公開するとともに、提案の実現に向けたきめ細やかなサポートなどを行っています。
2020年プロジェクトの最終報告と、ゲストトーク&交流会を2/27に開催しました!「オンラインでコミュニティをどう紡ぎだされてきたのか知りたい」「実践者がどんなまちづくりを目指して活動しているのか知りたい」などの期待を持って、全国から50人の方にご参加いただきました。当日の様子をイベントレポートとしてまとめていきます。
Xsector Kyotoで生まれたプロジェクト
初の完全オンライン開催となった2020年度のグループセッション型プログラムは、全8回のセッションと個別のチームセッションを通じて、京都の未来が良くなる取組や地域課題の解決に向け、参加者皆さんの「やりたいこと」 を整理し、4人のアドバイザーと⼀緒に、想いをカタチにする共通⽬標を考え実践するプログラムです。
今年度は13人が継続参加いただき、5つのチームが生まれました。5ヵ月間の中で、セッションや実践を繰り返しながら生まれたプロジェクトを、5分ずつプレゼンしていただきました。
〈モバイル屋台〉
「自分だけの居場所が作りたい」から始まった、たたんで持ち運べる一人用屋台をつくるチーム。屋台やったいましょう!のプロジェクト名の通り、まずはつくってみることで人が集まりさらなるアイディアに発展していった様子が印象的でした。
〈ふらっと空の下〉
大人も子どもも楽しめる自由な空間、オープンな秘密基地のような遊び場を作ることを目指したチーム。様々なデータをもとに、「なぜ実現できないのか」まで深く追究する姿勢が印象的で、これからの活動が楽しみに感じました。
〈多様性と共生を考えよう会〉
普段抑えて表に出せないものがあるんじゃないか?という違和感から、もっとそれぞれのありのままを語れる場づくりを目指したこちらのチーム。お面やマスクをしてのオンライン対話のエピソードからは、自分自身が心に秘めているものはなんだろうと考える機会になったと共に、「何かを隠したり条件をそろえたりすると、何かを打ち明けやすくなる」という対話の場づくりの工夫が見えてきました。
〈知的探検団Shiru-te?〉
食事は黙食、交通機関は黙乗。 心の元気を失いがちな毎日が続いている中で、コロナ渦におけるコミュニケーションを探るべく手話の楽しさを広げていくチームです。早速手話×食×フードロスを絡めたイベントを開催されるということで楽しみです!
〈オンライン図書室〉
誰しもが持っているであろう、人生に影響を与えてくれた本。それをエピソードと共にホームページで陳列することで、本と経験を誰かに伝えていくプロジェクトです。本自体だけでなく、それを手に取った背景や感じたこと、さらにそれを人に伝えるという経験までも含めることで本の価値も高まり、対話のきっかけになるんだろうなと感じました。
ユニークな5つのプロジェクト報告のあとは、ブレークアウトルームに分かれて、プロジェクトを通しての気づきや発見を話し合い、今後につなげられることを見つけ合いました。オンラインだからこその進め方の良さ、難しさなど、後半でゲストや参加者と話し合ってみたいたくさんの話題が生まれました。
ゲストトーク&セッション
休憩をはさんだのちは、2人のゲストによるトークセッション。オンラインを使って、様々なセクターが集まるプログラムの運営経験が豊富な内田さんと丸毛さんに、それぞれのプログラムのことをお話いただきました。
丸毛さん:自主的な活動が生まれやすいプログラムとは
1人目のゲストは、NPO法人Co.to.hanaの丸毛幸太郎さん。
まちづくり、教育、福祉、など様々な分野で、「チームやコミュニティが本来持っている力を最大限に活かした社会課題の解決」に取り組んでらっしゃいます。
今回は、都市活力研究所と共催したソーシャルデザイナー育成プログラムであるSocial Mirai Design2020を紹介してくださいました。
地域の課題解決に取り組む人材としてのソーシャルデザイナーをどのように育てられるのか、8人のゲストトークをヒントにして、134日間かけてソーシャルデザイナーが活躍する未来を描きつつ、各自で今後の行動を見つけていきます。参加者の内訳を見ると、行政、民間、NPOなどが1/3ずつになっており、異なるセクターの参加者や、各分野でのソーシャルデザインの知見が豊富なゲストから刺激を受ける中で、新しく問いが生まれたり、メンバーへのインタビューをしたり、構想を実現したりなど、参加者それぞれのゴールにたどり着いてプログラムを終えました。講座終了後には、Facebook上で参加者が自主的にグループをつくって交流が続いているそうです。
「正解がないからこそ、自ら新しい解を創り出す」ことをミッションとしたこのプログラムは、コロナ禍は特に関心が高まっていると思いましたし、そのための知る機会、考える機会、学び合う仲間がそろったコミュニティがあるのは貴重だなと思いました。その環境を活かしあいながら各自でゴールを見つけるという設計もまたソーシャルデザイナー育成の大きな後押しになっているんだろうなと思いました。
内田さん:しなやかに変化し学び合っていく共同体をつくるには
2人目のゲストは、Re:public代表の内田友紀さん。地元である福井市と、福井新聞社とタッグを組んで運営し、参加者が地元企業と120日間でプロジェクトを生み出すプログラムXSCHOOL2020を紹介してくださいました。
福井というフィールドはありながら、地域を超えたつながりづくりを最初から目指しているオンラインプログラムであり、普段の活動地域や分野を超えることでしがらみを外すことを大切にされています。
「「ともに学び、ともに変化する共同体」を大事にしています。普段は持てなかった、地域や分野を超えた繋がりは、レジリエンスとして大事で、プロジェクトの外に広がっていくことを一番大事にしています。」
そのための工夫として、月に1回、対面で話す機会も織り交ぜながら、様々なオンラインツールを使ったプロセスを設計されています。
「先にプレゼン映像を見てもらってカンファレンスに参加してもらったり、ホワイトボードツールを活用して話し合ったり、内容は冊子にまとめたりしています。一人語りのラジオやテーマソングも生まれました。」
オンラインだからこそ、保存しやすい、共有しやすい、という魅力があり、コロナ前からそのツールを駆使して運営されていたお話は、手法としても取り組む姿勢としてもとても学びになりました。
2020年は「医療とわたしのほぐし方」というテーマで開催されたこのプログラム。最終プレゼンは3/6開催です!
トークセッション
ゲスト2人のトークのあとは、Xsector主催者の一人である京都市総合企画局の岩田さんも壇上にお呼びして、トークセッションを行いました。
各地から多様な参加者が集まったとき、プロジェクトの種となる「やりたいこと」を見つけるための、進めるポイントや難しさについて話し合いました。
「内発的動機が一番なので、その人が自分の情熱を使って関わることを見つけるために、どんな先入観があるのかに焦点を当てています。」
と内田さん。
一方で、何かしたいけど定まらない参加者にとっては、課題やテーマが提示されている方がプロジェクト化しやすい可能性もあり、バランスが難しいところです。
「Xsectorは、京都市が持っている課題を5個示し、それに対して考えてもらうプログラムにする案がありました。内発的動機があったほうが続きやすいんすが、自主的なまちづくりを支援するので今回のような形にしましたが、バランスが難しいと思っています。」
と岩田さん。
それに対し、様々な見方に気づける仕掛けをプログラムに組み込むとよいというヒントが得られました。
「「繊維産業」や「医療とわたし」など、テーマ領域を明確に決めたことも、抽象的なテーマで開催したことも両方あります。丁寧にプロセス設計すると、いろんな視点での意見が生まれ、結果はものすごく多様になるし、課題を提示しても押し付けにはなりません。ある程度時間と経験は必要ですが、複層的な見方をつくれる設計があればいいと思っています」(内田さん)
そのような普段とは異なる視点からの気づきを得るためには、慣れ親しんだ枠組みから外れる必要がありそうです。そのためのプログラム設計のポイントとして、参加者とゲストの選び方と伝え方が学びになりました。
「いつもとは違うやり方を前提にしようと、「役割を超えて異なる立場の人との協働を楽しむ人、変化を楽しむ人、自分自身を超えていきたい人」を募集するという入り口を意識しています。プログラムが始まってからも何度もそれをリマインドします。「心のパンツを脱ぎましょう」が標語になっています」(内田さん)
「自分の持っている価値観を揺らしまくれるように8人の講師をコーディネートしました。わかりやすい回も、理解できない回もあったようですが、参加者がお互いにフィードバックしあう中で、中間支援を本業とする人が、プレーヤーとしての役割の必要性を体感するなどの変化がありました。」(丸毛さん)
このような、しがらみとなりうる肩書や枠組みは外しつつ、得意なことを使う機会やそうでない考え方を吸収し共有する機会をつくるのがポイントとして見えてきました。
そして、そこから連携や協力関係を築いていくときのきっかけについて伺いました。
「前提として、熱をもって自分自身が話せるかどうかが大切です。大事だと思える課題でないと協力関係を気築きづらいし、結果が他人事になってしまいます。熱をもって話せる課題を持ち、会いに行った人の話を整理して次の人に伝えていくことで関係ができていきそうです」(丸毛さん)
「問題がわかっているものとわからないものとでアプローチが違います。何が起こるかわからないことへのレジリエンスをつくることに重きを置いているので、必要なプロフェッショナルにつなぐことが大事だと思っています。情報や人をちゃんと集めて議論の俎上に載せる体制づくりが大事だと思います。」(内田さん)
これらのお話から、熱を持って取り組みたいことを見つけるためにも、課題を洗練させるためにも、共に取り組む体制をつくるためにも、まずは周りに話してみるのがスタートだと感じました。
全体交流セッション
続いて、ブレークアウトルームで感想や深掘りしたいことを話し合い、参加者からの質問を取り上げて全体セッションを行いました。
地域課題の解決を目指すプログラムで頭を悩ませることの一つが、評価の仕方。個人で地域活動のプロジェクトをするときの評価の仕方について、質問が寄せられました。
「解決を目的にすると大変になってしまいます。それよりも、解決につながるような新しい知見を得ることや仲間が見つかることが大事だったりします。なので最初に、既存の方法で解決できそうな課題か、複雑な課題かを見分けることを意識しています。評価づくりに関わることも大事だと思います。」(丸毛さん)
「一番大事にしていることは何でしたっけ?と関わる人と最初に共有すると、事業自体の成果目標も変わってくると思います」(内田さん)
評価とはそもそも、何がよくて、どれくらいできたのかを判断するもの。何を大事にしたいのかを話し合うことが根本だなと感じました。そのための機会や関係性づくりから、プロジェクトは始まっているんだなと思いました。
これをもって今年度のXsectorは終了。まだまだ各チームの活動は続いていくと思いますし、ゆるやかに、予想外に、発展していくんだろうなと今後がますます楽しみになる一日でした。参加者のみなさんをはじめ、アドバイザーや関係者の方々、ありがとうございました!