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信長と濃姫の映画「レジェンド&バタフライ」との向き合い方

映画に選ばれていない我々

客が映画を選ぶように、映画も客を選んでいます。
そうです、本作品は我々を客として選んでいません。

我々とは、歴史オタクの事です。
もしくは、歴史マニアでしょうか。

逆に、選ばれた人達もいるし。
選ぶも選ばれるも無く、『向き合う』という人達もいるでしょう。

ちゃんと事前にアピールはされていた

我々の多くは既に知っています。
濃姫に関する資料は少なく、いつ何処で死に何処に葬られているのかも不明だと。
もしかしたら今最前線の研究では何か画期的な事があったとしても、ニュース性を持って書籍等の形では紹介されていないといえる状況です。

なので、めんどくさい歴史オタクが観るものではない!お呼びではない!!というか!とにかくお前らは呼んでないから近寄るな!!というメッセージは正しくタイトルレベルから発信してくれていました。

なので、本作品を観て史実との整合性や史料解釈のラインで何かを物申すのはダメです。
ビキニアーマーを着た女の子に防御力を指摘するくらいナンセンスです。

映画に選ばれた人とは

この作品の仕事は、歴史的事実に基づいた再現資料映像を提供することなどではありません。
この時代とキャラクターを借用してストーリーを造り、感動させる事が仕事です。

なので、中の人物の心の動きに寄り添いラストに向けて強まっていく関係性の渦の中で信長と濃姫の愛情の高まりに感極まるのが観る側の心構えです。
というか、そういう意識や構えもわざわざ見せずに素直に感動できる人達の為の作品です。

私は本作品は、中高年カップル等に特に響く作品かと思いました。

選ばれていない人の楽しみ方もある

本記事で言いたい事はこの章です。

どんなに自分向けの作品では無いとの予感が走ったって。
やっぱり、喚び寄せられるのですよ歴史オタクにとっては。

史実との違いを楽しむ

私のようなレベルでは拾いきれるものではありませんが、歴史オタクであれば様々に観ていて「あぁ…… やはりそうきたか」となる部分は沢山あると思います。
そういう、自分の中の歴史との差分を見つけ、この脚本家がどこまで何を割り切ってこのストーリーとしたのかを想像するのも楽しいです。

大正時代の徳富蘇峰・江戸時代の小瀬甫庵による織田信長像の最新最強の具現がここにあると割り切って見れるようになると心のモヤは晴れ一転して毒は裏返り楽しめる状態になるはずです。

映画の目指すものに寄り添って観てみる

この作品は徹頭徹尾、たいして金にならない歴史オタクやマニアなど歯牙にもかけず『売れよう』としているのがわかります。

その売れようとする場はどこか?
内容・作りからいって、海外市場特に欧米市場で売れることを意識しているのは明らかです。

その売り先を考えれば、現在明らかになっている史実の信長像を映画キャラクターに含めようとするのはリスクにしかなりません。
売りたい目線の先にいる人達に、そんな部分の正誤は興味なくむしろ邪魔でさえあるのです。

作品中、信長と濃姫のイメージの海外は中国もインドもスルーして一気に南蛮でした。
というかもう海外に関しては、南蛮しか頭にないです。
そして、それに沿ったシナリオと画が用意されています。

それはそのまま、展開したい海外でのアピールポイントになるでしょう。

プロの仕事と向き合う観劇

もしも、あなたが小説家で。
編集部から依頼を請けて、ある版権キャラクターのスピンオフ小説を担当した時に、さっさとそのキャラを序章で殺して延々と自作オリジナルキャラで話を勧めたらプロ失格でしょう。

脚本家がどんなに歴史造詣に異常に深くても、オーダーが「海外で売れる信長モノで!ヒロインに濃姫据えて!ラブストーリーで!!」だったら!!

……既存の信長像をベースにして、史料が無いがゆえにそれを好機としてやりたい放題キャラを膨らませて濃姫を活かし動かし、愛を紡ぐ物語を書くのがプロでしょう。

私は、本作品の脚本からは己を完全に殺しプロに徹し別個の人格から物語を吐き出して作るような気迫を感じました。
信長が比叡山を焼き討ちする時の決断、それを後悔しないように割り切る姿勢が映画で描かれていますがそれは脚本家の魂の叫びをそのまま投影しているのかと勝手に推測しています。

まとめ

みんなも観よう!!
レジェンド&バタフライ!!

無職へのお布施

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