とりぷるツイン第3話〜映画館で〜
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みくにと皐、葵と梨々、それぞれデートしていたところを出くわし、
4人で映画館に行くことになった。
映画館は混雑していた。
「俺一人でまとめてチケット買ってくるよ。みんなはそこで座ってて。」
皐は、みくに、葵、梨々を近くの休憩コーナーに座らせ、1人チケットの列に並びに行った。
◇◇◇
30分後。みくにたち3人はドリンクを飲みながら、皐を待っていた。
「……えっと」
しーん
梨々と葵は、一言も喋らず沈黙が続いていた。
なんだか居づらいみくに。
「…映画楽しみだねっ。」
なんとか会話しようと試みるが、梨々と葵の2人から返事はない。
「……」
(…会話が続かない…!!…ってかない!!)
みくには、心の中で早く皐が戻ってくるよう願った。
そこへ…
「ごめん!遅くなって…!」
ようやく皐が戻ってきた。
「すごく混んでて、チケット4人近くの席で取れなかったんだ。それぞれ2・2で離れた場所で取ったよ。」
そういうと皐は、1人1人にチケットを手渡していった。
◇◇◇
映画館の中も満員に近い状態だった。
皐とはぐれてしまったみくには先に席に着く。
「なんでお前がここにいるんだよ。」
「え?」
みくにの前に現れたのは葵だった。
チケットの席がみくにと葵、梨々と皐が隣同士になるように、皐は配ったようだ。
◇◇◇
「どういうつもり?」
皐と隣の席になるとわかった梨々は、皐に問う。
「わざとでしょ?チケットすり替えたの。」
「…葵と付き合うことにしたんだ。」
皐は梨々の質問をはぐらかす。
「…話すり替えないで欲しいんだけど。」
梨々は冷静に言葉を返す。
そして、重い口を開いた。
「…葵くんは知ってるの?」
「ん?」
「私たちが付き合っていたこと。」
”付き合っていた”。過去のことだ。
どうも、皐と梨々は過去に付き合っていたことがあるらしい。
「…さあ…。だけど、」
皐は一呼吸置く。
「薄々気付いていると思う。」
◇◇◇
みくにと葵は、渋々指定された席に座っていた。
「…なんでお前と映画観なきゃいけないんだよ。」
「それはこっちのセリフ!!」
たくさんの人で混雑していたため、皐と梨々を探すのを諦めたようだ。
「ってか、なんで皐、お前みたいなやつなんかと…。」
「あ…うん、それは私も思ってたんだけど……って、なんかしなっと失礼なこと言ってない!?」
また、口喧嘩が始まりそうだった。
「てか、デートの時ぐらいもっとおしゃれしろよ。そしたらもっと可愛いのに。」
「余計なおせっか…!」
(……え?)
ドキン
みくには葵の言葉に少し顔を赤らめる。
(…可愛いって思ってくれてるのかな…。)
皐に対しての感情とは違う葵への感情に少し戸惑うみくにだった。
◇◇◇
映画が終わり、ようやくみくに、皐、葵、梨々の4人は再会できた。
気まずい雰囲気になりそうだったが、すかさず皐はみくにに話しかける。
「みくにちゃん、ごめんね。俺間違って配ったみたいで。」
「あっ、ううん、大丈夫。面白かったね。映画。」
みくにが無難に返す。皐もそれを見越してみくにに一番に話しかけた。
「わたし、もう帰るわ。迎えがきたみたいだから。」
梨々はそういうと後ろを振り返った。
そこには、奈々と武生の姿が。
「武生!?」
みくには驚く。
梨々は奈々の方に向かった。
「奈々、帰りましょう。」
「ああ…。」
奈々は4人の様子を冷静に見ていた。
「じゃあ皆さん、ごきげんよう。」
坂井姉妹は、そのまま帰っていた。
残ったみくにと武生と皐と葵。
異様な空気になりそうなのを察知したみくには、
「わ、わたしも、武生がいるからもう帰るね!」
といって笑顔で手を振り、みくにと武生はその場を去った。
そして、皐と葵だけになった。
葵は、皐のことを疑っていた。自分と梨々を引き離そうとした行動を取ったからだ。
「皐…、お前まさか…。」
よもや、皐と梨々は付き合っているのでは…。梨々に片想いしている葵はすでにそんなことをよぎっていた。
「梨々とは、小6の頃に同じ塾で知り合って、付き合っていたが、今はもう別れている。」
皐の言葉に葵は少し驚いた表情をする。
「お前が梨々と付き合うことになっても俺には関係ない。好きにすればいい。」
皐はどこか切ない表情を浮かべながら、葵にそう話す。
「…先に帰ってる。」
そう言い残し、皐もその場から去った。
「……」
いつも冷静な葵だが、この時は気持ちの整理が追いつかず、一人しばらく呆然としていた。
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