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嶋田青磁
2019年3月6日 12:52
砂粒の混じる風が頬を強く打ち、熱の籠もる痛みが唇を震わせた。草木の萌える土はなく、乾いた地の裂け目は暗く深い。とうの昔に枯れ果てた灌木にとまる黒々とした鴉(からす)の群れの、虚しい笑い声だけが残響するさまは、しかし現である。果てない荒野を歩みながら、わたしは外套の内にかくす青い星の存在を常に想った。「この仄青くかよわい光を、守ってゆかねばならないのだ。」唯一残された使命の断片と、傍若無人な風だけ
2019年1月25日 18:40
詩人は駆ける天蓋の閨にねむる貴方の烟る横顔薔薇色の頬のため 綴られた韻律揺れ惑う抒情斬り閃く散文円やかな調べ 蒼ざめた唇に匙でそっと親鳥のように言葉をはこべば たちまち春が咲きこぼれ冬が雪解けて頬に紅みさす 夢見るような瞳と慈しみのまなざしは焚べられた詩の其々が灯す炎 金星の差延べる手をとり詩人は旅する腕一杯の詩篇と倶に銀色の砂浜を駆け貴
2018年12月5日 21:33
時は満ちた 遠く鐘の音が告げるのは出奔 絡む蔦を剥ぎ門を開け傷ついた手は光芒をつかむ 金色の血が奔流となり褐色の瞳を希望に燃やす 鳴り響く鼓動溢れだす生命の躍動長い行路の始まりにおまえはいる おまえには翼がある明くる大空へ地を蹴って飛ぶ翼が 冒険と愛が青空の遥か高み雲の向こうに待つだろう 透明な追い風が必ずやおまえを助ける 新しい未来の
2018年11月30日 23:16
雪原と紛う白妙の砂漠砂粒はすべて諦念の化石である氷河のように永い時をかけ生の淵へむけ悠然と流れ往く 空と地平線の狭間一羽の鳥が白い翼を瞬かせ光の線を引いた 逃げ水を追い虹の都を夢見少女たちは旅を続ける この世界が巨大な砂時計であると知りながら #詩 #散文詩 #自由詩 #文学 #哲学 #小説
2018年11月12日 00:51
幽かな波音に呼び覚まされた昨夜から降り続いた雨音はなく、月の女神によって夜気のヴェールがかけられた世界は静寂のエーテルで満ちていた 満月の明かりが室内を朧げに照らし、天井には光の波紋が仄かに揺らめく レースのカーテンを開けると、潮騒と海の香りが、恍惚を伴ってわたしを抱擁した髪の、耳の、あらゆる隙間に潮の甘い風が指をすべらせる わたしは出窓に腰掛け、ネグリジェの裾を垂
2018年10月7日 22:31
薄青いステンド硝子が、寂寞としたサンルームに水面のような光を映す。その水源は、此処から遥か遠くであった。 立ち枯れた観葉植物は隅で静かに眠り、埃をかぶった八角形のテーブルと椅子は、あの女(ひと)が立ち去ったときのまま何も言わずに佇んでいる。こちらに向いたままの椅子が、なにかを言おうとして押し黙っているように思えて、わたしはたまらず目を逸らした。 邸の部屋から部屋へうつるたび、