『鬼太郎誕生』感想 2回観て気づいたこととか
昨年11月17日に公開してから未だに(1/19現在)上映が続いている『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。
俺はすでに1回観てるんだけど、友達に誘われたので2回目を観てきました。
中身知ってても面白かったよ。
むしろ1回目では見落としたポイントに気がついたりしたので2回目も良かったよ。
以下、気がついたこととか好きなポイントとかあれこれ。
以下、だいぶネタバレがあります。注意。
◆現代・廃村を訪れる記者
映画冒頭、鬼太郎を追って山奥の廃村を訪れる雑誌記者の山田。
荒れ果てた村にあったのは鎧武者、地下への穴、無数の鳥居、積み上がったベッド、なんか喋るキモい玉。
初めて見た時は「一体ここで何があったんだ……」で始まって、そこに秘められた物語を追う形になるけど……2回目に見るとここには物語の結末が揃っていて、全く違う見え方になっていいですね。
特になんか喋るキモい玉。1回見ただけでも玉の正体はわかるんだけど、「時貞は70年経っても転がり続けている」ってもっかい見せられるとここをコミカルに受け取っていいのか迷う。
玉のブッ飛び方はギャグっぽいんだけど、あのジジイとんでもないやつだからなぁ。
しかし70年前に時貞がキモ玉に変えられたのは窖の底だったので、あの位置にあるのはだいぶ浅いな。
鬼太郎がちょくちょく来て上へ下へと蹴り飛ばしていたんだろうか?
……あ、いや……目玉のおやじが70年ぶりに来たって言ってたな……じゃあ違うや……。
まぁあそこにはその他の妖怪もいるし、オモチャにされてきたんだと思うのが妥当すかね。
◆列車で咳き込む女の子
物語序盤で、哭倉村へ向かうために列車に乗る水木。
車内では乗客のオッサン達がタバコをガンガン吸い、乗り合わせていた女の子は何度も咳き込む。
昭和31年を舞台に描かれる『ゲ謎』。劇中ではタバコがかなりの頻度で登場して、会社でも列車でも道端でもみんなお構いなしに吸う。めちゃくちゃ吸う。
この「今とは違う時代」を印象づけるために、咳き込む女の子を配置したんだろうな……と、最初は思ってたんだけど。
2回見てわかったけど、この子はどうやら「M」を精製するための屍人の材料として連れて行かれる途中だったみたいすね。
物語終盤で舞台が窖にある地下工場に移った時、乙米の「村人は屍人にする人間をさらってきている」のセリフに合わせて、女の子が持っていた人形が捨てられているゴミ置き場と、アップになった屍人の一人が咳き込む様子が映る。
最初に見た時は物語の確信が語られることに気を取られて人形の存在は速攻で忘れ、「屍人の咳」にも気づかなかったんだけど(そもそも屍人はもがき苦しんでるから、咳してるのわかんなかった……)、わざわざアップで人形を強調してきたなら、あの女の子と考えていいと思う。
……そう思うと、もしかすると女の子が咳をしていたのはタバコのせいではなく、そもそも何か病気を患っていて「治療するためにお医者様のところへ」とか理由をつけて連れて行かれる途中だったのかもしれない?
……と、ここまで書いてたら、女の子に関して気になることを思い出してしまった。
列車の中で水木がマッチを擦ると周囲が暗くなり、ゲゲ郎が現れて死の警告をしてくるけど、これを境にして女の子が消えてる……?
※追記
Youtubeに公式で本編映像が上がってたので見直したら、そんなことはなかった。
最初から水木とは離れた席に座ってたし、明るくなってからも画面に映ってる。
以下、勘違いメモです。
いや、ちょっと記憶が定かではないんですよ。
女の子とゲゲ郎は同じ席に座っていて、暗転の前後で入れ替わるように姿を消したような気もするし。最初から水木とは離れた席(ゲゲ郎とは別)に座っていて、周囲が元に戻った時も画面外に座っているであろう女の子の咳は聞こえていた気がする。
もう一回見て確認したいところだな……。
ただまぁ、姿を消したとなるとなんで?っていうのが説明できないから、俺の気のせいだとは思います。
連れ去る村人は普通の人間(のはず)だから突然姿を消すことはできないだろうし、人間を愛するゲゲ郎が逃がしてあげたとしたら結局村まで連れて行かれて屍人になっちゃったじゃんという笑えないギャグになってしまうので。
……しかしこの列車のくだり、てっきり「咳き込む女の子に配慮する心優しき水木」みたいな描写になると思って見てたけど、全然そんなことはなかったね。
◆遺言状公開シーン
俺ここ好きなんすよ。
いや、気づきとか伏線とかじゃなくてただ単に好きなだけなんだけど。
絵面が『犬神家の一族』みたいでいいですね。
というか犬神家を意識して作ってる部分はあるんじゃないかと思うんだけど、どうなんでしょ。
突然現れる白塗りの男はスケキヨだし、丙江の「私の取り分は〜?」のセリフは、犬神家で「何よ!私のことなんて一言も書いてないじゃない!」って言ってたのに対応するなぁと思ったり。(あれ言ったの誰だっけ?小夜子?)
ただまぁ遺言状発表直後の大乱闘は犬神家の比じゃない大暴れでしたね。
人々が動いた瞬間、巻き込まれないようにカバンを持ってサッと立ち上がる水木がなんだかカッコよくて好きだ。
というかこのくだり、水木の行動がいちいち好きなんだよね。
野心を隠して畏まった態度を見せたり、それでも時弥の無邪気な呼びかけには軽く応えたり。
あと「時麿だと!?健在であったか!」の言い方とか。
少女に助けを請われる主人公ムーブを堪能したあたりで、龍賀のスケキヨこと時麿兄さんがギャン泣きし始めてなんとなく場を収めるのだった。
◆因習村の因習一族の因習
乙米から語られた「龍賀一族の女は霊力の高い子を生み出すため、当主と子を成す」という因習。
主に沙代の身に起こった出来事として描かれたけど、ここの主語が「龍賀の女は」ということは、これは沙代に限ったことではないということになる?
たぶん沙代と時弥の父親も、克典と長田じゃなくて時貞なんだろうな……。
しかし、克典は真実を知らなさそうな感じはする。あの扱いだし。
一方で長田は全部知ってそう……っていうか、長田が時弥と話すシーン全くなかったな?
一緒に映ってるのも、親族が全員揃ってるとこだけだし。
“息子”に全然興味ないんだろうな、長田……。
そして龍賀の次女である丙江。
本編見てると特に気にならないけど、パンフ買って家系図見てると(窖の封印に専念させられた時麿、正気を失った孝三は別として)丙江だけ配偶者も子供もいないことが気になってくる。
あの家で「ただの独身」ってことはなかろう。
その辺を匂わす情報は「駆け落ちしたが連れ戻された」というセリフが一言あるだけなんだけど、語られてない設定が山ほどあるんだろうな。
◆窖の底にあったもの
クライマックスでゲゲ郎が狂骨の怨念をその身で受け止めるべく、池の底にあった槍を引き抜くけど。
槍はドクロの山を貫くように刺さっていた上、周りにもキレイに骨が並べられてましたね。
(……こういうのなんて呼ぶんだろう。儀式的な目的で作られた……「魔法陣」じゃないけど……なんかそういうやつ……。「祭壇」もちょっと違う。)
本編では特に説明はなかったけど、おそらくは窖の底に血桜が植えられる前に、幽霊族を狩ってきた裏鬼道の一派が彼らを利用しようと幽霊族の亡骸で怨念の依り代を作ったんだろうな、と思うとオカルトっぽくてすごくいい。
この映画、説明されないけど気になる要素が多すぎるぞ……。
◆エンディング曲
事件の後、水木が妖怪夫婦と(再び)出会う様子を描くエンドロール。
流れる音楽は「カランコロンの歌」のインスト版で、雰囲気バッチリですごくいいと思うんだけど。
同時に、作品にマッチした歌詞のボーカル曲が流れててもよかったかな……と思ったりもする。
ここで「♪ゲゲゲのゲ〜」とやられてもちょっと違うと思うから難しいとこなんだけど。
どんなのがいいかっつーと……いや、なんかわかんないけど……米津とかに書いてもらったらすごくいいのできるんじゃない……『シン・ウルトラマン』の時とかすごくよかったし……幽霊族の孤独と人間への愛を歌ったいい感じのやつとかできるんじゃないすか……。
そういうのがあったら嬉しいね、って話。
そうそう、エンドロールといえば。
大抵の映画はどんなに感動してもエンドロール中に涙が引いて、シアターが明るくなる頃には「なんすか?自分泣いてませんけど?」ヅラで外に出て行くんだけど。
ゲ謎はエンドロールの後に「墓場から這い出た鬼太郎を水木が受け入れる」シーンがあるんすよね。
そこでバーンとタイトル「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が出ておしまい。
ここがとてもよくて最後にまた感動してしまうのだ。
……ちょっと深読みしすぎというか、思いを入れすぎな見方かもしれないけど。
1回目にゲ謎を見てからネットで色々調べたら、「映画の予習に、アニメ鬼太郎(第6期)の1話を見ておくと良い」ってあったんですよ。
まぁ、そもそもゲ謎は6期の前日譚の位置付けみたいだし。
そこで1話を見てみると、人間からの「なぜ鬼太郎は人間を助けてくれるのか?」の問いに、目玉のおやじが「水木という人間に世話になったから」って答えてるんですよね。
ここで水木が受け入れたから、人間の恩を受けた妖怪少年は人を守ることになるわけで。
そういう考えるとこのシーンは、単なる妖怪少年の生誕ではなくヒーローのオリジンという意味が込められていると思うととても熱い。
まぁなんというか俺はヒーローのオリジンに弱いのだ。
とかまぁそんなことを考えてると最後にまたグッときちゃって、シアターが明るくなっても全然泣いてるんですね。
友達と一緒だったんで、映画で泣いてるとこ見られんのはちょっと恥ずかしかったです。
◆入場者特典
何回か入場者特典出てたみたいなんだけど、12月に見た時は配り終わったのかなんももらえず。
今回は4枚組のステッカーをもらいました。
特典は第4弾らしく、この4枚ってのが過去の入場者特典の絵柄だとか。(うち2枚が第1弾の絵柄。)
これがまた……これがさ〜〜〜〜〜〜。幼い鬼太郎と父母・水木が幸せそうに過ごす様子のイラストでさ〜〜〜〜〜。
あれだよ。ファンアートでめちゃくちゃ描かれてるやつ。
本編では叶わなかった幸せな幽霊族一家(と水木)の姿。
数枚のイラストではあるけど、「救いのあるif」が描かれるのはちょっといいですね。
いやまぁどうあがいても本編はアレだからなんちゅうもんを作ってくれたんだみたいなことも思わなくはないけど。
しかし過去3回の絵柄が一度に手に入ったのは嬉しいですね。
いいタイミングに行った。
◆その他・一言で終わる感想
・「クリームソーダを喫しました」って言い回しを真似したい。
普段は敗北ばかり喫していますので。
映画見た後に入ったファミレスでとりあえずファンタのメロン味を喫した。
・ちゃんちゃんこが誕生するところは鬼太郎にそんな詳しくない俺でも「アアーッ!あれは鬼太郎が着ているチャンチャンコ!そうか!ここで生まれて鬼太郎に受け継がれるのか!」っていう興奮があってよかった。エピソードゼロの良さ。
・古川登志夫の「ねずみ」が好き。
あの声であのキャラクター、とてもいい。
退場の仕方もいい。
◆最後に
俺は鬼太郎はちゃんと見てこなかった(世代的には小学生の頃に第4期がやってた)けど、およそ一般的な鬼太郎のイメージを持っているだけでも『ゲ謎』は十分楽しめましたね。
しいて言うなら、「水木が妖怪夫婦と知り合い、最終的に鬼太郎と出会う」経緯の部分は先に知っておかないと、エンドロールの内容がわからないかもしれない。
……俺鬼太郎そんな追ってなかったのになんで知ってたんだろうな。そこだけ調べるか何かしたのかな。
図書室かどこかで「鬼太郎大図鑑」的な本を読んだような気もするけど、定かではない。
Twitterでバラバラと思いつつままに感想書くのもあれかなと思ってまとめて書いてみたけど、しばらくぼーっと考えているとまた何か思いつくかもしれない。
そん時はまた追記とかしようかな。
ひとまずこの辺でおしまい。