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那覇のとある地区で不思議体験

全く、怪談話のつもりはない。
しかしながら、目に見えないモノからのダメージがあまりに大きかったのと、経験したのが私だけでなかったので書き記すことにした。

その日は夜、那覇に到着した。
那覇に住む友人がありがたいことに空港まで迎えに来てくれ、ホテルまで送ってくれた。
せっかくなので一緒に夕飯を食べよう、ということでホテル近くの居酒屋さんにて待ち合わせ。

そのお店は友人のお姉さんの同級生がやっているお店。焼き物が豊富で味もよく、地元客に評判のお店だ。

私は一旦ホテルにチェックインして荷物を置き、居酒屋へ向かった。
初めて泊まるホテルで「少し古ぼけてるな」と思いつつもエレベーターに乗った。
そこまでは良かった。

しかーし、部屋へ入った途端に言いようのない圧迫感を感じる。
圧迫感、いや、空気が薄い上に淀んでいる。

居酒屋に友達を待たせていたので、圧迫感に気を取られている場合ではなく、すぐに部屋を出た。

居酒屋の料理はとても美味しく、私たちは久しぶりの再会を楽しんだ。
翌朝離島へ行く船に乗るため、酒は飲まなかった。

途中で「今日泊まるホテル、ちょっとやばいかもしれん」と友人に話してみた。
友人は「あそこのホテル、フランス料理のバイキングが美味しかったよ」と言い、再びビールのジョッキを傾ける。
なんの慰めにもならない言葉をありがとう。

さて、楽しい飲み会がお開きになってから。

部屋に戻ると、相変わらず私を出迎える圧迫感。
嫌だな……と思いつつも、翌日からの離島へ行く荷造りを始めた。

ところが……なのだ。
慣れているはずの荷造りが、遅々として進まない。
時が経つにつれ、ただでさえ低い思考脳力がどんどん低くなっていくようだ。
それどころか頭が重くなり、頭痛までしてきた。
気持ちも悪くなり、まさに三重苦。

何か食べ物が当たったのかな、とトイレに行ってみたが吐き気はあっても嘔吐するわけでもなく、状況は一向に良くならない。

しまいには座っていることもままならなくなる。こんなことは初めて。
結局、横になったまま荷物を整理し、どうにかまとめた。
まとめたというよりもカバンに荷物を放り込み、ファスナーを閉めただけ。大げさではなく、息絶え絶え。

予定時刻よりだいぶ遅くなって床に着く。
なんでこのホテルを予約してしまったんだろう。

寝る段になり、まず枕がやばい。
頭を乗せるとグリグリとこめかみを押さえつけられているよう。
ダメだ……と観念して、枕を限りなく部屋の入り口付近に隔離し再び目を閉じる。

とにかくあと数時間。うつらうつらしながら夜が明けるのをひたすら待つ。
夜が明けると、私を煩わすこの禍々しい存在が力を失うことをどこかで知っていた。

予定よりも早めにホテルを後にする。
半分以上、身体を毒されたイメージ。
ズタボロの落ち武者だ。

外へ出た途端、なんて爽やかなんだ。
清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
久しぶりに息したぞーー。


あまりのキャップに驚く。
あのホテルはきっと、カビだらけだったに違いない。そう言い聞かせた。

頭の右側に一晩中、部屋をガシャンガシャンと動き回る鎧兜の武士が見えたが、ここは沖縄。
サムライ、いないいないと片付けた。

心のどこかで「悪霊ホテル」という言葉もよぎったが、もう二度と泊まらないので消し去った。
忘れよう。さようなら。

離島での数日間を楽しみ、再び那覇に戻る。
またしても友人が迎えに来てくれて、一緒に飲みに行く。

「やっぱ、あのホテルやばかったよ。やばい通り越して、タチ悪かった。」と一部始終を話すと、友人が実はさ……と続ける。

私と飲んだ日の夜、友人はその居酒屋の夢を見たそうだ。トイレで用を足している夢。
用を足していると、扉の向こうで女性の歩く音が。

コツコツ……コツコツ。

ヒールの高い靴で、大して広くもないトイレの中を行ったり来たりと歩き回る音。

友人は個室内で硬直し、息を潜める。

そして扉の向こうから聞こえてきたのは……

何で閉めたのよーーー!!


という抗議の声。
そこで目が覚めた。

意味不明の言葉だが、友人には心当たりがあった。
トイレに入った際、窓が5cm ほど開いているのが目に入り、隙間が苦手な友人は迷いもなくその窓を閉めて鍵をかけたらしい。

どうやら、夢に出てきた女性はそれが気に入らなかった様子。

これは後付け情報ではあるが、あの辺りはあまりいい土地ではないと言われている。

少し霊感の強い友人は、私たちの行った居酒屋に入った途端「おえっ」と口をついたらしい。
失礼な話であるが、条件反射はどうしようもない。

ホテルと居酒屋はまさに目と鼻の先。
簡単に言うと斜め前の距離。

何が棲んでいるのか知るよしはないが、深堀もしたくない。

どちらかというと、その土地で何かがあったというより、禍々しいモノが集まりやすい気がする。
タチの悪いモノが、行き場のないモノを呼び寄せるという感じ。

あ……書いてて思い出した。
そのすぐ近くで2年前に殺人事件もあったんだ。

やっぱり呼び寄せる土地だと思う。
触らぬ神に祟りなし、神なのか得体は知れぬが近寄らないに越したことなしだ。

店の料理はおいしい。
トイレに入った時、窓が開いてたら閉めないことをオススメする。

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