車の前をクロネコが横切ったら マカピーな日々#0466
マカピーです。
ネパールに滞在したばかりの頃、大きな道を走行していた仕事場の運転手のハリさんが突然脇道に入っていったのです。
マ:「ハリさん、この道路の先で工事でもしているの?」
ハリ:「いいえ、してません」
マ:「じゃあ、なんで直進しなかったんですか?この道を行くと遠回りになりますよね?」
ハリ:「ネコ・・・、さっき黒猫が車の前を・・・」
マ:「そりゃ民家近くだったらネコもいますよ、でもどうしてですか?」
ハリ:「・・・・・」
すると英語がおぼつかないハリさんに代わって同乗してたキヨコさんがマカピーに説明してくれました。彼女はマカピーよりも3年ほど長く住んでいたのでこちらの事情に詳しかったのです。
キヨコ:「マカピーさん、ネパールの人は車の前で黒猫が横切ると不吉な事が起こると信じて道路を変更したり、しばらく止まって他の車に行かせてこの車に悪運が降りかからない様にするのよ」
マ:「そんなこと言ってたら、時間通り走れないじゃないですか!」
キヨコ:「でも、こちらの習慣はそうなんです。彼らが嫌がる事を無理強いできません」
マ:「それってヒンドゥー教の教えなんですか?」
キヨコ:「(笑) 違うでしょうね。地元の習慣でしょうね。ビスターリ(ネパール語で「ゆっくり」の意味)と余裕を持つことです」
マ:「フーン、そうなんですね」
10月になるとネパールでは最大のお祭りと言われる「ダサイン」が行われ仕事場もお休みとなります。
このお祭りの中で最も重要視されているのが、犠牲の血を使っての「プジャ」(祈禱)です。
特に車両や自転車やツールを持ち寄って、そこに生き血をかけて清め一年の交通安全を祈るというかなり生臭い儀式があります。
マカピーの職場の車や日本人の同僚の車などを持ち寄って、皆で炊き出しをします。犠牲になるのは去勢していないオスのヤギが一番ポピュラーなんです。
マカピー達は同僚の家の庭に5台ほど車を並べ、それぞれの運転手が車をきれいに洗車して工具も前に並べます。
そこへマカピーが2頭のヤギ(玉付きは「ボカ」と呼ばれます)を買ってきて、運転手に手渡します。
車の準備ができると、運転手はヤギを連れてきてその顔面に容器の水をかけます。
当然ながらヤギはブルブルと頭を振ります。
これがプジャの準備ができた合図となり、運転手さん4人がそれぞれの足を持ったら、一人が素早く頸動脈をナイフで切ると血がピューッと飛び出ます。
その方向を車に向けて車の間をぐるーっと回ると途中で血の流れ衰えると、次のボカが犠牲になり最後は車載ツールまで血に染まります。
犠牲となったボカの遺骸の口にはその尻尾の一部がくわえさせられます。これで犠牲となったヤギの魂が天に上るらしいです。さらに車の車輪には、ヤギの皮下脂肪の付いた皮膚がペタッとくっつけられました。
(なんと、ロイヤルネパール航空のジェット機の車輪にもこれがあった時は納得しました!)
食事は別の買ってきた肉で料理してもらい、皆でロキシー(焼酎)を飲んでお祝いし、最期にネパール人スタッフや運転手さんにはこのボカの肉を分けて持ち帰ってもらいました。
プジャの様子は文章からでも血なまぐさく感じるかも知れません。気分が悪くなった方にはお詫びいたします。
マカピーの子供たちも、毎回声もたてずに目を丸くして見ていました。そしてマカピーも最初は同じでしたが、5年間ネパールに暮らすうちに次第に風俗習慣や宗教の中での儀式が馴染んでくるのが分かりました。
ある外国人の家庭の運転手は、ダサインでのプジャを雇い主にやってくれるよう依頼しましたが「そんな迷信は受け入れられない!」と断られたそうです。
しかし、運転手さんたちにとっては死活問題なんです。プジャをしておかないと事故に遭うと信じているんですから。
安い給料の中からニワトリを買ってきて、雇い主に見つからないところでこっそりとプジャする運転手もいたそうです。
それさえも買えない人はトウガン(冬瓜)でプジャをして何とか交通安全を祈るのでした。
国際化だ、異文化理解が必要だ言われずいぶん経ちました。特に若い世代にはこれからもいろいろな機会を利用して、異文化に触れてもらい感性を高めてもらいたいなあって思うのでした。
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。ダサインの後でマカピー息子の間では「プジャごっこ」が流行りました、ヤレヤレ。
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