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意気のあった二人の会話 マカピーな日々#0448

マカピーです。

ネパールで仕事をしていた頃日本医師会長が来ました。

マカピーは医療関係の仕事をしていたので、その医師会主催のホテルのレセプションに招待されたことがありました。

マカピー妻をともなってホテルのバンケットにむかう招待客の列に並びました。

保健省関係の地元ネパール人や国際機関、大使館関係者も招待されていたようで会長の坪井さんは、入場する一人一人に丁寧に挨拶をされていました。

ところが、マカピー妻を認めると「おお、よく来たね。ありがとう!」と歩み寄って来て握手したのです。VIPの登場を待ち構えていたカメラが一斉にフラッシュを焚いた瞬間でした!

おそらく、医師会側としては会長が自ら歩み寄るとはよっぽど親しい、重要人物にちがいないと思ったからでしょうか?(後で我々がフツーの人と分かってカメラマンも落胆したことでしょう)

ところがこれには伏線があり、その前の年にこの二人は出会っていた旧知?の間柄だったのです。

その当時坪井さんは副会長だったのですが、ありきたり?のレセプションの後での関係者との懇談会にマカピー妻はメンツが足りないので員数合わせで駆り出されたのでした。

そこで、席が隣同士となった坪井さんとマカピー妻は瞬く間に意気投合しざっくばらんにいろいろ話しができたそうです。帰宅後に「副会長って人はとても話が通じる人で、ワタシ気に入ったわ!」とマカピー妻は相変わらずの上から目線でした。

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ところが、今回は前会長の村瀬さんの後任として、ネパール再訪となったのでした。

やがて坪井さんは大方のゲストが入場すると、主催者代表としての歓迎のスピーチをされ、そのネパール語の通訳はマカピーも知り合いのネパール人がやりました。

乾杯したグラスを片手に、マカピー達の隣に戻ってくると坪井さんはマカピー妻に「なあ、オレのスピーチどうだった?」と尋ねたのでした。

「ヘタ。幾度も同じこと繰り返すから、通訳の人が困ってたよ!」

「そうか、やっぱりなあ・・・」としょげかえっていました。

そこへ、ある日本の医療機関の所長(医師)が来て「マカピーさんたち、この方をなんと心得てるんですか? いうならば日本の天皇よりも偉い方なんですよ!」というではないですか!

テレビドラマの『水戸黄門』じゃあるまいし、時代がかったその言い方は「助さん」かそれとも「格さん」なのかと驚きました。

マカピー妻:「へー、そんなに偉い人だったんだ?」

坪井:「そうだぞ、おめえは知らなかったのか?オレはえらいんだぜ!」

と言って、お互いに大笑いしていました。

二人の仲が既に打ち解けていたのは意外だったらしく、「助さん」はバツが悪るくなったものの、気を取り直して「先生、本日は私の研究所の若手医師の○○と▽▽をご紹介させていただきます」と業界の仁義を切っていらっしゃいましたが、会長もちゃんとよそ行きの顔でそれに対応されていました。

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そして、本来の目的を思い出したらしく「オレはこんなところで油売ってるわけにはいかねえんだ。ちょっと回ってくるぜ」としばらく会場の中ををぐるりと挨拶して回ってくると、何か手に持っています。

坪井:「ホレ、蜂蜜貰っちゃったぜ」と瓶を見せてくれました。

マカピー妻:「お疲れ様。大変だね偉い人は!」

坪井:「まあ、それが仕事だからな。じゃあ、オレは疲れたから部屋に戻るぜ」

マカピー妻:「あれ、会がお開きになるまで、会場にいなくていいの?」

坪井:「あのな、医師会長との挨拶ができれば、オレと話したい奴なんてオメエ以外にいねえんだよ」

マカピー妻:「そう、寂しいね。可哀そうだから東京に行ったら遊びに行ってやるわ」

坪井:「オオ、でもな、オメエが来たら絶対に館内に入れないように言っとくぜ」

マカピー妻:「分かった。じゃあお休みなさーい」

坪井さんがいなくなると秘書の方がやってきてマカピー妻にこういうのでした。

秘書:「会長は貴女と話すのが一番楽しみにしていたんですよ!今度東京においでの際はぜひ医師会にもお立ち寄りください」

マカピー妻:「ふーん」

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その翌年に坪井さんは、日本人として二人目の世界医師会会長にもなりました。そのニュースを聞いたのでマカピー妻はお祝いの手紙を書くと、坪井さんからの直筆の返事がありマカピー妻が見せてくれました。

「お祝いいただきありがとうございます。そうです世界医師会長になったので忙しいです。でも本当はそれほどでもないです。こちらに来たら銀座はもったいないから、新宿のしょんべん横丁に連れってやるよ」

坪井先生は福島県郡山出身で地方出身の医師会長になった方は初めてで各種の改革を率先された方と伺っています。若いころは画期的なガンの診断法を開発した方で柳田邦夫さんの「がん回廊の朝」を読んでとても尊敬する医師だと教えてくれたのは、親しい看護師の友達でした。


もちろん、あの後で東京で医師会長を訪問する事はありませんでした。

今回、先生の消息を調べたところ、5年前にお亡くなりになっていました。ご冥福お祈りします。マカピー妻とも気軽に会話を楽しめるバランス感覚の素晴らしい方でしたので、ご紹介させていただきました。

マカピーでした。

最後までお読みいただき感謝します。ボクはキミを教えたことも無ければ担当医でもないから「先生」って呼ばなくていいんだよ。そう言える人こそ本当の先生なんですよね、坪井先生。




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