イシミルは何でマレイシアに?マカピーな日々#0624
マカピーです。
彼の「イシミル」というあだ名は、青年海外協力隊の派遣前研修でマレー語を習っていた仲間の間で通じていました。
マカピーは彼といったマレーシアのKL(クアラルンプール)の宿で申し訳ないことをしてしまった事を思い出しました。
それは、隣の友達の部屋に行くのにドアのロックがかかるといけないからと、少し開けたままで出て行き戻ってきた時にイシミルに尋ねられたのでした。
イシミル:「マカピー、そこに置いてあったオレの皮バッグ知らない?」
マカピー:「いや。でもどうして?」
イシミル:「それがさ、さっき電話している間になくなっちゃったんだ」
マカピー:「ええ?!そりゃ大変だぞ。もしかして部屋のドアが開いていたから誰かに入られたのかもしれない」
誰もいない部屋にイシミルのバッグが発見されたのはそれから1時間後でホテルが調べた結果でした。
おそらく、キーを複製していた者の犯行で被害が続いていたのだそうです。
今回はカーペットで音がしないことをいいことに、半ドアの部屋に忍び込み電話しているイシミルの背後のバッグをこっそり持ち去ったのでした。
被害は財布だけ抜かれていて旅券は無事だったのですが、ポリスレポートなど届け出でイシミルは大変でした。
その原因がマカピーにもあったわけで申し訳なく思ったのでした。
彼とはサバ州の村落開発にかかわり、電気水道もない村で我々用に建ててもらった高床式の家でもう一人と3人で2年間共同生活しました。
イシミルの専門は「上総掘り」の井戸掘りでした。
彼が日本から持ってきた工具は僅かなもので、ほとんどを村の鍛冶屋に頼んで掘削用の鉄管やノミになる部分、弁なども鍛冶屋(トゥカン・ブシ)と相談して自作していました。
この技術は千葉県の上総地方の「ツキ掘り」から「上総掘り」と呼ばれるようになり、うまくゆけば200mくらいの深井戸が掘れたのでした。
鉄管を竹ヒゴでつないでそれをパーカッション方式で突き泥水と一緒に鉄管の中に砕いた地層を入れては引き上げて、排水、また鉄管を穴に戻し突く作業です。この竹ヒゴがその辺にのたくってしまっては作業がはかどらないので、大きなヒゴ車で巻き取るので櫓(やぐら)を組むのでした。
ヤシの林の間に「上総掘り」の櫓はなかなか景色としてはいいもので、水道のない村に井戸を掘るという計画でしたが、問題が発生します。
固い岩盤に突き当り鉄管先(ノミの部分)が壊れてしまったり、竹ひごと鉄管のつなぎが壊れ鉄管が穴に落ちてしまう事故が多発して、それ以上作業を進められなくなりました。
結局彼の井戸掘り作業はそれで終わります。
一緒にやっていた村人の青年もその技術でほかの村の井戸掘りとして仕事が得られるかと思えたのですが、それも夢と潰えました。
それでイシミルは他の隊員の手伝いなどをして帰国するのですが、マカピーは保健省の部門が深井戸掘削のユニットを持っている事を知り驚きました。
適正技術どころかこちらでは機械掘りが普通に行われているのでした。
当時マレーシアは三菱自動車の支援を受けて「プロトン・サガ」という国産車を生産開始したところでした。
マハティール首相の掲げる「ルック・イースト政策」(日本や韓国を見倣え)で中進国の道を歩んでいる中で、各地の地下資源探査もすすんでいました。
そうなんです、石油資本も含めて全国の探査が済んでいてそれに適した深井戸掘りも普通に送られていたのです。
「上総掘り」が使える別の国があったはずなのに、なんでイシミルはマレイシアに来たんだろう?
適正技術を伝える人の采配を間違えるとその隊員の2年間を棒に振ることになると怖いなって思いました。
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。なんと今朝がたイシミルの夢を見たんです。