ニューヨークのおしゃべりな日常:街歩き編
以前、ご近所編を書きました。 今回は街歩き編。
ニューヨークのおしゃべりな日常:ご近所編
https://note.com/maca39inches/n/nf1ba1263aea3
ニューヨーカーの一般的な移動手段は地下鉄です。 私もその例に洩れず、どこへ行くにも地下鉄を利用していました。
地下鉄に乗って座っていると、隣の人から話しかけられることが普通にあります。 突然、”What day is today?”(今日、何曜日だっけ?) とか。 “Ah, Tuesday.” “Thanks,” なんて言って、それでおしまい。 気軽なやり取りです。
似たような感じでこんなのもあります。 ドアのすぐ横の席に座っていた時、ある駅に止まり、向かい側のドアが開いたので、乗り降りする人々の流れを何となく見ていました。 最後にホームから車両の中を覗くようにしている女性と目が合ったと思ったら、彼女が大声で訊いてきます。
“Is this express?” 私も答えて、“No, it’s local!”
ニューヨークの地下鉄は、乗っている間にも Local と Express を変更したり、到着ホームが変わったり、行き先が変わったりすることが日常茶飯事なので、こういうやり取りもたびたびです。 別に目が合ってなくても、外から大声で叫ばれることもあります。 “Hey, is this train going to (xxx)?”
自分が身に着けてる服とか靴とか、鞄なんかを、”That (xxx) is nice! I love it,” なんて褒めてもらうこともあります。 知らない人なのだからお世辞ではなく、率直にそう思ってくれたということなので、嬉しいですよね。
ある日、ドアを挟んでななめ向かいに座っていた30歳前後ぐらいのお兄さんが、何か本を読んでいました。 そしたらどこかの駅で乗り込んできた、別の同年代のお兄さんがその本に目をとめて、”I’ve just finished reading the book, too,” みたいなことを話しかけていたのです。
“Oh, ya? Was it good?” “Yeah, it is ~~,” ってちょっと盛り上がってました。 ネタバレになるのであんまり詳しいことは・・・と思ったのでしょう、会話はすぐに終わってましたが、見知らぬ人同士でこれだけ気軽に喋れてしまうのがニューヨークらしい。
地下鉄の中は本当に面白くて、乗客同士で会話がはずんだり、または言い合いになったりしています。
グループで話しているところに、全くの他人が話に入って盛り上がるとか。 私も、入ってこられたことがあるのですよ。 楽しい話ではなかったのだけど、英語のわからないことを友人2人と話していたら、私が言ったことに対して横から “That’s right. ~~,” と教えてくれた人がいたのです。 教えてもらったことも嬉しかったし、まだ渡米して間もない自分の話してる英語がわかってもらえてたんだ、ということが嬉しかった出来事でした。
道を歩いていて、全く知らない人と目が合って、”Hi!” って言うのは普通です。 一言二言、言葉がついてくることもあります。 “It’s hot!” “It is!” みたいな。
私はニューヨークで学生だった期間が長く、よく McDonald’s やWendy’s などのファストフードのレストランで勉強していました。
レストランのテーブルで、周りの人々とちょっとした会話をするのは珍しいことではなくて、もう普通のこと過ぎてあまり覚えていないのですけれど、その中でも忘れられない人々はいます。
医学生だと言っていた白人女性。 何のお医者さん?と訊いたら、”xxxxx,” って答えてくれたのですが、私がよくわからずにいたら、”Eye doctor,” って言ってくれたのです。 眼科かぁ。 今思えば “Ophthalmologist” って言ってたのでしょうか。 言い直してくれた優しさと聡明さを感じますよね。 勉強が大変だけどがんばる、って言ってました。 今頃はきっと立派な眼科医になっているでしょうね。
1歳から2歳ぐらいの女の子を連れた女性がいました。 女性は女の子の母親かもしれないけれど、 Babysitter かもしれないですね。 絵本を持っていて、見ているとニワトリが出てきて、ひよこがいました。 ひよこ? ニワトリは Chicken だけど、ひよこって英語で何ていうんだろ。 彼女は英語のネイティブっぽいから訊いてみよう。
指差して訊いてみました。 “What do you call this in English?”
“Chick.”
ほぅ~、Chicken から -en 取ったらひよこになるのか。
この時はもちろん知りませんでしたが、Chick にはスラングで 「若い姉ちゃん」 的な意味があります。 お察しの通り、あまり上品な言葉ではありませんのでご注意ください。
買い物の列に並ぶとき、買い物かごの中身について会話になるというのは、ご近所編で書きました。 列といえば、並んでいる時に 「あっあれ忘れた!」 と思って取りに行きたくなるようなことがありますよね。
日本だと、列を離れたらまた並びなおすのが普通ですが、ニューヨークでは後ろの人に “Excuse me, could you keep my place? I forgot something,” などと言って、自分の順番を取っておいてもらうことがよくあります! 戻ってきたら、”Thank you,” と言ってまた元の位置に入れるのです。
慣れるとこれがとても自然なことに感じるので、日本で 「一度でも列を離れたら戻れない」 という状況を見ると、余裕がないなぁ、世知辛いなぁ、と思ってしまいます。
最後に、思わぬところでめっちゃ笑ってしまった話。
Lower Manhattan に J&R という電化製品を扱う店があって(現在は実店舗はなくなっている模様)、よく行ってたのです。 いくつもの建物に分かれていて、ちょうど新宿のヨドバシカメラとか、池袋のビックカメラなんかを思い出させる、楽しい空間です。 私はデジカメとか、外付けHDDとか、ケーブルとか、何でもここで買ってました。
その日は、たしかPCを新しく買い替えた直後で、PCに合うマウスを買いに行ったのです。
コンピュータ関係の建物に入って、さて何階かなと案内を見ても、いまいちわかりません。 誰かお店の人に訊いてみよう。
お店の人がいないかと探してみると、ちょっと離れた階段のわきに、セキュリティーっぽい人が立っていました。 50代か60代くらいの、全身紺色の制服を着た、黒人の男性でした。
“Excuse me, could you tell me where I can find mouses?”
2階だよとか、3階だよとかいう答えを期待していたら、彼は階段の下を指差してひとこと、
“Downstairs.”(下の階。)
おいーー!!(爆) 一瞬わからなかったけど、ネズミは地下にいるよと、大真面目な顔で冗談を言っていたのです。
お店の人がそんなふうに冗談言うとは思わないから、めっちゃ笑ってしまいました。 言った彼も嬉しそうでした(笑)。 そのあとでちゃんと教えてもらいましたよ。
疑問に思う人がいるかもしれないので補足しておくと、ネズミの意味の mouse の複数形は mice です。 でも、コンピュータのマウスの意味では、複数形は mice と mouses の両方が使えます。 私はこの時は、mice と言うのは何か変な気がして、mouses と言ったのでした。
ニューヨークにいると、話せば話すほど人と話すのが楽しくなってきて、今日はどんな面白いことに出会えるかなぁと思うのです。