AmazonがHomePodを必要としAppleがEcho Dotを必要としない理由
スマートスピーカーの販売台数シェアでAppleを圧倒しているAmazonがついにプレミアムスピーカーEcho Studioを出してきた。目指しているものが違うHomePodと音が出るWi-Fiマイクと呼ぶべきEcho DotやGoogle Home miniを同じカテゴリーで括ること事態がそもそも間違っているのだが誰もそれを指摘しない。個人的には久兵衛とかっぱ寿司の客数を比べる馬鹿はいないのに何故なんだろうと思うのだが。
仮に販売台数のシェアを比較することを認めるのであれば公平を記すために市場の売上額や利益に対するシェアも同時に並べるべきなのだが一向にそれが当たり前にはならない。スマートフォンでは既にそうなっているから利益のシェアではAppleがぶっちぎりでトップを維持したままなのが明らかになっている。Wi-Fiマイクと本格的に音楽を楽しむためのスマートスピーカーを分離した場合、Amazon Echo、Google Home MaxのどちらもHomePodの足元にも及ばないのが実情。HomePodと同等以上に売れているスマートスピーカーはSonosくらいなのだ。
Amazonが利益を度外視してまでEcho Dotを大量に販売しなければいけなかった最大の理由はAppleのように10億台を超える自社サービスにダイレクトにつながる専用のデバイスを持っていないから。その上、ブラウザーを経由して自社サービスへのアクセスを許せば大事な情報をGoogleに与えてしまう。Googleを経由せずに顧客をダイレクトに結びつけるスマートフォンで失敗したAmazonは家庭内に置かれる専用デバイスがどうしても必要だった。そこで白羽の矢を立てたのがAlexa用スピーカー(音の出るWi-Fiマイク)だった。対するGoogleがGoogle Homeを出したのはブラウザーを経由せずにダイレクトにAmazonに繋がってしまう入り口を家庭内に持ち込ませるわけにはいかなかったからEchoを潰すためにHome miniをぶつけてた。さらにEcho Dotと同じ価格帯のminiを用意するだけではなくEchoよりも音が良いことを売りにHome Maxまでぶつけて来た。しかし、そこにAppleのHomePodが割り込んできた。リリースが遅れに遅れ出ないのではないかとさえ言われたHomePodはHome Maxなど足元にも及ばない技術の粋を凝縮したスピーカーだった。案の定Home Maxは全く売れなかった。そこでAmazonはGoogleに追随することはせずにプレミアムスピーカーはBOSEなどの専業メーカーに任せる形で時間稼ぎをして来たと考えるのが正しいだろう。
単純にHomePodの販売数量を取り上げてAppleを負け組と決めつけた上でEcho DotやHome miniのような音の出るWi-Fiマイクを出すべきだと非常識な常識を押し付けようといまだに考えているようだが、Apple Musicを快適に楽しんでもらう一つの手段と考えているAppleがその意見に追従することは将来的にもあり得ないだろう。次期HomePodが登場する時には現行モデルをより安い価格にして継続販売にすることは考えられるが、全く競い合う対象とも考えていないEcho DotやHome miniを潰す目的で廉価品を出すようなことはないのだ。
では、何故Amazonはあれだけ廉価版を売っていながらEcho Studioを出さざるを得なかったのだろうか。私はAmazonの人間ではないので憶測に過ぎないがEcho Dotの購入者がAmazonでの買い物にEchoをほとんど使っていないからではないかと考えている。一般の人と比べてIT関係の繋がりの人が多い私だが発売開始と同時にEchoやEcho Dotを購入した人たちは良くてラジオや時計がわりに使っているだけでAmazonでのショッピングなどには使っていないし、そうでない人は既に引き出しの中かクローゼットにしまってしまった。IT系でない一般の人なら尚更だ。そもそも安いものを求める人の購買意欲は弱い。Apple製品を買い求める人が高価格商品を平気で買うのとは対照的だ。そして購買力の高い優良顧客はEcho Dotなどには手を出さず迷わずにHomePodを購入する。Amazonにはそういう人たちを引き付けられる商品がどうしても必要だった。だからHomePodが販売開始されプレミアムスピーカーに需要があることを見極めた上でHome Maxよりも魅力的な機能を持ってHomePodよりも安いものを発表して来たのだ。
結論:個人との入り口をiPhoneの形で既に持っているAppleには全家庭に入り口を作るためにEcho Dotのような製品は必要なく、Amazonは高価なApple製品を躊躇なく買い求めるような優良顧客を引きつけるスピーカーが必要だった。それがEcho Studioだったと考えると手を出さないと言っていたプレミアムスピーカーを出して来た理由が明らかになるわけである。
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