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おれのBeast

広告における3Bの法則を知ったのは、偉大なアル中作家、中島らものエッセイか何かだったと思う。3Bとは、Beauty (美女)・Baby(赤ちゃん)・Beast(動物)の意味で、一般に大衆ウケする広告には美女だったり子供だったり動物が含まれているというわけだ。

ただ、個人における3Bは本人の思い込みによることも多い。自分の恋人だったり赤ちゃんだったりペットだったりをSNSにアップしても、「カワイイ!」と思っているのは自分だけ、周りは白けていたりするのはよくあることだ。この温度差に気づかないと痛い目を見てしまう。

おれもそんな一人であり、自分の実家で飼っているBeast、犬のボス君に惚れこんでいる。

ボスが実家にやってきたのは2011年の初夏、前代の愛犬である熊蔵(くまぞう・メス12才)が他界した翌月のことだった。ペットロス症候群の寂しさを埋めるためか、父親はすぐに新しい犬を探し始め、新聞の里親募集欄で当時生後3ヶ月程度だった雄犬を譲り受けてきたのだった。

「名前は何にするか」との父の問いに、「イル・ボスティーノにしよう」とおれは即答した。イル・ボスティーノは当時おれがハマっていたザ・ブルーハーブというヒップホップグループのMCだった。

だが、「イル?なんだって?」と、家族の誰もまともに覚えられず、仕方なくイル・ボスティーノを略して「ボス」に落ち着いたのであった。

ボスはエネルギーに溢れた犬だった。12ヵ月(人間でいう思春期だろうか)くらいになると早速初めての脱走に成功。その後も年に数回は脱走をしては、家族を困らせた。ロープにつないでいるわけではなく、実家の敷地内に柵を設置して飼っているため、少しでも隙があれば逃げてしまう。柵をジャンプして越えたり、柵の下に穴を掘って潜り抜けたり、柵の扉を器用に歯で開けてみたり。大抵は数時間で戻ってくるものの、一度は保健所に連れていかれてしまい殺処分一歩手前だったこともあった。おれは実家からボスの新たな脱走話を聞くたび、その破天荒さに惚れ惚れとした。

そんな愛犬ボスのTシャツをユニクロで作成した。こないだ父に買う約束をしていたウイスキーを反故にしてしまっていたので、代わりに何か面白い案はないかと探していたところこのサービスを発見した。しかも2018年に始まったようだ。

過去にあったこの手のサービスは、最低発注枚数が何十枚だったりすることが多かった。こんな身内ネタのTシャツ何十枚もいらねぇっつーの、と思うのが常だったが、自作したシャツを1枚1990円で発注できるのだ。さらにさらに、そのTシャツを他人に売ることもできるのだ。誰もおまえの犬のTシャツなんか買わねぇよ、という声はさておき。

家に籠ることが増えたみんな、暇つぶしにくだらないTシャツでも作ってみたらどうだろう。そして、家族や恋人や友達にプレゼントするのもいいじゃないの。なんだか、ユニクロの宣伝みたいになっちゃったな。


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