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黒い雨と青い太陽 5話

蝉の声も聞こえなくなり肌寒くなってきた11月。

海に行ったのが一年前だ。

サチはあれから1年ちょっと生きている。

けど、サチはもうすぐだという事を分かっていた。

先生に言われたより少し長く生きられたサチだけど、残されたユキトと子供の事それだけを毎日毎日思った。

ここの所、ユキトは毎日付き添ってくれていて、か細い声しか出ないサチの言葉にしっかり耳を傾ける。


「ユキト。子供達をお願いね。」毎日、この言葉を必ず口にしていた。

この日、眠りにつく事はできなかった。

息を吸って吐く事が大変で、目の前が霞んで、
よく分からない。
ユキトと出会ったバーの事。
2人でよく行った映画館。
妊娠した時のユキトの喜ぶ姿。
おばあちゃんおじいちゃんになった父母のマユとアーチを抱く姿。
入園式。
保育園でママと呼ばず泣いていたマユの顔。
マユの子が大好きで後を走って追いかけてすぐ転ぶアーチの姿。
ママ大好きーとは離れない2人の声。
隣で眠る子供達の温もり。
ママと早く遊びたいよ。と手紙を毎日くれる事。

子供達とはしゃいだあの一年前の海の事。
砂に埋めたマユの笑った無邪気な顔。。。


あれ、、、



ユキト。。。

ユキト。。。

「ユキト。。。今までありがとう。一緒に居てくれて有難う。。。マユとアーチの事お願いします。。。幸せになってね。私の分まで。

ユキト。」


身体がフワって軽くなる。。。


ユキト、私の姉、弟、父親、

近くで最後まで居てくれて、泣いてるのが見える。。。

泣かないで....


ありがとう。。。



リリリリリーン
リリリリリーン


朝4時過ぎ家の電話が鳴る。

おばあちゃんが誰かと話ししてる声でマユは目覚めた。

おばあちゃんは、電話を手にしたまま、泣き崩れた。

マユはそれを見て、

「おばあちゃん!おばあちゃん!ママどうしたの!?ねぇ!ママは!?」

と叫んだ。

7つのマユはおばあちゃんのその姿に、

ママに何かあったんだと、すぐに察した。

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