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彼の呼吸はみるみる荒くなり、顔を赤くしてぼくに殴りかかってこようとする。怒っているように見える。彼自身自分は怒っているのだと思っているだろう。それでも彼にその理由はない。ぼくはただひとつのボタンを押しただけだ。そしてもうひとつボタンがある。それを押してやれば、彼は理性的な意識を取り戻し、なぜ怒っていたのか自分でも知らなかったことに気づくだろう。しかしぼくはそれを押すことができない。彼が怒るのをやめてしまえば、ぼくたちの存在は科学の前に無意味になるのだ。

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