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予告もなく背後に立ち、耳元で「見つけた」って言ってくる人のことを探しています。いつもすぐ振り返って捕まえてやろうと思うのだけど、その声を聞くたびに気を失ってしまうのです。しかも気を失って倒れた自分の姿を上から見ているのです。しばらくは感覚も意識もふわふわして熱に浮かされたような感じがします。それが本当にあったことなのか自信がなくなってきた頃にまた謎の人物が背後に立つのです。もちろんこんな考えは馬鹿げているのだろうということはわかっています。それでもわたしは、倒れた方の自分といまの自分がわたしの奪い合いをしているのではないかと思うのです。だから次こそはもうやめにしようって一言いってやりたいのです。