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田舎に帰ると実家に知らない子供がいた。親戚がいくらか集まっていたので、誰かが連れてきたのだろう。子供は壁に掛けられた絵を真剣に見ていた。私が来る前からずっとそうしていたかのように身動きもせず見入っていたのだが、そのうち意を決したように壁から絵を外し、裏側をのぞき見た。まだ小さな子供だ。絵の世界が額の後ろに広がっているとでも思ったのだろう。何もなくてがっかりしただろうか、そう思っていると、とつぜん絵が落ちた。持っていた子供が消えてしまったのだ。私はその瞬間をたしかに目撃したのだが自分の目が信じられなかった。半信半疑のまま絵を拾い上げると子供は絵の中に立っていた。