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散花集第2期(101-200)

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花は散ります。有機体は解体します。存在は空想です。有機体とはみなさんのことです。 2018/4 - 2018/7
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2018年6月の記事一覧

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妻が「あら、咲いてるわ」と言って、飼っている猫の背中から何かもぎ取った。それまでその背中から何か特別なものが生えているとは思わなかったけれど、妻の手にはたしかに白い花があった。妻はそれを電子レンジに入れて一分間温めた。妻は「できたわ!」と場違いなほど嬉しそうな声を上げて、取り出した花を私の口に押し付けてきた。妻は出会ったときから一貫しておとなしい女で、間違ってもこんな強引なことのできる人間ではなか

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176

散歩をしていたら後ろから来た自転車がぼくを抜き去っていった。ちょうどぼくの目の前で彼は何かを落とした。拾ってあげようと思ったが、落ちたのが生きたねずみだったのでやめた。気味の悪いことにそいつは人間の指を食べていた。

175

月に向かって犬が吠えていたので空から取って食べさせてやった。

174

「近くにコンビニある?」と聞かれて答えたお店が潰れていた。いやそこが潰れたことは知っていたのだけど、よく通る道でもなかったからうっかりしていたのだ。行ってみると、当然看板もなく白い壁が目立っていた。「ごめんここ最近潰れたんだった。忘れてた」と言っても友人には聞こえていないようだった。彼は自然に店に入っていった。自動ドアもまだ機能していた。冗談かと思って笑って見ていたけれど、彼は出てこなかった。仕方

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173

社内にどうしても顔と声が一致しない人がいる。うっかりすると本当にだれかが横でその人の代わりにしゃべっているんじゃないかと思えるくらいなのだ。彼はのんびりした口調で話すが言うことはハッキリと言うし、あまりキビキビ動くという感じではないのに仕事もできるタイプのようで、社内での信頼もあり後輩にも慕われているような人物だ。部署も違うし普段はお昼を一緒にとるようなこともないのだけど、今日はたまたま定食屋で鉢

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172

予告もなく背後に立ち、耳元で「見つけた」って言ってくる人のことを探しています。いつもすぐ振り返って捕まえてやろうと思うのだけど、その声を聞くたびに気を失ってしまうのです。しかも気を失って倒れた自分の姿を上から見ているのです。しばらくは感覚も意識もふわふわして熱に浮かされたような感じがします。それが本当にあったことなのか自信がなくなってきた頃にまた謎の人物が背後に立つのです。もちろんこんな考えは馬鹿

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171

大男がものすごい剣幕で怒鳴り込んできた。何事かと思ったがあまりに興奮していて何を言っているのか要領を得ない。争いは苦手なんだよなあと思いながら、どうせ殴られて相手が満足して捨て台詞を残して去っていくんだろうそこまで我慢すれば終わりなんだろう早くやれよと半ば冷めたような諦めの目で見ていた。その態度が相手の興奮を助長したようで、呼吸がいよいよ荒くなってきた。殴られると思った瞬間に大きく膨らんだ鼻がなに

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170

祖父の入れ歯が落ちている。はじめは驚いたが最近ではもう慣れてしまった。元々ズボラな人だったからちょくちょく突拍子もないところから出てくることがあったのだ。床に落ちていることなんかはしょっちゅうで、ボックスティッシュの中だとか冷蔵庫の中なんかから出て来ることもあって、慣れたとはいえ困っている。今日は机の上だったから比較的まともだと思っていたら、入れ歯の横についでのように耳が落ちていた。

169

朝顔の観察日記を書いて提出しなさいという課題を与えられた。他の子の朝顔が立派に咲き始めてくるなか、ぼくのだけ一向に芽が出ない。それで興味がなくなってなんとなく放置していたのに、数日後に思い出して見てみるとおよそ朝顔とは言えないような毒毒しい花が咲いていた。それだけではなかった。花の陰に実が付いていた。いまのところ実が付いているのはクラスでもぼくだけだろう。せっかくだから見せつけてやろうと思ってクラ

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168

憂鬱な日だった。傘をさして歩いていたら綺麗なあじさいが咲いていて、少し気分が晴れた。思わず手を伸ばしたら人の手に当たった。咄嗟に謝ったが、だれもいなかった。手だけがそこに浮いていた。

167

田舎に帰ると実家に知らない子供がいた。親戚がいくらか集まっていたので、誰かが連れてきたのだろう。子供は壁に掛けられた絵を真剣に見ていた。私が来る前からずっとそうしていたかのように身動きもせず見入っていたのだが、そのうち意を決したように壁から絵を外し、裏側をのぞき見た。まだ小さな子供だ。絵の世界が額の後ろに広がっているとでも思ったのだろう。何もなくてがっかりしただろうか、そう思っていると、とつぜん絵

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166

前を歩いている人間に尻尾が生えていたので、無性にイライラして尻尾を引っこ抜いて地面にたたきつけてやった。被害者は大量の血液を流して気を失って倒れた。衝動的な行為だった。すぐに警察が駆けつけてきたが、逃げる気もなかったのであっさり捕まった。警察には正直に話したのだがどれだけ言っても信じてくれない。警察はあくまでも現場に尻尾など落ちていなかったというのだ。そんなはずはない。ぼくは尻尾を掴んだのであって

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165

いい天気だなあと思って空を見上げると、ちょうど目に入ったマンションのすべての階でベランダに出てるひとがいた。珍しいなと思ってそっちに目を向けると全員がぼくを見ていた。なんか嫌だなと思っていると、そのベランダに人がわらわらと集まってきた。しかも新たに現れたすべての目がやはりこちらを見ているので、目を上げないようにして足早に自宅に帰った。

164

親切な人が教えてくれたおかげで気づいた。頭の上に大きな矢印が浮かんでいる。矢印は当然のように私を指しているが、それの意味するところは分からない。ただ恥ずかしいばかりだ。