技術を学ぶという事

昔の職人は〝見て覚えろ！〟で
手取り足取り教えてもらったりはしていないはず

昔の……と書いたけれど
主人や今第一線で働いている職人さんたちも
かつてお針子をしていた私もそうでした

細かい事なんて一切教えてもらったりはしていない
ましてや今のようにネット検索すれば
大概の事のなんとなくは誰かが教えてくれる
そんな時代でもありませんでした

アトリエの掃除をし
先生のお茶を入れながら
先生と先輩の手元や２人のやりとりを
まち針を渡しながら見て聞いて覚えたものです

でもある工務店の社長さんが
今ごろはそれじゃダメだ
今の若い人たちには１つ１つ教えている
と言っていました
そうじゃないと〝できない〟し
すぐに辞めてしまうから…と

主人にその話をすると
〝自分でわかった事じゃないと身につかない〟と
断固反対意見です
私も同意見

その人の〝やる気〟を引き出してあげたい
というならまだわかります
そういった事が得意な人や
そういう愛情を持てる人もいると思います


下世話な話
人を１人雇い入れるというのは
金銭的に負担がかなりあるし
何より自然に当たり前に動いていた毎日が
要所要所イレギュラーになって気を使ったりと
精神的にも軽くストレスになります

それでもその人が
やりたい事があったりやる気があったり
覚えようという気持ちがあったり
何故うちに働きに来ているのか
ちゃんとわかっている人なら
主人も教え甲斐があるし
発生する手間や金銭的な事は
全て帳消しになるんです

もちろん二十歳をまたいだばかりの人
自分もそうだったし我が子たちもそうだけれど
何をどうして生きていきたいかなんて
まだまだ見えていない
それはそれでわかります
でもそれなら尚更自分に向いているのか
やってみて興味が持てそうなのか
それを知るためにも
一生懸命にならないといけないんじゃないかと
思っています

同じように看板をはっている人と話してみても
口を揃えて
雇い入れる気になる人がいない…と

月にいくらもらえるのか
何日休めるのか
それしか興味がないようです

朝はきちんと来ない
無断で頻繁に休む
家族が順番に病気になる
(だから病院に連れて行っていたとか)
つるんで現場から戻って来たから理由を聞くと
〝怒られたから…〟
開いた口がふさがらなかったです

主人はうちで仕事を覚えて独り立ちして
手が必要な時に応援に来てもらえるような人を
育てたいんです
そんな人にする投資ならぜひやりたいですね

なんでもかんでもパワハラだ云々と言う前に
(本当の理不尽なパワハラもきっとあるでしょう)
自分が何で働くのか
何のためにそこにいるのか
少しは考える人と一緒に働きたいです

仮に〝ブラック企業〟だ〝あんな会社〟だ
〝あんな上司〟が…と
言われるような会社だったとしても
こちらこそ〝あんたなんかいらない〟という事も
あると思います


公は
積極的に雇用しなさい
最低これだけの賃金は出しなさい
各種保険を掛けなさい出しなさい
こんな事はダメです違法です云々……
そんな事ばかり言わずに
見習い中の人の生活の援助を
身内ができないなら
公がするような仕組みがあると良いですね

私たち弱小企業にできる事は本当に微々たる事です

私たちにも生活がありますから
慈善事業ではありません

一度身につけた様々な技術は
なかなか朽ちるものではありません

どれだけ歳を重ねてもできる事は多々あるはずです

それを育てる事はとても大切な事のはずです