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銀ちゃんといっしょ 35

まいごのまいごの…

仕事で役所関係へと車を走らせていると
ずっと長い距離 信号機もなく
歩行者も自転車もほとんど通らない
土手沿いの道の路肩を
小さな女の子が一心不乱に歩いていました

何も考えず本能的に車を停車させ
小走りに追いかけました
すれ違った状態だったので
思ったよりも長い距離を戻りました
50代半ばの身には堪えましたが
大人でも危ない状況でした

50キロ以上で走り抜ける車のすぐ横です

驚かせないように声をかけ手を引いて車へと急ぎ
後部座席へ座らせました

名前は〝なおちゃん〟
4歳ぐらい

警察へ通報してから
話を聞くと二転三転しましたが
彼女の言い分では
ママがなおちゃんを酷く怒ったので
家を出て来たらしい

でもそこは川沿いに公園が続いている所で
人家は土手のずっと下
公園に遊びに来てたとしても
なおちゃんが1人でというのは考えにくいし
見える範囲の公園の駐車場には
それらしき車も
保護者らしき人影もありません

〝お家はどっち?〟と聞いてもわからない
〝どんな車で来たの?誰と来たの?〟と聞くと
おばあちゃんと一緒に
〝下が黒で上が青〟の車に乗って来たらしい

その〝下が黒で上が青〟の身振り手振りが
凄く可愛らしくて
つい何度も聞いてしまいました

小さな手には可愛い小さな花が握られていました

警察官が到着し
なおちゃんをパトカーに乗せてから
私の事情聴取でした

私の車とパトカーの傍らで
警察官と話しているオバチャン
行き交うドライバーは100%
〝あのオバハン何かやったな スピード違反か?〟
と同乗者と話していた事でしょう

話が終わり
パトカーの後部座席にいるなおちゃんに
声をかけました

なおちゃんは物凄く眠そうな顔をしていました

そして黙ったまま
花を持った小さな手を差し出しました
〝ありがとう!なおちゃんが摘んだんね
帰ったらママにあげて仲直りね〟と
受け取りませんでした

後でちょっと後悔しました
なおちゃんの気持ちを受け取ってあげたら良かった

約束よりだいぶ遅れて目的地に着き
事情を説明すると
〝そりゃあ ほっとけんわな~〟と…

ほっとけないどころじゃない気分でしたけど

私はてっきり
なおちゃんが無事にママの所へ戻れたら
連絡があると思っていました

〝下が黒で上が青〟と身振りを真似して
しばらくなおちゃんの話で持ちきりでした

主人に連絡がない事を言うと
〝そんなもんある訳ないやん〟
という事でした

私の住所 氏名 電話番号 職業まで聴くのに
失礼な話です

あの小さな花束……
しなしなになってた小さな花束
もらっておけば良かった

あの小さな手から
受け取ってあげたら良かった

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マボ
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