心が日記3「恋愛物の噛ませ犬は負けヒロインと言うらしい」
一時期、BL漫画を読みふけっていた。
都合の良い展開ではあるが、同性という大きな障害があり、しかし綺麗な恋愛。夢中になったのは過去の自分が求めたモノの一つや苦しみが一致したからかもしれない。
よくBL漫画で出てくるのが、「主人公の幼馴染」や「古くからの友人」だ。
身の回りの世話をし、主人公が正常な生活をするためには不可欠な存在であることが多い。主人公を本当の意味で愛しており、同時に恋もしてしまっていることが殆どだ。
だがある日、恋敵が現れてさらっと主人公を奪われてしまう。
所謂「噛ませ犬」の立ち位置であり、俗に言う「負けヒロイン」という立場。異性なら諦めはつくだろう。だがまさかの同性なのだ。友人は同性だからと主人公のことを想い、諦めた恋を一瞬で踏みにじられる様な体験をすることになる。
物語では途中まで友人とその恋敵はライバルとして争うことも多いが、主人公が心を寄せるのはもちろん恋敵。そうなってしまっては、友人は自分の愛を正常に機能させる為に手を引くことを選ぶのだろう。
『自分のモノにしたいと思う恋からの愛』
『ただ幸せにしたいと思う愛からの恋』
捨てるものがなく、積極的に動ける方が勝つのは必然だと思う。
主人公と本命(恋敵)は「衝撃的な出会い」や「一目惚れ」など、深く育てていない恋で成就する。それこそ、フィクションだから全てが上手く行き、恋は愛となり永遠に続く。
現実はどうだろう?
燃えるような恋をし、燃えたまま結ばれる。
熱が覚めた時に本当に彼らは一生を添い遂げることは出来るのか。
衝動から結ばれてしまった。ましてや同性という、大きな障害を軽く跳ねのける人物だ。何年もかけて弱さに寄り添ってきた古くからの友人に勝る愛を持つといえるのか。
だが、所詮は恋仲になれる人間達というのは「熱が冷める前に縛り合う」というものなのだろう。
それがまるで現実を見るような苦しさで——
それ以降私は恋愛に"負けた"友人を目的に読み進めることになる。
主人公カップルの幸せなストーリーが中心で進むので、苦しみながら読み進めることになるのだが……
BL漫画を読んでいて好きなこと。
それは恋愛に負けた彼らにも、心に寄り添ってくれるパートナーが出来るサイドストーリーがあることだ。
心にひびが入った、愛に疑心暗鬼となっている友人に、ひびの隙間を埋めるように寄り添う。主人公が察せなかった苦しみを理解し、それでいて深くは踏み込まずゆっくりとひびを溶接していく"白馬に乗った王子様"が現れる。
だが『衝動的な恋』に育てた愛ごと奪われた友人が、同情から来る『衝動的な愛』を受け入れるわけが無い。それでも王子様は壊れかけの心を割らない様に少しずつ修復していく。
その過程が 苦しく 切なく 愛おしい
そして、その中でも私が一番好きなカップリングの話はというと、同じ苦しみを背負った境遇の二人が結ばれる話で、友人の恋敵側にも尽くす友人がいるというもの。
もちろんメインの話は主人公に奪われることになるので、友人達は失恋することになる。そこから同じ境遇の友人同士が偶然出会い、慰め合いからの恋に発展していく。
所詮は傷の舐め合い。それも一時の衝動と言えるのかもしれない。
育てた愛を無にされた経験から「愛」を信じられない二人。
本人達もそれを認識している。それでも心の触れ合いを続ける内に「愛した者の代わり」から「愛して"しまった"」関係になるという流れ。
大きな痛みを経験しているもの同士からこそ、様々な障害を乗り越えた先にある"一生"を想像しやすい。
私はこのような「負けヒロインが幸せになる話」が好きなのだ。