トリケミカル(4269)についてのメモ(1)
四季報 Online より。
【特色】先端半導体の製造に必要な化学材料を多品種少量生産。韓国に35%出資合弁。台湾工場完成【連結事業】半導体製造用高純度化学化合物事業他100【海外】69 <20・1>
海外売上比率69% 事業ポートフォリオは上記を見る限り半導体材料一本やり。そのあたりは、扶桑化学や、大有機などとは異なる。
業績を株探より
目を見張るこの数年の改善ぶりである。営業利益率一桁だった時期を経て、今は20%台の後半まで稼ぐ力が上がっている。ROE も文句なし。
財務を見よう
あまり劇的には変わっていないようにも見えるが、自己資本比率は 50%台から60%台になっているし、利益剰余金は100億台に乗せているし、自己資本はこの数年急増している。着実に財務状態はこの数年はよくなっている。
同社がこの数年、業績を急改善させているのはなぜなのだろうか。やはり、経営者の考え方とか施策とかをさぐるのが王道であろう。というわけでまずは Ullet で現在の代表取締役のプロフィールを見よう。
現在の代表取締役は太附聖氏。2014年4月に現職についている。ということは彼が就任してから、営業利益率、ROEが顕著に改善してきたことになる。
創業者は竹中潤平氏である。現在、代表取締役会長職にある。
1978年12月創業、2009年4月に取締役会長職になって社長を退いている。
ということは、竹中氏から太附氏になるまでの間、別の方が社長だったわけだ。その期間、営業利益率も ROE も低迷していたことになるね。
というわけで、太附社長の手腕が俄然気になってくるのであるが、ググったところすぐ次のインタビューが見つかった。昨年6月のものである。
株式会社トリケミカル研究所 - 上場会社トップインタビュー ..
「化学メーカーと聞くと巨大プラントやコンビナートといった大規模な設備での大量生産をイメージされる方も多いですが、ご覧の通り、弊社の工場はそれほど大きくないでしょう。作る化学薬品が"少量"であることが主な理由です。たとえば次世代の半導体を開発する際、どういった新規工程が必要になるのか、その際どういった新規材料が必要になるのかを選定する過程で様々な化学薬品を使用しますが、その特殊な化学薬品のなかには一社からの発注がたった25ccというものもある。 ペットボトル一本にも満たない量ですからコンビナートは必要ないですよね(笑)。ですが、これだけ少量でもお客様の製品づくりにとっては絶対不可欠な化学薬品であって、なかには弊社しか提供できないものも少なくありません。私たちはこのように少量の引き合いにも確実に対応し、しかも顧客の要求レベルに応える高品質の化学薬品作りにこだわり続けることで、少しずつビジネスを拡大してきたのです」
「現在は20品目程度が売上の8割以上をカバーしていますが、ある化学薬品は他社と競合している一方、競合がいない化学薬品もあります。つまり、事業の一部において競合はあっても完全な同業他社はいない点が大きな強味となっているのです。大手は、設備規模に見合わない少量の化学薬品生産に今後も手を出さないでしょうし、特殊な化学薬品の製造には長年のノウハウも必要ですから、これからも同業他社は現れないでしょうね」
太字は筆者によるもの。はあ、部分競合はあっても全体としては競合会社はないと。
「創業当時から、すぐにビジネスにはならなくても、いつかはニーズが高まるであろう"ニッチな化学薬品"の開発も積極的に取り組んでいました。そのような我々の姿勢を知った顧客から、化学薬品開発・製造の相談や発注がだんだんと増えるようになってきました。当初より、顧客のどんな相談にも愚直に対応し、答えを出してきた。信頼を築いたクライアントと一体になってR&D(Research and Development)に取り組んだことが、私たちにとっての学びにもなっていったのです」
このような顧客との信頼関係をもとにした成長モデルは簡単には崩れない、と思う。
「エンジニアはニッチな分野の研究だけを続けていると、どうしても視野が狭くなってしまう。そうならないように、会社でやっているすべての業務について、社員には知ってほしいし、学んでほしい。たとえ開発が専門でも営業や管理部門を経験することで思考の幅が広がり、エンジニアとしてもビジネスマンとしても成長するものです。そのような理由から弊社では年に2、3度、大きく人をローテーションすることにしています。150名弱の社員のうち、一度に配置換えするのは20名程度。かなり大胆なやり方ですけどね」
これが、氏の経営の一つの大きな特徴かもしれない。
「IoT・AIの拡大や5G通信導入によって半導体の進化はこれからも続き、新たな化学薬品開発へのニーズは高まっていくと予想しています。新材料ニーズや高性能化の需要の高まりにより、新しくて大きなマーケットが出現するでしょう。私たちは、そのニーズに高付加価値・高純度の化学薬品で応えるため、未来に向けて投資し、しっかりとした準備をしています。 また、多くの化学メーカーがM&Aを足がかりにスケールアップを目指す方向にあって、その過程では各社が小規模事業をどんどん切り離しています。そのような領域を丹念に拾い上げていくだけでも、私たちにとっては大きなビジネスチャンス。ですから弊社にとって、今後も周辺環境は良好であると言えるでしょう。大切になってくるのは、難しいと思う案件でも『とにかくやってみよう』というR&Dの精神ですね」
同社は明日 3/15 に本決算であり、2022.01期の見通しも同時に発表するものと思われる。決算前に買うか、決算後に買うか。自分は両方やるつもりである。日足を置いておこう。
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