デジタルHD(2389)についてのメモ(1)
四季報 ONLINE より。
インターネット広告代理店。ネット広告分野でサイバーエージェントに次ぐ2位。金融や不動産業界が有力な顧客基盤。1994年に「デカレッグス」の社名で法人設立。95年、2015年に続き20年7月に社名変更しオプトホールディングからデジタルホールディングスに。CCCと資本・業務提携し共同出資でデータプラットホーム子会社を運営。ネット関連ベンチャー向け投資育成事業にも進出。05年からの電通との資本業務提携は17年解消。19年に海外事業からほぼ撤退。今後は企業のデジタル化支援コンサルを事業の中核にする方針。 (2021/07/30更新)
このプロフィールから想像されることは、ずいぶんと短い間に変化がいろいろある会社ということだ。公式の沿革を見てみよう。
このイメージは同社の創業年の出来事を引用するというよりは、左側の歴史のまとめが重要だと思ったのでもってきた。”2020 第三の創業期”というところに注目。自分は、事業会社が「第〇の創業期」と自らを呼称し始めてからの数年の間に株価は化けることが多いという仮説を持っている。要注目の会社である。では2020年に同社が何をやったか同じ沿革のページで前年の2019年から見てみる。
"企業のデジタルシフトを情報面で支援するメディア「Digital Shift Times」をオープン" "「デジタルシフトカンパニー」へ本格的に移行” など、この2年を説明するために「デジタルシフト」という単語が8個も使われている。2018年以前の沿革の説明には同じ単語は一つも使われていない。これは「デジタルシフト」が同社の事業の大変化のカギといってよい。
では、同社の考える「デジタルシフト」がどのようなものかを探ってみよう。
これは、公式ホームページの説明なので、ある意味第三者的な控えめな表現で3つのステップの違いについて説明しているが、同社が2019年に開始したメディアの Digital Shift Times に登場する同社および同社のトップマネジメントの面々のメッセージは並々ならぬ熱量を帯びている。いくつかにリンクしてみる。
2019年6月12日 公開の記事。
日本企業のデジタルシフトの道しるべになることをミッションに掲げ、未来を見据えて経営の舵取りをしている経営者層やデジタル部門・マーケティング部門の責任者向けに、デジタルシフトと向き合い企業の変革を進めていく上で必要となる情報を提供していき
同メディアを読んでもらいたい層は明確である。
鉢嶺 僕らは広告を軸としながらも、一方でベンチャー投資を続けており、その筋から最前線のビジネスの情報を入手しています。これに加え、米中のプラットフォームビジネスが大活況を呈している様子もつぶさに研究してきました。そのなかでもGAFAの影響力はすさまじい。トイザラスのように、アマゾンの台頭によって倒産する企業も出てきています。いまは小売業への影響が顕著ですが、いずれは全ての業種に行き渡るだろうと震撼しました。しかし、そんな話を対岸の火事のように安穏として聞く経営者も多く、この状況に危機感を覚えています。一社でも多く、一刻も早く、日本の企業をデジタルシフトしないことには、日本は米中のビジネスに飲み込まれてしまう。そんな焦燥感が出発点
わかる。
鉢嶺 従来の広告会社ではなくなります。広告だけではなく、人もビジネスモデルも、文化も全て変えなければいけない。会社全体がデジタルシフトするところを全てお手伝いできる存在になりたいですね。
鉢嶺 そうですね。広告をマスからインターネットに、というニーズのみを持つ会社は少なくなってきていますし、値段が安いのを理由に代理店を選ぶというフェーズでも無くなりつつあります。最重要視されているのは、「どの会社が真のパートナーとして、自社のデジタル化をサポートしてくれるんだ」ということ。ですから、今後は広告だけでなく会社全体のデジタル化を本気でサポートしている姿勢を、これまでの実績と合わせていっそう打ち出していきたいと思っています。
同社は当然ながら祖業のからみで広告でつきあいのある既存顧客が多いはず。その方たちにデジタル化のサポートのニーズがあることを嗅ぎ取っているのだろう。
鉢嶺 おっしゃるとおり、ビジョン、ミッション、バリューを新たにするところまでオプトグループにお任せいただきたいと考えています。なぜなら、これらを変えないことには、デジタルシフトはうまくいかないからです。デジタルシフトは、イノベーションですから。この領域にまでぜひ携わりたいですね。
これって、ある意味凄いことを言っていて、聞きようによっては会社の乗っ取りに近い。何しろ ”ビジョン、ミッション、バリューを新たにするところまで~お任せいただきたい”なのだから。
デジタルに移行しないと会社は変われないし、生き残ることもできない。この事実を自分ごととして、いかに認識できるのか、重要と捉えられるのか。その覚悟をトップが持つことからデジタルシフトは始動していくと考えます。
凄いね。「デジタルに移行しない」→「会社の死」 であり、「死にたくなければ、トップが覚悟を決めろ」というのが鉢嶺氏の基本的なメッセージ。でも、筆者は彼の問題意識は圧倒的に正しいのではないかと思っている。と同時に、自分のポートフォリオにある会社の名前を思い出しながら、それぞれについて財務的なファンダメンタル情報やチャートなどのテクニカル情報だけでなく、「トップが覚悟をもってデジタルシフトに向かっているか」についてチェックしないといけないなと思った次第。先日当noteでとりあげた旭化成なんかは「トップが覚悟をもってデジタルシフトに向かっている」大企業の代表例、ということになるだろう。
鉢嶺 大企業だけでなく地方の中小企業も含め、日本のすべての会社をデジタル化しないことには世界で生き残れなくなる、というくらい切迫した危機感が僕のなかにはありますが、その一方、意識が希薄な経営者、「デジタルのことは分からない」で終わらせてしまう経営者もいらっしゃいます。そういった方を、「Digital Shift Times」をとおして啓発したい思いがあります。デジタルシフトをしなければいけないと気づいた人が初めに訪れる、ここに来れば、デジタルシフトに関するあらゆる情報が入手できる。そんな期待に応えられるメディアを目指していきたい
さて、ここからは投資家目線の話になるのだが、ここまで調べてきて、筆者の頭に浮かぶのは、デジタルHD自体に投資するのと、上場企業で、本気で自社および業界のデジタルシフトを実現するためにデジタルHDないしそのグループ会社と組む事業会社に投資するのではどちらのほうがおいしいだろうか、という問いである。
メモ(1)はここまで。メモ(2) ではデジタルHDと組む上場会社について取り上げる予定だがその時間がとれないかもしれない。まあでも予習として以下を読んでおいて損はないかも。ぶっ飛ぶよ。