「売れない実力派地下アイドル」だった武蔵精密が一気に上場来高値に浮上

 武蔵精密は、11/07に業績の下方修正を発表した翌日から異次元の急騰をして一気に上場来高値を先週更新した。実は今期の業績下方修正と同時に以下の発表をしている。

連結子会社における新工場建設に関するお知らせ

 当社ならびに武蔵エナジーソリューションズ株式会社では、データセンター 運営事業者等に対して HSC の特性を活かして電力使用量を効率化する独自のソリューション を提案しています。世界大手の電機電子機器の受託サービス企業である Flex 社をはじめとし た複数の引き合いを受けており、量産開始の準備を進めています。 これらデータセンター向けの旺盛な需要に対応するため、山梨県北杜市の既存工場の年間 生産能力を現在の 20 万セルから 150 万セルへ拡張させる設備投資を実施し、本年度中の完了を予定しています。一方で、HSC に対する需要が当初予測を上回るペースで増加しており、 これに見合った態勢を構築すべく山梨県南アルプス市に新工場を建設し、年間生産能力を合 計 650 万セルまで拡大します。

同社適時開示

つまり、データセンター向け用途で、HSC(ハイブリッドスーパーキャパシター)の需要が沸き起こっており、今期中に生産能力を従来の 7.5倍にし、それをさらに4倍に拡大していくので、生産能力は今後数年間で 7.5倍 x 4倍なので30倍に増えるというのが上記開示の要点。

売上への金額的インパクトはどのくらいかについては、この記事が参考になる。

同社は11日に決算説明会を開催した。同説明会でHybrid Super Capacitor(HSC)について、2030年に事業規模1000億円を想定していたが、時期が2~3年前倒しになるとコメント

www.traders.co.jp

HSC は同社の新規事業なのだが、その売上規模が2027年か2028年には1000億になるというのが上の主旨。

同社の今期の売上会社予想は11/07の下方修正後で3350億。これに、今後3~4年でHSCの新事業の1000億がオンされるという皮算用になる。これが急騰の背景だと考える。

さて、それではHSCなるものは一体どういうものなのであろうか。同社の連結子会社である武蔵エナジーソルーションズの公式HPにあたってみよう。

ハイブリッドスーパーキャパシタは高いエネルギー密度と高い出力密度を兼ね備えた蓄電デバイスで、大電流での充放電が可能です。更に高い安全性を確保しながら、繰り返し充放電特性に優れ、自己放電が小さく、使用温度範囲が広いといった特徴を有し

www.musashi-es.co.jp

上記の特徴を活かしてデーターセンターの瞬低・停電対策に有効とのことである。

HSCの導入は、特にAIデータセンターにおいて大きなメリットをもたらします。AIトレーニングや推論では、計算負荷が急激に変動することが多く、それに伴って電力需要も大きく変動します。このような状況では、瞬間的な電力供給能力が求められるため、HSCの高い出力密度と高速充電能力が非常に有効です。HSCは、短時間で容量の80%までを20秒で充電可能であり、これにより電力供給の安定性が向上します。
また、HSCの長寿命と高耐久性により、予備電池の備蓄や頻繁な電池交換の必要が減少し、管理コストが大幅に削減されます。特に、従来の鉛電池やリチウムイオン電池に比べて、HSCは長期間にわたって信頼性の高い電力供給を維持できるため、データセンターの運用効率が向上します。

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同社に興味が出た方は、今年の6月の同社株主総会のビデオで大塚代表取締役CEOの経営戦略の説明部分(20:55~)を見ておくとよい。

同社は製造業の中では、DX先進企業でもあり、DX化を日本で実現して利益率の向上につなげ、それをこれから海外拠点にも広げて行くので、今後さらに利益率が向上するはず、というのが筆者の見立てである。

目先の同社株価は、14日終値ベースで25日移動平均線の上方乖離率46.63%まで過熱化しており、押し目が入るのを待って買っていきたい(長期にNISAで持つならONE株でまず1株買ってしまい、そのあとは株価の動きをみながら徐々に増していくというのもあり)


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