ストックオプション-スタートアップ経営者必携の8つの知識③
この連載では、「スタートアップの経営者が必ず知っておかなければならない8つのコト」をテーマに、各論点についてまとめて参ります。
① 株主間契約
② 資本政策
③ ストックオプション ◀今回はこちら
④ 資金調達用資料の作り方
⑤ バリュエーション
⑥ 基本的な事業計画の構成
⑦ 投資契約の留意点
⑧ フリー・キャッシュ・フロー
第3回目の論点は、こちらも相談を受けることが多い「ストックオプション」です。
言葉としては馴染んできているとは思いますが、いざ発行しようと思った時に、どの程度発行したらよいのか、タイミングとして適切か、上場への影響はないのか、無償型と有償型のどちらがよいのか、などなど多くの検討事項にぶつかることと思います。
ストックオプションも資本政策の一環ですので、後から「あーすればよかった!」とならないよう、事前にしっかりと検討しておきましょう。
Web上に税制上の話などはたくさん載っていると思いますので、今回は視点を変えて、主にストックオプションの類型にフォーカスを置き、それぞれの特徴を紹介しながら、自社にとってどのようなオプションを発行するのがよいのか、そうした判断が適切に行えるように情報を整理したいと思います。
また、スタートアップ向けの論点整理ということで、未上場の会社がストックオプションを発行することを前提にします。
無償ストックオプション vs. 有償ストックオプション
はじめに、無償SOと有償SOについて整理しますが、無償SOは税制適格として発行することが実務上当然求められます。
確認として、無償SOが税制適格になるのかならないのかで、具体的にどのような影響があるのかを知っておきましょう。
下の図をご覧ください。
このように、権利行使時に権利行使価格の20,000円と発行価格の8,000円の差額に対して給与所得等課税がかかり、金額によっては最高税率の55%(住民税含む)がかかってくるほか、株式の譲渡時には、譲渡時の価格である25,000円と20,000円の差額に対して譲渡所得課税である20%(住民税含む)が課税されます。
つまり、権利行使時に高い税率がかかるだけではなく、実際には譲渡前でキャッシュ化されていないタイミングで課税されてしまうわけです。
一方、税制適格の場合は以下の図のイメージになります。
税制適格の場合、権利行使時には課税されないだけでなく、株式譲渡時に譲渡価格の25,000円と発行価格の8,000円の差額に対して譲渡所得として課税されるため、税率としても格段に改善されます。
従って、無償ストックオプションの発行実務上は、税制適格要件を満たすことを前提に進められます。
では、次に税制適格要件を見てみましょう。
特に、留意しなければならない点は②の対象者と③の権利行使時の金額制限です。
この辺りが有償ストックオプションとの比較において、無償ストックオプションの使い勝手が見劣りする点になります。
さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、漸く無償ストックオプションと有償ストックオプションの比較をします。
どちらが優れているというわけではなく、発行するタイミング、会社又は対象者の経済状況に応じて使い分けをするのがよいと考えています。
以下の表をご覧下さい。