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交渉過程で大幅に値切られないためにできること—実例から学ぶM&Aノウハウ⑧

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M&Aは一筋縄ではいかないもの。
どんなトラブルが起こりうるのか、どうすれば対処できるのか?
これからM&Aにのぞむ皆様に、リアルな「経験者の
教訓」をお届けする連載。

各案件に深く携わってきた売り手支援のプロ・宮崎氏に解説いただきます

宮崎淳平 株式会社ブルームキャピタル 代表取締役社長
ライブドアグループ、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社社楽にてM&Aアドバイザリー業に従事。その他にもプライベートエクイティ投資案件、資金調達案件、及びファンド組成・運営を多数経験。2012年にブルームキャピタルを創業。同社は会社売却に特化した日本随一のファームとして知られている。『会社売却とバイアウト実務のすべて』著者。
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高額の買収オファーにのせられて…


ーある経営者が、お世話になっていた大企業の社長との雑談中に「君の会社、〇億円で売らない?」と言われてM&Aを検討し始めたところ、様々な理由で評価が下がっていって、最終的には当初に提示された額の5分の1で買収された、ということがあったそうです。


急に予想もしなかったような高額のオファーをもらえば、それまで会社の売却を全く検討していなかった社長さんでも、「それなら売ってみようか…」と考え始めるかもしれませんよね。
売りたい気持ちに火がついた状態で、言い返しにくい相手からそれらしい値下げ要求をされれば、多少不服に感じてもそのまま売却の方向で話を進める売り手さんはいるでしょうね。
この場合、悪く言えば「買い手の思惑」にはめられてしまった可能性は否定できません。

やはり、雑談中の口約束はあてにすべきではないですね。
そういうものはたいてい後から相当下げられますから、書面をもらうまではあまり真に受けない方がいいでしょう。



一番シンプルで強力な値下げ防御策


ー話が進むごとにどんどん値切られる、という事態を避けるにはどうすればいいのでしょうか。


値切る理由は正直作ろうと思えばいくらでも作れますから、一つ一つ予防するのは難しいでしょうね。
売り手がとれる一番シンプルで有効な対策は、他にも買い手候補を探しておくことです。
「それなら他の会社に買ってもらいますので」と言えれば、無理な譲歩をせずにすみます。

とはいえ、相手が魅力的かつ強気で交渉してくる買い手なら別の策が必要ですから、その場合は「値切り」に備えた対応をしたほうがよいでしょう。



値下げ交渉は必然的に発生する?


ー買い手から値下げ交渉をされないようにできるのですか?

売り手の工夫次第で、ある程度は減らせると思います。
まず、買い手が対象企業の評価を見直す(値切る)タイミングは大きく二回に分けられます。

①意向表明段階:
社長が雑談のノリで言った条件を「意向表明」(中間提示・実際の書面になる段階)で修正する

②DD後の最終段階:

詳細なDDの結果を踏まえて、意向表明時に提示した条件を修正する


①と②で評価の見直しが行われる理由が異なるので、必要な対策にも違いがあります。


①は、先述の通りそもそも「社長のノリ」をあてにするのをやめればなくせるギャップです。意向表明で提示されるまでは、相手の言葉を鵜呑みにしないようにしましょう。
ただし、まれにですが最初から適切な価格を提示してくれる手練れの買い手さんもいます。


問題は②のギャップです。
②のギャップは、M&Aの「意向表明の前と後で買い手が得られる情報が異なる」構造ゆえに生じる部分が大きく、減らすには工夫がいります。

売却を検討するために必要となる情報は機密度が高いものが多いので、売り手側は初期段階では限定的な情報しか開示せず、買い手の意向表明(=本気で買収を検討する意思表示)を受けてから詳細な情報を開示するのが基本ですよね。
そのため、詳細な追加情報を得たこと(DD)で、対象企業の評価の修正(値下げ)が起こる場合があります。



「後から大幅値下げ」を防ぐ方法


ー詳細DD後の値下げを防ぐのは、かなり大変なのでしょうか。最初からある程度の値下げを想定しておくべきですか?

いえ、そこまで難しいことではありません。
詳細DD中に「想定外の値下げ要素」が極力出てこないようにできればいいわけで、具体的に打てる対策としては2つあります。

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