バリュエーション-スタートアップ経営者必携の8つの知識⑤
この連載では、「スタートアップの経営者が必ず知っておかなければならない8つのコト」をテーマに、各論点についてまとめて参ります。
① 株主間契約
② 資本政策
③ ストックオプション
④ 資金調達用資料の作り方
⑤ バリュエーション ◀今回はこちら
⑥ 基本的な事業計画の構成
⑦ 投資契約の留意点
⑧ フリー・キャッシュ・フロー
第5回目の論点は、「バリュエーション」です。
今回お話したいバリュエーションとしては、大きく二つあります。
一つ目【A】は、第2回のテーマでお話した資本政策とスタートアップが資金調達時に提示するバリュエーション。
二つ目【B】は、Exit手段の一つであるバイアウト時のバリュエーションです。
同じバリュエーションでも、【A】において原則として前提となるNew money*1(会社内に外部の資金を注入して、成長を加速化させる)を前提とするバリュエーションと、【B】において原則として前提となる売り切り時におけるバリュエーションとでは全く投資家サイドからの見られ方は異なります。
とはいえ、会社運営をしていく中では、【A】と【B】が両方シナリオとしてあり得るのは当然のことなので、その辺りも意識して説明していきたいと思います。
【A】スタートアップが資金調達時に投資家に対して提示するバリュエーション
(原則として上場を目指す企業におけるバリュエーション)
よく言われるのが、スタートアップが提示するバリュエーションというのは、スタートアップ側の「言い値だよ」ということです。
ある意味正しいのですが、ラウンドを重ねていくうちに、エンジェル、シード期にずさんな考えのバリュエーションで調達してしまっていると、後半辛くなりますので、まずはしっかりと②『資本政策』でご説明した資本政策表を作成したうえで調達を行うようにしましょう。
少しだけおさらいさせて頂きますと、理想的な資本政策としては、
・調達1回当たりの希薄化が10%から15%程度に収まっている
上場時に創業メンバーでまだ過半を維持できている
・1回の調達で概ね1年程度資金が持つような形になっている
事業に集中する期間が必要な場合には、1.5年から2年程度分の調達をすることもあります
・上場時の想定時価総額から勘案して、各ラウンドのバリュエーションが高すぎない
となります。
これをバリュエーションの観点から整理すると以下のようになります。