
5分間一発勝負の難しさ…「自分史上最高」のプレーをしてから辞めたい――塩崎未英さんインタビュー
2017年のジャパンオープンに出場し、いきなり男女混合部門で2位になったことをきっかけに、フレスコボールを本格的にスタートした塩崎未英さん。長年のテニス経験を生かして打つアタックが魅力です。
2018年は私(落合真彩)と女子ペアを組み4大会に出場。優勝2回、準優勝1回で日本代表に選出され、12月のブラジル大会にも参戦します。
今回は、同じく日本代表の小澤彩香さん、夏目脩平さんとともにインタビューを行いました。練習嫌いを自称する“ちゃんみえ”は、なぜフレスコボールにハマったのか。とても興味深いインタビューとなりました!
ジャパンオープン2017に出て、昔の気持ちがよみがえった
― フレスコボールに出会ったのはいつですか。
塩崎 去年(2017年)の6月くらいですね。大学の先輩である芝さん(芝卓史:日本代表)から突然「フレスコボールやらない?」ってFacebookメッセージが来て。最初は、大会に出るとかの話ではないと思ってたんですよ。だから「いいですよ」って、行って最初にやったときに芝さんに「これだったら大会いけるね」って言われて(笑)。
― それで「出ます」って?
塩崎 そうですね。いきなりジャパンオープンに(笑)。それももっと小さい規模の大会だと思ってたので、出てもいいかなと思って当日行ってみたら、「え!観客席まであるじゃん!」って(笑)。
―(小澤) 出てみてどうでした?
塩崎 めちゃくちゃメンタルスポーツだなと思いました。
― おお。最初の大会で、もうそういう風に思ったんですね。
塩崎 全部のスポーツって結局メンタルですけど、でもたとえばずっとやってたテニスだと、試合時間も長いし、どれだけミスっても、試合時間の間で自分の気持ちを立て直して、取り返せるじゃないですか。でもフレスコボールは5分間一発勝負。しかも相手と気持ちを通じ合わせないとできないんだなと思いました。
― その大会ではミックスで2位。
塩崎 2位でした。めっちゃ悔しかった。負けた理由は明白で、前半に落球しまくったこと。それが確実に敗因ってわかってたので、明確なほど悔しくないですか?それに、もっと練習できてればそこで落とさないよねと思って。悔しいからもっと練習してレベルアップしたいなって大会後は思いました。
―(小澤) だから続けようって?
塩崎 そうです。優勝したくて続けました。
―(夏目) 負けず嫌いなのはわかるけど、ちゃんみえは勝負にこだわるイメージがそんなになかったんですよね。っていうのは、バリバリやってたテニスを一回辞めた。そういう人って、そこからまた勝負の世界に行きたいっていう気持ちがなくなりそうな気がするんですけど。
塩崎 確かに大学でテニスを辞めてから、社会人になって4年間くらいは、「勝負」みたいなことをしてなかったんですけど、大会に出て、逆に昔の気持ちがよみがえりました。
― 軽くできればいいやっていうスタンスにはならなかった?
塩崎 根が本当に負けず嫌いなんでしょうね。気持ちが再燃しちゃいました。
「一瞬、何かに取り憑かれたのかと…」転機になったミウラカップ
― テニス以外のスポーツはやってたんですか?
塩崎 陸上はやってましたね。小さい時は陸上選手になりたかったんですよ。小学校高学年くらいで短距離は無理だと思って、長距離に変えて。普通に箱根(駅伝)とか出たいなと思ってたぐらい。出られないけど(笑)。
― テニスは大学まで。
塩崎 そうですね。でも、皆さん感じてるかもしれないし、言ったら怒られるかもしれないですけど、私練習が苦手なんですよ(笑)。練習はやりたくないけど、練習試合とか大会は好きだから出るみたいな。
― サクラカップ(2018年4月)の前とか結構練習頑張ってたと思いますが。プレッシャーはなかった?
塩崎 ミウラカップ(2018年7月)で負けるまではなかったです。
―(夏目) かっけー!(笑)それはなんで?
塩崎 まあやさん最強だから(笑)。私はとりあえずこの右腕でアタック打ちまくればいいかなって。
―(夏目) でもバックもかなり練習してましたよね。
―(小澤) うん、練習嫌いなのにフレスコボールの練習は結構頑張ってたと思うけど。
塩崎 私の中では、後半になるにつれて頑張ったんです。その理由は、ミウラカップで負けたときに、本当に、マジで「しまった…」と思って。
―(夏目) 終わった後やばかったよね。僕が「大丈夫?」ってLINE送ったら「大丈夫じゃない」って返ってきた。それで、「やべーな」って思ってました。
塩崎 なかなか「大丈夫じゃない」とか、言わないんですけど。その時は本当に申し訳なさで。だって私だけじゃないですか、まあやさんを負けさせてしまってるの。「本当にごめんなさい」って思って、もう練習嫌いとか言ってられないって。なのでその後は結構頑張りました。
―(夏目) ミウラカップの試合中は感覚違ったんですか?
塩崎 何なんですかね。私に来るボール全部落としましたもんね。今でも原因はよくわからなくて、本当に一瞬、何かに取り憑かれたのかなと思いました。フォアは大丈夫だったんですけど、バックが一番最初から崩れてましたね。1回目が返らなくて、本当にそこからはただただ返らないみたいな。
― びっくりしたよね。練習はできてたのに。
塩崎 そう。直前の1分間練習は普通にできてたのに、本番に入りだしたら、「あれ!?」って…(笑)
―(夏目) でもそれがなかったら、1年間なあなあで終わったんじゃないかなっていうのはありますかね?
塩崎 それは確かにあるかもしれない。「次はマジで優勝しないとやばい」と思いました。
ブラジルに行きたいと思った去年12月。きっかけは……?
―(小澤) ジャパンオープンは、「今回は優勝しないと」っていう。
塩崎 「優勝以外は本当に何もないでしょ」って思ってましたね。でも、プレッシャーというか、ミウラカップと同じ悲劇が起きたらどうしようっていう恐怖感がすごくあって。本当に原因不明で、イップスみたいになってたのでめっちゃ怖かったです。
―(小澤) ジャパンオープンの出来は自分的にどうだったんですか。
塩崎 もっといけましたよね。冒険しないで打とうっていう感じだったので、その分あまり伸びなかったです。出し切れなかった。(ジャパンオープン2018は女子部門2位)
―(小澤) まあやさんと組んでて一番印象に残っていることは何ですか?
塩崎 真夏に熱中症になりかけながら2人で練習したこととかは印象に残ってますね(笑)。
―(夏目) 僕の勝手なイメージだけど、春は結構みんなと練習してたけど、その後は短時間、中野で“コソ練”みたいな。
塩崎 そう!私絶対そういうのしないタイプだったんですよ。別途時間を取って練習、みたいなこと。でも、それでも練習したいなって思ったし、勝つためにはやらなきゃいけないって思えた。それが一番の思い出と言うか、「そんな風になるんだ、自分も」って思いました。こんな本気になってる自分にびっくりしました。
―(小澤) ブラジルはいつから行きたいって思ってたんですか?
塩崎 最初に思ったのは、本当にひどいモチベーションなんですけど。去年芝さんがブラジルに行ってる途中に、LINEが来て、「ちゃんみえ!ブラジルのビールはめちゃくちゃ美味いぞ!」って言われて(笑)。
(一同爆笑)
塩崎 「朝、練習してビール。練習して、昼ビール。練習して、3時ビール。練習して、夜ビール。マジで最高!」って来たので「私もそれ行きたいです!」って(笑)。
― 最高。ちゃんみえらしい。
―(夏目) 今はそれだけじゃないでしょ?
塩崎 もちろん行くならしっかり日本代表として行きたいと思ってたし、この前のジャパンオープンの時に本場の人たちと打ってみて、もっと生で見たいなとか打ってみたいなっていう気持ちになりました。
―(小澤) ブラジルはペアを変えての参戦ですけど、そこはどう思ってますか。
塩崎 今年はずっとまあやさんと組んでましたけど、フレスコって大会ごとにペアが変わる人もいるじゃないですか。テニスの時はずっと同じペアだったこともあって、私は自分からはあまりペアを変えないので、ブラジルで変わるのはめっちゃいいきっかけですね。そういう状況があるほうがいいなって思ってます。
ラリーがハマった時、“無”になれるスポーツ
―(小澤) 今後はどうしていきたいとか、考えてますか?
塩崎 それは当初から悩んでたことでもあるんですけど。練習にあまり行ってないとか、イベントとかも何も手伝えてない私みたいな人が、日本代表として行っていいのか……そもそもフレスコボールを続けていいのか。っていうのはわからないなとずっと思ってるんです。
―(夏目) ちゃんみえが「フレスコボール楽しい」って思ってるんだったらそれでいいんじゃない?とは思いますけど。普及活動してる人たちも「あの子来ないよね」って文句言うことはないから。
―(小澤) やりたかったら続ければいいと思う。それがちゃんみえスタイルだと思うし、悩むことじゃないよね。
塩崎 ……めっちゃ救われたんですけど今。ずっとこれ悩んでたんです。ありがとうございます。
―(夏目) 続けたいって思うのは、目標があるから?
塩崎 目標は、ふわっとしてますけど「悔いなし」っていうところまで行って辞めたいですね。自分の限界が見えたり、打ってて「自分史上最高にベスト」って思った時に辞めたい。
―(小澤) フレスコボールの何がそんなにハマったんだろう。
塩崎 今まで私がやってきたスポーツは全部個人競技なんですね。とりあえず目の前の相手を倒すっていう。でもフレスコって絶対相手のことを気遣いながらやらなきゃいけなくて、それが今までの人生で一度もやったことがない。だから惹かれたのかな。
― それがハマった理由。
塩崎 それと、なんかよく言われるんですけど、「ちゃんみえって“無”になったりしないの?」とか、「そういう時間つくった方がいいよ」とか。私いつもバタバタ何かしてたり、考えたりしてるので。
でもそれこそフレスコのラリーの、ハマった時って“無”じゃないですか?私はその時“無”になれるから「あ、こういう時間って自分の人生に必要だ」って(笑)。
― すごい。新しい(笑)。
塩崎 「今までの自分の人生には無がなかった!」って思いました。
―(夏目) 忙しい人におすすめ?(笑)
塩崎 おすすめかもしれない!ハマったら無になれるよって(笑)。その時間が気に入ってます。無になれる数十秒。
― 新しい勧め方ができましたね。それを他の人にも伝えていってください(笑)。ありがとうございました!
次回のインタビューもお楽しみに!
↓↓日々更新中!↓↓
フレスコボール協会Facebook
https://www.facebook.com/frescoballjapan/
フレスコボール協会ブログ
http://blog.livedoor.jp/frescoball/
いいなと思ったら応援しよう!
