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落ち込んで、癒されて、また悔しくなって。でも、みんながいるから続けて来られた――細井彩未さんインタビュー
今回のインタビューは、ジャパンオープン2017で私と女子ペアを組んで優勝した細井彩未さん。2015年秋からという、女子としてはかなり早くからフレスコボールに親しんできました。
これまで2回女子のペアを変えていますが、1度目は「ペアを解消する」という選択肢がまだなじんでいなかった頃でもあり、いろいろな葛藤があったと話します。
有沙のインタビューと同様、私の元ペアということだったり、最初のペアを解消したときのいろいろな事情だったり、かなり聞きづらさはありました。ですが、今だからこそ聞いておかないといけないと思い、単刀直入に聞いてきました。感情のこもったインタビューです。
仕事帰りに、公園の電灯の下で練習したこともあった
— フレスコボールとの出会いはいつですか?
細井 2015年の10月くらいで、シーシャ(水タバコ)屋さんで仲良くなった男の子に、やってみませんかって言われて。後日公園でやってみたら、ハマりすぎて、3時間ずっとやってました。
— 最初からできたんですか?
細井 その人も上手かったし、テニスのボレーボレーやってる感覚でいいよって言われてやってみたら、普通にできました。そこからはたまに公園に集まってポンポン打ちあう感じだったんですけど、2016年の3月に、大会があるから出ようという話になって、仕事帰りとかに練習してましたね。
— 仕事帰り…?
細井 暗い中、高円寺の公園の電灯の下とかで練習してました。19時~20時くらいに集まって。
— え!すごい!本格的に練習を始めたのはいつなんですか?
細井 最初のペアの弥生さんと仲良くなったのが、はるな愛さんがフレスコボールの撮影に来たときで、2016年の頭くらい。その頃は、本気でやりたいって言ってる女子が私と弥生さん含め4人だけだったので、あれよあれよと仲良くなって、気づいたらペア組んでました(笑)。
— それでジャパンオープン2016に出たと。
細井 その年は、私もそこまで「やるぞ!」みたいな感じはなくて、「へー女子部門できるんだ!それなら1番取りたいな」ぐらいの気持ちで。でも、そこでいきなり出てきた真彩・有沙ペアが優勝して、死ぬほど泣きました(笑)。
— それに関してはノーコメントで(笑) 。
細井 いや、もう、それまで女子では私と弥生さんが一番上手いよって前事務局長のさわりょー(澤永遼)から言われてたので、最初に2人(真彩・有沙ペア)がいいプレーをしたのを見て、「まじかよ」って落ち込んだ(笑)。
可愛がってくれた人を、私は裏切るのか・・・
— ジャパンオープンが終わって、1回フレスコボールから離れましたよね?
細井 みんなとは離れたけど、フレスコからは離れてなくて、別の人たちと練習してたんです。今はその期間、みんなとやらなかったことを心底後悔してますけど、あのときはすごく悩んでて。
— やめるかどうかを?
細井 いや、フレスコボール自体をやめることはなかったと思うけど、みんなのコミュニティにはもう入れないかもって思う時期はありました。今思えば、女子がいない(少ない)ことが私の中では大きかったんですよね。
久々に来てみたら、「え、女子めっちゃ増えてる!」と思って。そこでだいぶ視野が広がったかなと。小澤・風味ペアとか、真彩・有沙ペアを見て、「上手いな、悔しい」って。同世代だし、気持ちが揺れた部分はありました。そして、真彩ちゃんと打ってしまった(笑)。
— え、それまで打ったことなかったっけ?
細井 ないない。そもそも関わりがなかった。はじめて打ったのが去年(2017年)の5月くらい。
— まだ1年しか経ってないんですよね。そして、ペアの話になるわけですけど…ペア解消とかってことの前に、私に声をかけてもらってたと思います。それはどうして?
細井 フレスコボールって精神的なところもだいぶ出るから、私は結構一緒にいる人の空気感を大事にしていて。真彩ちゃんは同い年だし、話も(意外と)めっちゃ合うし。「え、やばい、超好き」と思って。(笑)
「え、この子諦めるのとか無理無理」って思って、見切り発車みたいな形で声をかけたんです。でも、もちろん何も考えずに声をかけたわけではなく、真彩ちゃんが決めることだし、最悪今年の夏は大会には出られないだろうな、という覚悟でした。
— その後、弥生さんとはどういう話に?
細井 ペアを解消するっていうのもほぼ前例がなかったし、私とペアで出るために、何より弥生さんが努力してくれてて。。「(自分と組んでいて)申し訳ない」って言ってくれてたのも知ってたし、娘みたいに可愛がってくれたし、それを知った上で、私は裏切るのか、と思って。
そう思われても仕方ないという気持ちではいたけど、なかなか私からは言い出せなくて。その時にさわりょーが「気まずいなら、呼んでくれたら俺が間に入るよ」って優しい言葉をかけてくれて、3人でご飯を食べに行きました。
それで「解消したいんです」っていう話をしたら、もうほんとに弥生さんは大人で、「全然いいわよ」って。「何だそんなことか」みたいな雰囲気で言ってくれて。
— それはかなり救われますよね。
細井 でも今は、あの時ちゃんと2人だけで話せばよかったなって、後悔しています。今はまた一緒に打ったりもしてますけど、結構最近まで、申し訳なさで合わせる顔がなかったので。
解消してから久々に会ったのが大会(ジャパンオープン2017)の時で、弥生さんたちが先にすごくいいプレーをしているのを見て、本当に焦って。めっちゃ上手いなっていう動揺と、解消してもらったのに、それ以上ができなかったら私もうここにいられないな、みたいな。ぐちゃぐちゃしてました……
— でも、そもそも、一応チャンピオンである私と組むっていう部分に、やりづらさはなかったんですか?
細井 それはもう、普通のプレッシャーじゃなかったですよ。真彩ちゃんはフレスコ女王で、負けてなくて、それなのに組みたいとか言って私バカなのかな?と思ったくらい(笑)。でもそれも考えた上で、それでも組みたくて。自分はプレッシャーに弱いのに、あえていろいろ乗っかるものをつけて大会に出たもんだから、記憶がないです。
— ボール持たずに始めるし(笑)。
細井 それ!(笑) 初心者かっていうくらい、1分間練習で打てないし。でもなんか応援席側から「細井さーん!」って言われたのだけはすごく覚えてる(笑)。あと、タカ(倉茂孝明・日本代表)がボール出しながら応援してくれたのも。
みんなと練習すると悔しい。けど、一緒に頑張っていきたい
— 今回はインタビューにあたって、ある人から質問リクエストがあるので、読みますね。「有沙や真彩さんより前にはじめたのに、どんどん人が増えていって……きっといろんな葛藤があったと思います。そんな中、どんなモチベーションで続けることができたんですか?」 どうでしょう?
細井 いや、正直だいぶ心折れてますよ。なんなら練習行くたびに心折れて、家に帰って反省して、飲まなきゃやってられないみたいな。今もずっとそう。やっぱり上手い人と打ってきた子たちの方が伸び率が高いんです。私はその時期にいなかったから、それに対する嫉妬とか後悔とかはすごくありました。
でもやっぱり練習に行くと楽しいし、みんなに癒されるから、それが一番で。今は週末1日やらないと物足りなくなるくらい、フレスコボールをしない生活を忘れてます(笑)。何かあっても誰かしら練習場所にいるから、それは大きいし、みんながいるから続けてこられた。いやー、でも、ずっと悔しいよ。
私はマイナス思考だから、昔からずっと自分に納得がいかなくて、人と比べすぎて劣等感、みたいなものはずっとあります。勝手に自分で苦しくなって。今は昔よりは自分のことを認められるようになったけど、結構家で「うわぁぁ…」ってなったりします。
— それは辛くはないんですか?それよりも楽しいとか、元気が出るとかの方が勝ってるってこと?
細井 そう。辛いけど、悔しいなーて思ってる人たちが、みんな頑張ってるって知ってるから、悔しいけど一緒に頑張っていきたいっていう。単純に一緒にいる人たちが好きで、会いたくなるんですよ。だから週末が来るのが待ち遠しくてしょうがない!そう思って行くと、また落ち込むっていう。とにかく感情が忙しい!(笑)
— でも、ペア解消の件で一個覚悟を決めたっていうのは、大きかったですね。
細井 腹括ったのは大きかった。そもそも大人になってから真剣に何かをやるなんて思ってなかったし、結構人に合わせて生きてるタイプだったから。始めた頃はみんなで楽しくやろうみたいな感じだったし、ペアを解消してまで頑張りたいっていう空気もなかった。でも最近は、競技性が上がってそういう話もしやすくなったし、平気で「悔しい」とか言えるようになりました。
ペアと一緒に成長して、「自分の力でこれだけ上がってきた!」と思いたい
— 今後の目標は?
細井 今は、大会で上位に食い込みたいなと思っています。正直優勝するのは厳しいかもしれないけど、ランキングでは上の方にいて、日本代表に選ばれて、ブラジルに行きたい。だから今までにないくらい真剣に取り組んでますね。
今年あきのとペアを組んだのは、去年真彩ちゃんと組んだ時に、「勝てたけど悔しかった」という思いがあるから。「このままずっと引っ張られてちゃダメだ」と思って。
だからここで一からやり直したい、リセットしようと。あきのからはありがたいことにずっと組みたいと言われていたので、今年は一緒に成長したい気持ちです。その中で、自分の力で上がってこられたというのを思いたいというか。
— 自分の力でどれだけ上がれるかということ。
細井 そうそう。できると思ってやってます。あと普及活動としてフレスコボールを広めたい気持ちもあるから、それを手伝うために、人に教える力もつけたいなと思います。
— なるほど。相手に引っ張られているままじゃダメだっていうのは、私も有沙がいなくなって思いましたね。去年の夏はそういう気持ちでもあって。なんかこう、バトンじゃないけど(笑)。
細井 バトンタッチして回ってきた。だから言ってる自分にすごいプレッシャーかかってますけど。でも、今近くにいてくれてるメンバーはだいぶ心の支えになっているので、いてくれなきゃ困るなと思ってます。(笑)
— それはたぶん、みんながお互いにそうだと思います。
細井 まだ出会って1年経ってない人も多いのに、一緒にいるのが当たり前になっちゃってるから。これからもよろしくお願いします!(笑)
次回のインタビューもお楽しみに!
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