究極の沖縄そばをお取り寄せしよう、というお仕事。(中編)
(長いので分割しました。前編はこちら。)
5年ほど前の10月、「究極の沖縄そば」「日本一の沖縄そば」といわれる茉家の沖縄そばをお取り寄せしてみたところ、本当にすばらしくおいしく「これはお店に行って食べねばならぬ」と、すぐに沖縄まで食べにいくことにしました。
そして11月。「電話は忙しくて取れないことがある」という親父のガイドにしたがって、おおよその到着時間をFacebookページから連絡。早く着きすぎることもなく、かといって遅れることもないように向かいます。
当時、その店は西原という那覇から少し外れた住宅街にあって、本当に「その店以外はすべて住宅」というところ。およそ店があるとは思えないようなところで、タクシーの運転手も「こんなところに沖縄そば屋なんてあるの?」とぼやきます。
ついてみるとお店もまさにただの民家。
(西原にあった頃のお店)
店の扉を開けると「こわい親父」と言われてた親父はやはりこわい見た目で、「もう少し待ってくださいね」と言われます。丁寧な言葉使いですが、やはり威圧的とも取れる声色(その後、単純に忙しくて余裕がなかっただけということがわかりましたが)でした。
「お取り寄せ(通販)で食べて感動してお店までやってきた」ということを伝えたいと思いつつ、親父の凛とした佇まいはそう話しかけることを許しません。そそくさとメニューを選び最もベーシックな三枚肉そばとジューシー(沖縄では炊き込みご飯をじゅーしーといいます)をオーダーします。
(なお、沖縄そばとソーキそばを混同されている方が多いので、それについてはまた書きたいと思います。)
他のお客さんもいなくなるなか、職人としての親父の所作がカウンターからも見え、数分ののち三枚肉そばとジューシーが供されます。
そのときのそばがこれ。丼のうらにネギが隠れていますが、なんともストイックなたたずまい。写真を撮っていることにまた怒られるのではないかとおもってそそくさと写真をとり、スープを一口。
「なにこれ?」
お取り寄せ(通販)とはいえ、一度、食べていたにもかかわらずやはり驚きの感情が湧き起こります。麺もまたお取り寄せですらとてもおいしかったものが、その場で食べれば歯応え、風味もやはりその上をいきます。小麦の香りがはっきりとする。
夢中でスープをすすり、麺をすすり、その合間にはネギをのせ、三枚肉をのせ味を変えていきます。それだけで美味しいスープはネギをのせればネギの香りとまた調和し、三枚肉をのせればまた三枚肉の甘さ、コクと調和していきます。
無我夢中で食べていたのは10分くらいの時間だったでしょうか。
食べ終えて会計の際、閉店間際ということでほかのお客さんもおらず、いくぶん余裕ができたと見えた親父に声をかけてみました。
「東京からきました。お取り寄せで食べてみて、こんなにおいしい沖縄そばがあるのかと思いまって食べにきたのですが、当然ながら現地で食べるとよりいっそうおいしかったです。いろいろ食べてきましたが、本当にこれが沖縄で一番の沖縄そばですね」
親父
「(照れ臭そうに)お取り寄せよりもおいしかったですか?」
「お取り寄せもものすごくおいしかったですが、ここで食べたのはそのさらに上です。」
親父
「それは良かったです。また沖縄に来たときには寄ってください。」
そこでふと思いました。次の日の予定はあいまいで、来る気になれば明日もこの店に来られる。とっさに
私
「また沖縄に来たときではなく、明日きます。」
親父
「え?明日も来るの?本当に?
そうか、じゃあ明日も来てくれたら常連にしか出さないメニューがあるからそれを出してあげよう。」
にっこりと笑いながらWebで見ていた評判とはまったく別の気の良い親父。
次の日も顔を出すと「常連にしか出さない」という「キムチ煮込みそば」を出してくれました。これがいうまでもなくまた素晴らしい一品で、スープとキムチと沖縄県産の豚の甘味が溶け合います。
そんなこんなで仲良くなってから5年あまり。
今年から一緒にお取り寄せの通販に取り組みます。何をしていくのかはまたおいおい書くとして、親父と握った条件は「沖縄への旅費」程度のもの。しかし、それでいいのです。
この素晴らしい沖縄そばを世の中に広めていくためのチャレンジです。
さて、生きていけるのか私。
続く