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映画の扉_cinema

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どんなに移動手段が発達しても世界のすべては見れないから、わたしは映画で世界を知る。
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#実験映画

【映画評】 ペドロ・マイア監督〜アナログ・シネマ〜WASTE FILM(考)

ペドロ・マイア監督〜WASTE〜アナログ・シネマ〜覚書 1983年ポルトガルで生まれ、現在はベルリンに在住する監督ペドロ・マイア(Pedro Maia)。 アナログ・シネマを主なコンセプトとして作品を制作する前衛映像作家である。 アナログ・シネマとはデジタル・シネマの対概念でもあるのだが、いわゆる〈フィルム/デジタル〉という対立項に回収されるものではない。 〈フィルム←→デジタル〉変換ラボで働くペドロ・マイア。 彼がアナログの技術性・芸術性を自覚的にアプローチしたのは2

【映画評】 《大力拓哉&三浦崇志映像作品集》覚書

2015年5月、京都河原町五条に誕生したLumen Gallery。映像の可能性を追求する映像ギャラリーとし多くの上映が行われてきたのだが、2020年に始まる社会状況の影響を受け、2022年3月、閉廊となった。その7年間、多くの企画上映や映像個展が行われたのだが、その中の一つ、《大力拓哉&三浦崇志映像作品集》展(2016.5.31〜6.5)について、備忘録を兼ね、記しておきたい。 大力拓哉&三浦崇志は、1980年大阪府出身、幼馴染みの映像作家デュオである。ジャンル的には実験

【映画評】 イメージフォーラム・フェスティバル2013 萩原朔美『秋丸・春丸―目の中の水』、中野智代『Lily』、黒川芳朱『都市と知覚のフィールドノート1』、宮川真一『みずうみは人を呑み込む』 〝セルフ〟とは

2013年に開催されたイメージフォーラム・フェスティバル2013《創造するドキュメンタリー、無限の映画眼》 開催当時のわたしのメモを読み返していたら、〝セルフ〟についての脳内を螺旋運動するかのような迷宮思考を見つけた。 同フェスティバルはテーマ別に分類されたプログラム群で構成されているのだが、『ジャパン・トゥモロウ』部門の中のEプログラム《対象である自分 セルフドキュメンタリーの現在》。 わたしはEプログラムに触発され、鑑賞後、〝セルフ〟とは何かと問うてみた。 セルフとは何

【映画評】 グスタフ・ドイチュ『シャーリー リアリティーのビジョン』 文化的接ぎ木の試み、そしてヴィム・ヴェンダース

オーストリアの実験映画作家、グスタフ・ドイチュ(Gustav Deutsch)。 ドイチュは、世界の膨大なフィルムアーカイブから探し出されたフィルムの断片を繋ぎ合わせ、新たなシークエンスを作り出すことで知られる作家である。 (映画スチール写真=すべてイメージフォーラム・フェスティバルより) 彼の映画は、なにを撮るのかではなく、世界はあらかじめ断片化されており、それをどのように編集するのかを実践する場と言える。 それは、すでに撮られた映画を内包した、映画史の映画であるととも