【映画評】 安川有果監督『Dressing Up』の断片的試論
どこに在ってもいい気がするし、ここであるとか、あそこであるとか、名指しなどするほどでもなく、目が覚め、闇から抜けきらない意識の中でさえも、やはりそれは在るのであり、気付くまでもなく、そこには駆り立てるものがあり、それに抗おうにも為すすべはなく、例えば「降ろせ」と呟いてみたり、「死ね」と呟いてみたり、それらは車の走行音とか、得体の知れない音、例えばヘリのプロペラ音かもしれない雑音にかき消されたりもするのだけれど、確かに「降ろせ」とか「死ね」と何かに向かって命令したのであり、どこ