【映画評】 告白の幾何学夢譚。ラウス・ルイス監督『ミステリーズ 運命のリスボン』、福永武彦『忘却の河』
わたしたちは過去という固有の時間(=物語)を持っており、固有の時間を告白することで物語は相互に交差しあうという現象が起きる。固有の時間(=物語)、それを記憶と名づけてもいい。
修道院に預けられた孤児ジョアン、彼には姓はない。姓とは出自の記憶であり、ジョアンには出自の記憶が隠蔽されている。
ジョアンが自らの出自に関する謎を探り始めるところからラウス・ルイス監督『ミステリーズ、運命のリスボン』(2010)は始まる。だが、謎を解くのはそう容易いことではないだろうし、不可能であるか