【映画評】 青山真治『路地へ 中上健次の残したフィルム』 路地、層
和歌山県新宮市の被差別部落を舞台にした中上健次の短編集『千年の愉楽』(1982)。同短編集を原作とする若松孝二監督の作品に『千年の愉楽』(2012)がある。誕生と死、その中間二項である“生|性”。血にまみれて生まれ、血にまみれて死んでゆく3人の〝路地〟の男たちと、その生き様を見守る産婆オリュウノオバの物語である。
〝路地〟とは被差別部落のことであり、中上健次により名づけられた用語である。地勢的にも時間的にも、深度を纏った用語である。
中上健次が生前、失われようとする〝路地