【MaaS体験記#3】福島県会津若松市でSamurai.MaaSを使って観光してみた
はじめに
このnoteでは、全国各地のMaaSのサービスを実際に体験して、その感想などを発信していきます。
現在、日本各地で数多くのMaaSの実証実験が実施されていますが、サービスの内容や対象範囲などは実施主体者により様々です。
そこで、このnoteでは実際にMaaSを利用した感想や他のMaaSサービスと比較して、サービス間の違いなど、体験をもとに考察していきたいと思います。
第3弾の今回は福島県会津若松市で展開されているSamurai.MaaSの体験記です。
Samurai.MaaSとは
「Samurai.MaaS」(さむらいまーす)とは、会津若松市における新たなモビリティサービスの実現に向けた取り組みです。2019年度には国土交通省の新モビリティサービス推進事業の先行モデル事業に選定されています。
対象事業の概要は、
となっており、会津若松市の地域特性を活かした実験内容となっています。
また、会津若松市はスーパーシティ構想にも挑戦しており、様々な分野で先進的な取り組みを行っていますが、モビリティ分野における取り組みの推進体制の中にSamurai.MaaSプロジェクトの名前が記載されています。
国土交通省の新モビリティサービス推進事業の実証実験自体は2019年度で終了していますが、Samurai.MaaSプロジェクトのロードマップに従って、実験終了後も様々な先進的な取り組みに挑戦しています。
現時点では、Webアプリを使用した以下のデジタルチケットの販売・利用のサービスが行われています。
① 大内宿共通割引きっぷ
② 会津ぐるっとカード
③ まちなか周遊バス1日フリー乗車券
今回は、①の大内宿共通割引きっぷと③のまちなか周遊バス1日フリー乗車券を利用して市内を巡ってみました。
使ってみた
◆大内宿共通割引きっぷ
大内宿は南会津郡下郷町にある観光名所です。江戸時代の宿場町の面影を残す貴重な場所となっており、年間80万人ほどの観光客が訪れるようです。
大内宿への電車での最寄り駅は会津鉄道の湯之上温泉駅となっています。会津若松市からはJR只見線・会津鉄道と乗り継いで40分ほど、浅草方面からは会津田島駅まで特急を利用して、その後会津鉄道で30分ほどの距離にあります。
湯之上温泉駅からはバスが出ており、15分ほどで大内宿へ到着することができます。
会津鉄道では、これらの大内宿への移動(会津鉄道+バス)を割引して利用できる観光チケットを「大内宿共通割引きっぷ」として販売していましたが、Samurai.MaaSはこの観光チケットをデジタル化したものになります。
会津鉄道では車内での切符確認、降車時の改札、バスの乗車時、すべてでアプリ画面を見せるだけで問題なく電車・バスを利用できました。スマホで交通系のICカードを利用するのと同じ感覚で、タッチリーダーのかわりに職員の方が確認されている違いはありますが、スマホひとつで複数の交通機関を利用できるのはとても良いですね。
デジタルチケットの利用方法は、最初にアプリ画面から大内宿共通割引きっぷを選択して利用日と利用枚数を選択します。次に支払方法を選択し、チケットの購入が完了します。チケット画面はQRコードが表示されていますが、使用することはなく、何に使うのかは最後まで分かりませんでした。
大内宿への行きのバスでは乗車時のアプリ画面の確認が済むと利用券をもらい、それを帰りのバスの乗車時に見せる仕組みのようです。スマホにチェックが入っていますので、動向調査などに利用されているのでしょうか。すでに紙ベースで運用されていた大内宿共通割引きっぷをそのままデジタル化した取り組みのため、紙でもデジタルでも運用方法は変わってないのですね。逆に運用を変えないことでスムーズにデジタル化が出来たのかと推察できます。そう考えるとますますQRコードの利用シーンが分からなくなってきますが、この辺でやめておきます。
◆まちなか周遊バス1日フリー乗車券
今度は会津若松市内を循環するバスの1日乗車券を利用してみます。観光スポットを中心にまわってくれて、1日フリー乗車券を購入すると、各施設の入場料が割引になる特典がついています。観光で利用するにはとても良い制度です。
こちらのデジタルチケットの利用方法も大内宿共通割引きっぷと同様です。利用日、利用枚数、支払い方法を設定してチケットを購入します。
大内宿共通割引きっぷでは、会津鉄道と広田タクシー(バスの運行会社)。まちなか周遊バス1日フリー乗車券は会津バスと、複数の交通事業者のチケットを同じアプリで同じ方法で購入でき、同じ利用方法で使える。当たり前のことかもしれませんが、すでに既存の仕組みが出来上がっている業界内でこれがアプリで実現出てきていることが、とても先進的な取り組みだと思います。
◆アプリの使用感
動画内でもコメントしていますが、アプリは他のMaaSアプリと比べると少し見劣りする印象です。会員登録はクラウドの認証サービスを利用しているようですが、画面全体が英語表記となっています。さらに登録するために画面遷移しても表示されているのは「LOG IN」のタブで、登録をするには「SIGN UP」のタブを選択しないといけません。多くのクラウドサービスで馴染みのある言葉ですが、戸惑う人も出てくるのではないでしょうか。
またチケット購入を進めていて、ログインされていない状態だと、購入時にログイン画面へ遷移するのですが、ログイン後に最初からやり直しになってしまいます。そのまま購入できると良いですよね。
またアプリ全体も動作が遅い印象があったり、Webアプリのためセッションが切れるとチケットを取り出すのに再ログインが必要だったり(使う時に分かったりするので焦る)、安全性を配慮して色々工夫をされているのは感じますので、使い勝手にももう一工夫欲しいところです。マニュアルも見つけられなかったので、この画面を見せれば良いのかな?という不安感はずっとあったような印象です。
まとめ
今回は会津若松市が展開しているSamurai.MaaSを体験してみました。会津若松市および会津地方は観光スポットも多く、観光客の回遊を促進させる多くの取り組みが行われていました。
MaaSの取り組みは既存の交通事業者の巻き込みが大変だと聞きますが、会津若松市ではスーパーシティ構想以前からスマートシティの取り組みなどデジタル化への取り組みが積極的に行われており、少なくとも私たちが観光に訪れて利用した交通機関はすべてSamurai.MaaSで利用できるものでした。この素地は他の地域にはない素晴らしい点です。
スーパーシティ構想などは住民の理解と参加がとても大事で、そのための意見交換など実施していると思うのですが、観光客、特にSamurai.MaaS利用者からのフィードバックを得られる仕組みがあるともっと良いと思います。利用者の意見をもとによりよい仕組みになっていって欲しいと思います。