カーツ惑星調査団 ♯12『影の巨獣 in 惑星カーツ』
<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
矢浦(26)回想シーンのみ
田尾(22)女性型アンドロイド
アツネグ・A・ルナイル(31)軍人
タノク・M・クツルス(60)軍の司令官、タノクの父
渡り獣・デノン
大暴獣・クグノワ
<本編>
○惑星カーツ・外観
青緑色の惑星。
T「惑星カーツ」
○同・首都ユサチ
瓦礫まみれの街並。
呆然と立ち尽くすナサマチ・F・ダラ(18)、テシ・Y・ケルナー(8)、ナサマチ・F・ルギエバ(46)、ラヤドケ・S・リオト(33)、田尾(22)。
テシ「ねぇ、ココ、本当に惑星カーツなの?」
ナサマチ「せやで? せやけど……」
ラヤドケ「一体、何が……?」
少し離れた場所、膝から崩れ落ちるタノク・M・イリウス(20)。
タノク「俺達、間に合わなかったのか……?」
ダラ「イリウス……?」
○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
T「♯12 影の巨獣in惑星カーツ」
○航行するツエーツ号
矢浦号を搭載している。
T「前日」
○ツエーツ号・共同スペース
作戦机を囲み食事中のタノク、ダラ、テシ、ラヤドケ。ソワソワし、壁時計を頻繁に確認するタノク。
ダラ「何や、イリウス。ソワソワして?」
タノク「へ!? いや、別に?」
ダラ「?」
ラヤドケ「落ち着いてください、タノクさん。惑星カーツへの到着予定時間には、まだ十時間以上ありますよ」
ダラ「何や、そういう事か」
タノク「お、おう。当たり前だろ。何を疑ってんだよ」
ダラ「別に、ウチは何も疑ってへんけど……何や、怪しいな」
タノクを訝しげに見るダラ。
テシ「僕、惑星カーツに着いたら、リツナのドーナツが食べたいな~」
ダラ「え? あ~、アレな。ウチも食べたいわ」
タノク「何それ、俺食った事ねぇ」
ダラ「あるわ。覚えてへんだけやろ」
テシ「すっごく美味しいんだよ」
タノク「へぇ。腹持ちは?」
ダラ「イリウス、そればっかやな……」
突然部屋の照明が消える。驚くダラ。
ダラ「何や!?」
『HAPPY BIRTHDAY TO YOU』を歌いながらケーキを持って入ってくるナサマチと田尾。
ダラ「え?」
ナサマチと田尾に合わせて『HAPPY BIRTHDAY TO YOU』を歌うタノク、テシ、ラヤドケ(「DEAR ダラ」という歌詞で)。
テシ「ダラちゃん、誕生日おめでとう」
ナサマチ「どや、ビックリしたやろ?」
ダラ「ビックリしたわ、ほんま。あっ、イリウスの様子おかしかったん、コレか?」
タノク「そうか? 俺、完璧だったろ?」
ラヤドケ「いいえ。見ていてヒヤヒヤしましたよ。テシさんがうまく気をそらしてくれなかったら、どうなっていた事か」
テシ「なかなか脚本通りいかないもんだよね、人生って」
ダラ「どこで覚えんねん、そんな台詞」
ナサマチ「それと、コレがワイからのプレゼントや」
ダラ「え?」
綺麗にラッピングされた袋をダラに渡すナサマチ。
ナサマチ「ワイおすすめの調理道具にエプロン、それにレシピ本の三点セットや」
ダラ「(引きつった笑顔で)あぁ……おおきに」
各種ナイフのセットをダラに渡すラヤドケ。
ラヤドケ「私がスペアで持ってきていた、ナイフのセットです。良かったら」
ダラ「(テンションが上がり)うっわ~、コレ、めっちゃええヤツですやん。頂いてもうてええんですか?」
ラヤドケ「私にはもう、必要ありませんので」
ダラ「大事に使わせてもらいます」
ナサマチ「何や、ワイの時とリアクション違いすぎひんか?」
ダラ「気のせいやろ?」
田尾「私は存じ上げませんでしたので、ケーキを作る事しかできませんでした」
ダラ「ええって。おおきに」
テシ「じゃあ最後に、僕とイリウス君から」
作戦机の上にボトルシップを置くタノク。
ダラ「コレ……完成させたんやな」
タノク「まぁ、最後はほぼほぼテッシーがやったんだけどな」
テシ「凄いでしょ?」
ダラ「うん、凄いわ。おおきにな」
ラヤドケ「これでダラさんも一八歳になり、正式に調査団員となる資格を得られた訳ですが、どうされるおつもりですか?」
テシ「どうされる、って?」
ラヤドケ「おそらく、調査団はまた編成されるでしょう。その際、私が推薦すれば、メンバーに加われると思いますが」
ダラ「……少し、考えさせてもろうてもええですか?」
ラヤドケ「それは、もちろんです。良い答えを期待していますよ。一人くらい、経験者が残った方が良いですからね」
テシ「副団長、辞めちゃうの?」
ラヤドケ「私はこの足ですから、内勤になるでしょう。団長は?」
ナサマチ「ワイ? う~ん……ダラが次の調査団の一員になる言うんなら、またシェフとして乗ってもええと思うとるけどな」
田尾「私もダラ様に付いて行きます」
ダラ「アンタはええわ」
ナサマチ「行かん言うんなら、そろそろ自分の店でも持ちたいわな」
テシ「みんな居なくなっちゃうの?」
ダラ「ケルナーもやろ?」
テシ「え? 何で?」
ダラ「団員になれるまで、あと十年あるやん」
テシ「でも、またママが調査団に入ったら、僕も一緒に乗るんじゃないの?」
ナサマチ「あぁ、そうか……それはやな……」
田尾「データによりますと、テシ・Y・カムミさんは既に……」
ダラ「(田尾の口を塞ぎ)アンタは黙っとき」
テシ「『既に』何?」
ダラ「へ? いや、えっとやな……」
ラヤドケ「既に『調査団の仕事を辞める』と言っておられました。ですから、テシさんが次の調査団の船に乗る事はないかと」
テシ「そっか~。じゃあ、イリウス君は?」
タノク「俺? 俺も嫌だよ。疲れんだもん」
ダラ「何や、その理由」
ナサマチ「ほな、皆バラバラいう訳か」
テシ「逆に、みんなが惑星カーツに一緒に居るって事だよね」
ダラ「せやな。(ラヤドケを睨むように)みんなが、や」
ラヤドケ「……そうなると、良いですね」
タノク「っていうかさ、(ケーキを指し)いい加減、食わねぇ?」
テシ「食べよう、食べよう」
ナサマチ「せやな。ほな、乾杯しよか」
グラスを持つ一同。
田尾「では、ダラ様の一八歳と」
ナサマチ「この旅の終わりと」
ラヤドケ「カーツ惑星調査団の未来に」
一同「乾杯」
グラスをぶつけ合う一同。
○同・ダラの部屋
机の上に置かれたボトルシップを眺めるダラ。指で軽く叩く。
ダラ「ほんま、船が瓶の中に閉じ込められてるみたいやな」
○同・タノクの部屋・中
棚に飾られたボトルシップを手に取るタノク。中の船を取り出そうと試みるも、無理だと諦める。
タノク「やっぱ、このまま取り出すのは無理か……」
窓の外を見やるタノク。惑星カーツが見えている。
○惑星カーツ・外観
星の周囲を旋回するツエーツ号。
ナサマチの声「着陸許可が下りない?」
○ツエーツ号・共同スペース
作戦机を囲むタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、田尾。コクピット前に座るラヤドケ。皆シートベルトをしている。
ナサマチ「何ででっか?」
ラヤドケ「というより、応答がないんです」
ナサマチ「ウチの無線が壊れてもうた、とか?」
田尾「いえ、コチラの無線は正常です。私の方で傍受出来ておりますので」
ダラ「すな」
テシ「じゃあ、向こうの無線が壊れちゃった?」
タノク「なぁ、許可なきゃ降りれねぇの? 自分たちの星なのに?」
ラヤドケ「まぁ、無断で着陸しても襲撃されるとは思いませんが……」
ナサマチ「それなら、行ってええんちゃう? エネルギーもギリギリなんやし」
ラヤドケ「確かに、やむを得ませんね。惑星カーツに入ります」
○惑星カーツ・外観
中に入って行くツエーツ号。
○ツエーツ号・共同スペース
作戦机を囲むタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、田尾。コクピット前に座るラヤドケ。皆シートベルトをしている。
ラヤドケ「揺れますので、ご注意ください」
テシ「りょーかい」
大気圏に突入するのがわかるコクピット前の窓からの景色。ここに一瞬、巨大な影が横切る。影の正体は体長八五メートル程の怪獣・デノンだが、一瞬の出来事の為、この時点ではまだわからない。
ラヤドケ「なっ!?」
デノンと接触し、バランスを崩す機体。船内は大きく揺れる。
ナサマチ「何事や!?」
タノク「おいおい、襲撃されてんじゃん。どうなってんだよ!?」
ダラ「ウチに聞かれても知らんわ!」
ラヤドケ「不時着します!」
○同・首都ユサチ
瓦礫まみれの街並み。
そこに突っ込むように不時着するツエーツ号。
× × ×
ツエーツ号から降りてくるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。皆、周囲を見回す。
ナサマチ「みんな、大丈夫やったか?」
テシ「うん、だいじょーぶ。でも……」
タノク「たかが不時着だけで、随分と建物ぶっ壊しちまったな」
ダラ「アホ、アレだけでそんなんなるか」
ナサマチ「それにしても、ここはどこや? 手がかりが何も見当たらんわ」ラヤドケ「目的地からそう遠く離れたとは思えないのですが……」
田尾「GPS情報を取得しました。ここは首都ユサチです」
ダラ&テシ&ナサマチ&ラヤドケ「ユサチ!?」
再び周囲を見回すダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ。
タノク「なぁ。『ユサチ』って、何?」
ダラ「首都や。一番大きな町や。一番、人がぎょうさん居る町や」
タノク「は?」
再び周囲を見回すタノク。人の気配がまるでない。
タノク「誰も居ねぇじゃん……」
と言って歩き出すタノク。その際、何かを見つける。
呆然と立ち尽くすダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾(ここから冒頭のシーンに戻る)。
テシ「ねぇ、ココ、本当に惑星カーツなの?」
ナサマチ「せやで? せやけど……」
ラヤドケ「一体、何が……?」
膝から崩れ落ちるタノク。
タノク「俺達、間に合わなかったのか……?」
ダラ「イリウス……?」
振り返るタノク。崩れた建物と、「リツナ」と描かれたドーナツの看板。
タノク「リツナのドーナツ……」
ダラ「(ため息をついて)安心しぃ。他の町にチェーン店があるわ」
タノク「あ、そうなの? うわ~、良かった~、マジ焦ったわ」
ダラ「ほんま、イリウスはそればっか……」
数台の軍用車がやってくる。
警戒するタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、田尾。
ダラ「今度は何や?」
ラヤドケ「いや、あれは……」
軍用車から降りてくる軍人たち。その中に居るアツネグ・A・ルナイル(31)。
アツネグ「リオト先輩!」
ラヤドケ「ルナイルさん」
タノク「何だ、味方か~」
○走る軍用車
アツネグの声「大変な旅だったんですね……」
○軍用車・中
トラックの荷台のような後部座席に、椅子がないので直に座るタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾、アツネグ。
アツネグ「まさか、帰ってきたのが五人だけだなんて。それも、足のケガに記憶喪失……」
ラヤドケ「詳細な報告は、また改めて。それより、コチラでは何があったのですか? ユサチがあんな事になるなんて……」
アツネグ「……怪獣です」
タノク「また怪獣かよ」
テシ「この星にも、怪獣さん居たの?」
ナサマチ「いや、居らんハズや。せやから、ワイらが……」
アツネグ「おそらく、渡り獣の一種かと」
ラヤドケ「それで、あの惨状ですか……」
アツネグ「エネルギー不足の我々にはなすすべもなく、やむを得ず首都ユサチを諦め、市民の多くを、ヰガシの町に避難させました」
ダラ「ほな、今この車はヰガシに向かってはるんですか?」
田尾「GPS情報を取得しました。ハク駐屯地周辺です」
ナサマチ「ハク駐屯地いうたら……ヰガシの町より大分手前やな」
アツネグ「はい。今我々はこのハクを最終防衛線としています」
ラヤドケ「ハク駐屯地……(思い出し)確か、そこの司令官は……」
○惑星カーツ・ハク駐屯地・外観
停車している軍用車。
クツルスの声「我が同志達の帰還、祝福しよう」
○同・同・司令室
タノク・M・クツルス(60)の前に並ぶタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。
クツルス「カーツ惑星調査団の諸君」
ラヤドケ「恐縮です。タノク司令官」
テシ「え?」
田尾「タノク?」
タノク「え、たまたま?」
ダラ「ちゃうわ。あん人、イリウスの……」
タノクの前までやってくるクツルス。
タノク「?」
クツルス「記憶喪失とは聞いていたが、親の顔も思い出せぬのか」
タノク&テシ「えぇ!?」
田尾「イリウスさんの、お父上?」
T「タノク・M・クツルス 司令官」
クツルス「情けない。恥を知れ」
タノク「は? んだと?」
ダラ「やめとき」
サイレンが鳴る。
ナサマチ「今度は何や?」
そこに駆け込んでくるアツネグ。
アツネグ「例の渡り獣がまた現れました」
クツルス「総員、出動だ。この災い、ヰガシへは持ち越させない。何としても、このハクで食い止める。いいな!」
アツネグ「了解しました」
クツルスにつられ、窓の外を見やるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。そこにはデノンの姿。
ダラ「アレは……」
テシ「あの怪獣さんって、確か前に……」
ナサマチ「あぁ。イリウスがやっつけた渡り獣」
○(フラッシュ)惑星テンボシ・村の外れ
暴れているデノン。
ナサマチの声「デノンや」
○惑星カーツ・ハク駐屯地・司令室
デノンの様子を窓から見ているタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾、クツルス。
テシ「でも、何でやっつけた怪獣さんがココに居るの?」
ナサマチ「偶然、同じ個体なんやないか?」
ダラ「いや、むしろ復讐に来たんちゃうか? 多分、アイツ」
○(フラッシュ)惑星テンボシ・村の外れ
矢浦(26)の銃撃を受けるデノンの子。
ダラ「あん時のアイツや」
○惑星カーツ・ハク駐屯地・司令室
デノンの様子を窓から見ているタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾、クツルス。
ダラ「成長して、この星に」
ナサマチ「そんなん、覚えとるもんか?」
タノク「あんま怪獣バカにすんなよ」
ダラ「とにかく、ウチらも行くで。ええですよね、リオトさん?」
ラヤドケ「残念ながら、今ツエーツ号にそれだけのエネルギーは残っていません」
ナサマチ「この駐屯地に残っとるエネルギーを貰うたらええやないですか」
クツルス「残念ながら、この駐屯地にも、分けてやれるだけのエネルギーは残っていない」
タノク「情けねぇな」
クツルス「何だと?」
テシ「もう、親子喧嘩はやめなよ~」
ダラ「(小声で)サーゼが使えへんとなると、どないしたら……」
ダラの視線の先、田尾がいる。
ダラ「せや!」
○同・ハク市街地
暴れるデノン。
地上からレーザー銃で応戦するタノク、ダラや軍人たち。あまりダメージは与えられていない。
タノク「っていうかさ、あの怪獣、親よりデカくなってねぇ?」
ダラ「子は親を超えるもんやで」
タノク「テッシーみてぇな事言うな」
ダラ「そうか? それにしても、まだやろか?」
さらに進撃するデノン。そこへ砲撃。怯むデノン。砲撃の方向を見ると、そこにやってくる矢浦号。
ダラ「(無線へ)遅いで、オトン!」
ナサマチ「(無線で)すまんすまん」
○矢浦号・生活スペース
操縦する田尾。その脇に立つテシとナサマチ。
ナサマチ「せやけど、ダラの言う通りやったで」
テシ「矢浦さんの船、まだまだエネルギー残ってたよ」
田尾「では、サーゼボックス、降下します」
○惑星カーツ・ハク市街地
矢浦号から降下される矢浦サーゼボックス。そこにやってくるタノクとダラ。
タノク「この間のがラストだ、って聞いてたんだけど?」
ダラ「今はそんな事言うてる場合ちゃうやろ」
タノク「わかってんよ。そん時は、そん時だ」
グータッチをするタノクとダラ。
タノク「俺も、親父を超えてくっか」
ダラ「あぁ、見せたり」
矢浦サーゼボックスの中に入るタノク。
○矢浦サーゼボックス・中
中央に立つタノク。
光に包まれる。
○惑星カーツ・ハク市街地
矢浦サーゼボックスの脇に立つダラ。
ダラ「サイズ八五、サーゼシステム起動!」
出現する影タノク。
軍人たちからどよめきの声。
○同・ハク駐屯地・司令室
窓から影タノクの出現を見ているラヤドケとクツルス。
クツルス「どういう事だ、ラヤドケ? 何故愚息がサーゼシステムを使えている?」
ラヤドケ「……タノク司令官。お話しなければならない事があります」
○同・ハク市街地
対峙する影タノクとデノン。
影タノク「さて、と。一日遅れのバースデーパーティーといきますか」
戦う影タノクとデノン。劣勢の影タノク。
影タノク「くっ。おい、ダラ。寄越せ」
ミニサーゼをセットするダラ。
ダラ「ミニサーゼ、起動」
黒い剣が出現、それを手に取る影タノク。
影タノク「っしゃ、行くぜ」
その様子を見ているダラ。そこにやってくるテシ、ナサマチ、田尾。
テシ「もう武器使っちゃうの? 怪獣さん、かわいそう」
ナサマチ「それだけ押されとるって事やろ」
ダラ「こないデカい怪獣、初めてやし」
ナサマチ「いや、惑星ヨヨラヤん時のロボットは、もっとデカかったやろ」
ダラ「確かに。せやけど、そのロボットには勝てへんかったやん」
ナサマチ「せやったな、あん時は……」
顔を見合わせるダラとナサマチ。
ダラ「……まさか」
剣を使ってデノンと戦う影タノク。それでも劣勢。
影タノク「一か八か、やってみっか」
デノンに斬りかかる影タノク。
影タノク「シャドーストライク!」
デノンに押し返され、逆に倒される影タノク。
影タノク「ぐあっ」
その衝撃で手放した剣、消えて行く。
影タノク「しまった」
デノンにマウントポジションをとられ、一方的に殴られる影タノク。
影タノク「くそっ」
ダラ「イリウス!」
ミニサーゼを起動するダラ。出現した黒いハンマーを手にし、デノンの攻撃を防ぐ影タノク。
影タノク「ぐっ……」
ナサマチ「このままやとあかん。一旦、サーゼを切るんや」
ダラ「了解」
させまい、とばかりにダラ達に向けて翼をはためかせるデノン。強風が発生し、吹き飛ばされるダラ、テシ、ナサマチ。
ダラ「きゃああ」
倒れ、気を失うテシとナサマチ。ダメージで立ち上がれないダラ。
ダラ「オトン……ケルナー……」
再び影タノクに攻撃を加えるデノン。消えるハンマー。
影タノク「こりゃ、ヤベェな」
○矢浦サーゼボックス・中
中央で倒れているタノク。
タノクの声「何とかしねぇと、みんな殺されんぞ?」
拳を握りしめるタノク。
○惑星カーツ・ハク市街地
マウントポジションで一方的にデノンに攻撃されている影タノク。
タノクの声「わかってんだろ、俺?」
○同・ハク駐屯地・司令室
泣き崩れるクツルスの背中を見つめるラヤドケ。
タノクの声「本当は、思い出してんだろ?」
○ツエーツ号・タノクの部屋・中
机の端に置かれたボトルシップ。振動で揺れている。
タノクの声「閉じ込められている、本当の俺を」
○惑星カーツ・カターサの街
マウントポジションで一方的にデノンに攻撃されている影タノク。
タノクの声「ぶち壊せ、解き放て、さらけ出せ」
影タノク「うおおおお!」
影タノクが光に包まれる。
それを見ているダラ。
ダラ「イリウス……あかん!」
○ツエーツ号・タノクの部屋・中
机の端に置かれたボトルシップ。振動で床に落ちる。
タノクの声「うおおおおお!」
○惑星カーツ・ハク市街地
デノンの足下にいた影タノクがもの凄い光を発し、デノンを弾き飛ばす。
影タノク「うおおおおお!」
○ツエーツ号・タノクの部屋・中
床に落ち、割れるボトルシップ。中身の船が露になる。
○惑星カーツ・ハク市街地
対峙する影クグノワとデノン。
その様子を見ているダラ。
ダラ「イリウス……」
咆哮し、デノンと戦い始める影クグノワ。殴る、蹴る、尻尾で叩く等の攻撃でデノンを圧倒する。
不利を悟り、飛んで逃げようとするデノン。それを力づくで引きずり下ろす影クグノワ。
影クグノワの口から吐き出された光線がデノンを直撃、爆発四散するデノン。
○同・ハク駐屯地・司令室
クツルスを追って部屋を出るラヤドケ。
ラヤドケ「お待ちください、タノク司令官」
窓の向こう、町を破壊し始める影クグノワの姿。
○同・ハク市街地
暴れる影クグノワの様子を見ているダラ。フラフラながら立ち上がる。
ダラ「あかん、早よ止めな」
サーゼボックスの脇に来るダラ。
ダラ「イリウス、ちょっと待っとき」
サーゼボックスのスイッチを操作するダラ。影クグノワに異常なし。
ダラ「え?」
何度も何度も操作するダラ。変わらず暴れ続ける影クグノワ。
ダラ「何で? 何で反応せぇへんねん」
咆哮する影クグノワ。再び光を放つ。
その光で目を覚ますテシとナサマチ。
ナサマチ「あれは……」
テシ「怪獣さん……?」
目を見張るダラ。
ダラ「嘘やろ……」
影クグノワが、クグノワの姿になっている。
咆哮し、街を破壊し始めるクグノワ。
ダラ「イリウス~!」
(♯13へ続く)