オカモトによる理研コランダム株式会社株式の完全子会社化
案件概要
オカモト株式会社(公開買付者)は、理研コランダム株式会社(対象者)の株式を公開買付けにより取得することを決定しました。買付価格は 1 株当たり 5,100 円、買付予定数は 432,942 株で、買付予定数の下限は 132,384 株です。公開買付期間は 2024 年 8 月 9 日から同年 9 月 24 日までの 30 営業日です。
案件目的
オカモト株式会社は、本公開買付けを通じて理研コランダム株式会社を完全子会社化することを目指しています。これは、両社が長年にわたり築いてきた協力関係をさらに深化させ、企業価値向上を加速させる狙いがあります。具体的には、以下のメリット・シナジーの実現を期待しています。
技術融合の強化: 人材交流や技術情報の共有を促進し、新製品開発や技術力向上を図ります。
グローバル展開の加速: オカモトの海外拠点網を活用し、理研コランダムの海外事業展開を支援し、コスト抑制と競争力強化を目指します。
経営資源の効率化: 生産拠点の見直しや製造技術の共有、さらにはグループ全体の意識改革を通じて、生産効率の向上とコスト削減を推進します。
上場維持コストの削減: 上場廃止により、情報開示や監査などのコストを削減し、その資源を事業に集中投下します。
これらのシナジー効果を通じて、オカモトは、理研コランダムの企業価値向上を加速させ、ひいてはオカモトグループ全体の成長と発展を目指しています。
特に、上場子会社であるが故の構造的な問題解決という点が強調されています。具体的には、
親会社と上場子会社間の取引には、少数株主との利益相反や情報格差の問題が潜在的に存在します。完全子会社化によって、これらの問題を解消し、より踏み込んだ連携強化が可能になります。
上場維持には、情報開示や監査体制整備など、少なからぬコストと経営資源が必要となります。非公開化によって、これらの負担を軽減し、その分を事業投資に振り向けることができます。
公開買付けは、これらの課題を克服し、グループ全体の最適化と持続的な成長を追求するための戦略的な一手と言えるでしょう。
買主と対象企業の関係性
歴史的な結びつき
両社ともに、その起源を財団法人理化学研究所に有しています。これは、両社が技術革新と研究開発を重視する企業文化を共有していることを示唆しています。
オカモトは、1973 年 3 月期から理研コランダムに出資を開始し、長年にわたり役員派遣や業務提携を通じて関係を深めてきました。これは、両社が長期間にわたり良好な協力関係を築いてきたことを示しています。
資本的な結びつき
オカモトは、現在、理研コランダムの株式の 52.00% を所有し、支配株主となっています。これは、オカモトが理研コランダムの経営に大きな影響力を持っていることを意味します。
今回の公開買付けが成功すれば、オカモトは理研コランダムの株式を 100% 所有することになり、完全子会社となります。これは、両社の経営統合がさらに進み、一体的な経営が可能になることを示しています。
取引関係
理研コランダムは、オカモトから商品を仕入れています。2024 年 3 月期の仕入れ額は 1,251 万円でした。これは、両社が既に取引関係にあり、事業面でも連携していることを示しています。
案件背景
1. 外部環境の変化
新型コロナからの回復と不透明感: 新型コロナウイルス感染症の影響からの回復基調にある一方で、ロシア・ウクライナ紛争や円安などの影響で、依然として先行き不透明な状況が継続しています。
産業用製品事業における課題: 原材料価格の上昇や供給不安定の影響が続いており、安定供給体制の構築や在庫適正化が課題となっています。
対象者における課題: 不動産賃貸事業は好調ですが、主力の研磨布紙事業は競争激化やコスト上昇に直面しています。また、海外事業展開にも課題を抱えています。
2. 両社の現状と課題
オカモトの課題: 経営資源の効率的活用による機動的かつ最適な生産・供給体制の構築が課題となっています。
理研コランダムの課題: 主力事業の収益力強化が喫緊の課題であり、国内外での販売強化やコスト削減が求められています。また、海外事業展開の収益性維持・拡大にも課題があります。
上場子会社であるが故の構造的な課題: 親会社であるオカモトと上場子会社である理研コランダムの間では、少数株主との利益相反や情報格差の問題があり、グループ全体の最適化に向けた意思決定や連携が制限されていました。
3. これまでの取り組みと限界
オカモトは 2017 年に理研コランダムを連結子会社化して以降、工場の最適化、マーケティング強化、技術融合、生産管理システム再構築など、一体運営とシナジー創出に取り組んできました。
しかし、上場子会社であるが故の構造的な問題により、さらなる一体化の加速には限界がありました。
4. 完全子会社化の必要性
上記のような背景・課題認識のもと、オカモトは、理研コランダムを完全子会社化することで、
上場子会社であるが故の構造的な問題を解消し、
グループ連携を強化し意思決定を迅速化することで、
企業価値向上を加速させることができると判断しました。
特に、不透明な外部環境の中で、両社が抱える課題を克服し、持続的な成長を実現するためには、より踏み込んだ一体化が必要との考えに至ったことが、本公開買付けの背景にあると言えるでしょう。
案件後の経営方針
案件後の経営方針の深堀り
公開買付者は、本公開買付け後の理研コランダムの経営方針について、現状の経営体制を尊重しつつ、グループ全体の中長期的な成長を早期に実現することを目指すとしています。
具体的な施策: 具体的な施策やその推進については、理研コランダムと協議の上、速やかに決定する予定です。
経営体制: 現時点で具体的な決定事項や合意事項はありませんが、オカモトの執行役員または従業員1~2名を理研コランダムの取締役と兼務させることで、グループの方針や施策を理研コランダムの運営に反映させることを検討しています。
これは、理研コランダムの独自性を尊重しつつ、グループ全体の一体感を高め、シナジー効果を最大化しようとする方針を示しています。
完全子会社化後のシナジー効果
公開買付者は、完全子会社化によって、以下のシナジー効果が期待できると考えています。
技術融合の強化: 人材交流や技術情報の共有が容易になり、技術力向上や新製品開発を促進します。
グローバル展開の加速: オカモトの海外拠点網を活用することで、理研コランダムの海外事業展開を支援し、コスト抑制と競争力強化を図ります。
経営資源の効率化: 生産拠点の再編や製造技術の共有、さらにはグループ全体の意識改革を通じて、生産効率の向上とコスト削減を実現します。
上場維持コストの削減: 上場廃止により、情報開示や監査などのコストを削減し、その資源を事業に集中投下します。
案件検討の経緯
1. 公開買付者側の検討
2023年3月初旬:上場維持か完全子会社化かの検討開始。メリット・デメリット、シナジー効果などを多角的に分析。
2024年4月中旬:財務・法務アドバイザー選任。客観的な視点からの助言を得る体制を構築。
2024年4月30日:対象者へ協議開始の意向伝達と提案書提出。
2024年4月下旬~7月上旬:デューデリジェンス実施と協議。対象者の事業内容、財務状況などを詳細に調査し、取引の可能性を精査。同時に、本取引の意義や目的について対象者と協議を重ね、相互理解を深める。
2. 対象者側の検討
2024年4月30日:公開買付者からの提案書受領。
2024年5月下旬:財務・法務アドバイザー選任。
2024年5月22日:特別委員会設置。独立社外取締役や外部専門家で構成され、少数株主の利益保護の観点から取引の公正性を厳格に審査する体制を確立。
2024年7月3日:公開買付者へのインタビュー実施。特別委員会が、公開買付者から本取引の背景、目的、買収後の経営方針などを直接聞き取り、疑問点を解消。
3. 価格交渉
2024年7月10日~8月7日:複数回の協議・交渉。公開買付者と対象者、そして特別委員会が、価格について活発な議論を展開。
公開買付者は、DCF法などによる算定結果や市場環境などを考慮して価格を提示。
対象者(特別委員会)は、少数株主の利益を最大限考慮し、価格の引上げを要請。
双方は歩み寄りを見せ、最終的に5,100円で合意。この価格は、類似取引のプレミアム水準を大幅に上回るものであり、対象者の企業価値向上に資すると判断された。
4. 取締役会決議
2024年8月8日:両社の取締役会で公開買付けを決議。対象者側は、特別委員会の答申や財務・法務アドバイザーの意見を踏まえ、全会一致で賛同と応募推奨を決定。
ポイント
少数株主保護の重視: 特別委員会の設置、独立した専門家による価格算定、取引条件の厳格な審査など、少数株主の利益を保護するための措置が徹底されています。
公正な価格設定への配慮: 複数の評価手法を用いた価格算定、類似取引との比較、市場環境の考慮など、公正な価格設定に向けた取り組みが行われています。
透明性の確保: 協議・交渉の経緯や価格算定の根拠など、重要な情報は積極的に開示され、取引の透明性が確保されています。
これらの特徴から、本公開買付けは、公正かつ透明なプロセスを経て、少数株主の利益にも配慮した形で進められていると言えるでしょう。
取引スキームの特徴点
本公開買付けにおいて、公開買付者は、買付予定数の下限を 132,384 株と設定しています。本公開買付けに応じて応募された株券等の数の合計が買付予定数の下限に満たない場合には、応募株券等の全部の買付け等を行いません。一方、買付予定数の上限は設定していません。
公開買付者は、本公開買付けが成立したものの、本公開買付けにより対象者株式の全てを取得できなかった場合には、本公開買付けの成立後、対象者株式の全てを取得するために、以下のいずれかの方法による本スクイーズアウト手続を実施する予定です。
株式売渡請求: 公開買付者が、本公開買付けの成立により、対象者の総株主の議決権の 90% 以上を保有することとなった場合、会社法の規定に基づき、対象者の株主の全員に対し、その所有する対象者株式の全部を売却することを請求します。
株式併合: 公開買付者が、本公開買付けの成立により、対象者の総株主の議決権の 90% 未満を保有することとなった場合、会社法の規定に基づき、対象者株式の併合を行います。
取締役会の意見
理研コランダムの取締役会は、公開買付けに賛同する旨の意見を表明し、株主に対して公開買付けへの応募を推奨する決議を、取締役7名全員の全員一致で可決しました。
取締役会は、公開買付けが企業価値向上に資すると判断しています。その理由は、
シナジー効果: 公開買付け後の完全子会社化により、技術融合、グローバル展開加速、経営資源効率化、上場維持コスト削減などのシナジー効果が期待できる。
少数株主利益への配慮: 買付価格の算定や手続きにおいて、少数株主の利益が十分に配慮されている。
公正な手続き: 独立した特別委員会の設置や専門家からの助言など、公正な手続きを経て意思決定が行われた。
特に、買付価格5,100円について、
独立した第三者算定機関による株式価値算定結果を上回っている。
類似取引のプレミアム水準と比較しても、平均以上のプレミアムが付されている。
少数株主の利益に配慮した価格設定となっている。
これらの点を評価し、取締役会は、株主に対して合理的な株式売却の機会を提供するものと結論付けました。
対象会社の取締役の状況
取締役の中には、公開買付者であるオカモト株式会社の出身者が2名含まれています。しかし、彼らは5年以上理研コランダム株式会社にのみ在籍しており、本取引に関しても公開買付者側で一切関与していないことから、利益相反のおそれはないと判断され、取締役会の審議・決議に参加しています。
価格の算出方法
買付価格の算定
公開買付者であるオカモト株式会社は、公正な買付価格を設定するため、独立した第三者算定機関であるみずほ証券株式会社に、対象者である理研コランダム株式会社の株式価値算定を依頼しました。
みずほ証券は、市場株価基準法、類似企業比較法、DCF法の3つの手法を用いて株式価値を算定し、その結果を公開買付者に提示しました。
市場株価基準法: 買付公開日の前営業日(2024年8月7日)の終値や過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の終値平均などを参考に算定。算定された株式価値の範囲は、2,653円から2,734円となりました。
類似企業比較法: 同業他社の市場株価や財務指標などを参考に算定。算定された株式価値の範囲は、3,762円から4,862円となりました。
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法): 将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて算定。対象者から提供された事業計画(2024年12月期~2027年12月期)、直近業績、デューデリジェンスの結果、公開情報などを基に算定。算定された株式価値の範囲は、3,883円から8,034円となりました。
公開買付者は、これらの算定結果に加え、デューデリジェンスの結果や対象者との協議・交渉などを総合的に考慮し、最終的な買付価格を5,100円と決定しました。
プレミアム水準
買付価格 5,100 円は、以下のプレミアムを含んでいます。
公開日の前営業日の終値に対して:96.38%
過去1ヶ月の終値単純平均に対して:87.57%
過去3ヶ月の終値単純平均に対して:91.15%
過去6ヶ月の終値単純平均に対して:92.02%
これらのプレミアムは、類似のMBOや親会社による完全子会社化の事例における平均プレミアムを大幅に上回る水準です。
DCF法の詳細
DCF法による株式価値算定では、対象者から提供された事業計画が重要な要素となります。この事業計画には、2024年12月期に大幅な減益を見込む一方で、2025年12月期以降は増収増益を見込むなど、大きな変動が含まれています。
2024年12月期: 研磨布紙事業の不振やコスト増加により、売上高は対前年比2.89%減、営業利益は対前年比46.96%減と大幅な減益を見込んでいます。
2025年12月期: 売上高の増加により、営業利益は対前年比175.41%増と大幅な増益を見込んでいます。
2026年12月期以降: 緩やかな増収を見込んでいます。また、省人化や機械稼働率改善などの取り組みによって、フリーキャッシュフローの増加を見込んでいます。
シナジー効果については、現時点で具体的に見積もることが困難なため、事業計画には反映されていません。
買付価格決定までの過程
価格交渉の経緯
公開買付者と対象者は、2024年7月10日から8月7日までの約1ヶ月間、買付価格について複数回の協議と交渉を重ねました。その中で、公開買付者は、デューデリジェンスの結果や市場環境などを考慮して価格を提示し、対象者は、少数株主の利益を最大限考慮する観点から、価格の引上げを要請しました。
2024 年 7 月 10 日: 公開買付者から対象者に対し、本公開買付価格を 3,800 円とする提案を行いました。
2024 年 7 月 12 日: 対象者から公開買付者に対し、提案価格の再検討を要請しました。
2024 年 7 月 17 日: 公開買付者から対象者に対し、本公開買付価格を 4,300 円とする再提案を行いました。
2024 年 7 月 18 日: 対象者から公開買付者に対し、本公開買付価格の引上げを再度要請しました。
2024 年 7 月 25 日: 公開買付者から対象者に対し、本公開買付価格を 4,750 円とする再提案を行いました。
2024 年 7 月 26 日: 対象者から公開買付者に対し、本公開買付価格を 5,500 円とする旨の再提案の要請を行いました。
2024 年 7 月 31 日: 公開買付者から対象者に対し、本公開買付価格を 4,950 円とする再提案を行いました。
2024 年 8 月 1 日: 対象者から公開買付者に対し、最終提案として 5,300 円とする旨の提案を行いました。
2024 年 8 月 6 日: 公開買付者から対象者に対し、本公開買付価格を 5,100 円とする旨の再提案を行いました。
2024 年 8 月 7 日: 対象者から公開買付者に対し、提案価格を応諾する旨の回答を行いました。
以上の検討・協議・交渉の結果、公開買付者は、2024 年 8 月 8 日開催の取締役会において本公開買付価格を 5,100 円とすることを決定しました。
本公開買付価格 5,100 円は、本公開買付けの公表日の前営業日である 2024 年 8 月 7 日の対象者株式の東京証券取引
公正性担保措置の内容
独立した第三者算定機関による株式価値算定
公開買付者と対象者はそれぞれ、独立した第三者算定機関に株式価値の算定を依頼しました。
公開買付者:みずほ証券株式会社
対象者:山田コンサルティンググループ株式会社
これにより、客観的で公正な株式価値の評価を得て、買付価格の妥当性を担保しています。
対象者における特別委員会の設置
対象者は、独立した社外取締役や外部専門家で構成される特別委員会を設置しました。
特別委員会は、公開買付者との交渉過程を監視し、少数株主の利益を守るために積極的に活動しました。
具体的には、
価格交渉の方針の事前確認
交渉の進捗状況の定期的な報告受け
重要局面での意見表明や公開買付者への増額要請
最終的な買付価格の妥当性の判断
これらの活動を通じて、少数株主の視点を反映し、公正な価格交渉を実現しました。
その他の措置
対象者は、独立した法律事務所から法的助言を受けています。
対象者の取締役会は、利益相反関係にない取締役全員の承認を得ています。
公開買付期間を30営業日と、法定最短期間よりも長く設定し、株主が熟慮する時間を確保しています。
対抗買付けを制限する条項などを設けず、市場競争の機会を確保しています。
マジョリティ・オブ・マイノリティ(MoM)に関する事項
MoMとは、公開買付者が既に過半数の株式を保有している場合に、少数株主の意見を反映させるために、買付予定数の下限を設定するものです。
しかし、本公開買付けでは、MoMを設定していません。
理由: 公開買付者が既に議決権の52.00%を保有しているため、MoMを設定すると、公開買付けの成立が不安定になり、少数株主の応募機会を奪う可能性があると判断したためです。
代替措置: MoMの代わりに、
特別委員会の設置や独立した専門家による価格算定など、少数株主の利益保護のための措置を徹底しています。
買付予定数の下限を特別多数決議に必要な議決権比率を確保できる水準に設定しています。
マーケットチェックに関する事項
マーケットチェックとは、他の潜在的な買収者が現れる可能性を探るプロセスです。
本公開買付けでは、積極的なマーケットチェック(例えば、他の買収意向を持つ企業への打診)は実施していません。
理由: 情報管理の観点から、実施が困難と判断されたためです。
代替措置: 積極的なマーケットチェックは行わない代わりに、
公開買付期間を30営業日と長めに設定し、株主が他の選択肢を検討する時間を確保しています。
対抗買付けを制限する条項などを設けず、市場競争の機会を確保しています。
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