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エイチームの「売上向上支援カンパニーへの変革」に向けた資金調達に関して解説

この記事では、株式会社エイチーム(以下、エイチーム)の「売上向上支援カンパニーへの変革」について解説します。

エイチームは、2024年6月に発表した「売上向上支援カンパニーへの変革」に向けた成長戦略を着実に実行していきます。今回は、発表された資料に基づき、エイチームの事業内容、経営課題、今後の経営戦略、そして直近のM&Aや資金調達の狙いについて解説していきます。


概要

エイチームは、主力事業であるライフスタイルサポート事業で培ったデジタルマーケティング力を武器に、企業の売上向上を支援する企業への変革を目指しています。これは、市場の変化に対応し、持続的な成長を遂げるための戦略的な一手と言えるでしょう。

特に、今回のアドバンテッジ・アドバイザーズとの提携は、資金調達だけでなく、戦略的パートナーシップとしての側面も持ち合わせています。これにより、エイチームは事業拡大に向けた資金とノウハウを同時に獲得し、変革を加速させることが期待されます。

1. エイチームの事業内容

エイチームは主にインターネットを活用した様々なサービスを提供しており、大きく分けて「ライフスタイルサポート事業」「エンターテインメント事業」「その他事業」の3つの事業を展開しています。

1-1. ライフスタイルサポート事業

「ライフスタイルサポート事業」では、人生のイベントやライフステージにおける意思決定をサポートするWebメディアを運営しています。

例えば、結婚を考えているカップル向けの結婚情報サービス「ハナユメ」や、引越しを考えている方向けの一括見積もりサービス「引越し侍」などを提供しており、これらのサービスを通じて、ユーザーが必要な情報やサービスを見つけやすくし、クライアント企業の集客・送客を支援しています。

1-2. エンターテインメント事業

「エンターテインメント事業」では、スマートフォン向けゲームアプリの企画・開発・運営を行っています。「ユニゾンリーグ」や「ヴァルキリーコネクト」などのゲームタイトルが代表的です。

1-3. その他事業

「その他事業」では、Webメディアの企画・開発・運営や、インターネット広告代理事業などを展開しています。

2. エイチームの経営課題

2-1. 事業課題

  • ゲーム事業への依存度が高い: エイチームの収益の大部分はゲーム事業によるものであり、特に主力タイトルの業績に左右されやすい状況です。そのため、新規タイトルのヒットや既存タイトルの長期的な人気維持が課題となります。

  • 競争の激化: スマートフォンゲーム市場は競争が激しく、常に新しいゲームが登場しています。そのため、ユーザーを獲得し、維持するためのマーケティング戦略やゲーム開発力が求められます。

  • 海外展開の加速: エイチームは海外展開にも力を入れていますが、海外市場では現地の文化や嗜好に合わせたゲーム開発やマーケティングが重要であり、さらなる成長のためには、海外事業の拡大が課題となります。

  • 新規事業の創出: ゲーム事業への依存度を軽減するため、新規事業の創出も重要な課題です。エンターテインメント領域やライフスタイル領域など、様々な分野での事業展開が模索されています。

  • 人材の確保と育成: 競争力を維持するためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。ゲーム開発やマーケティング、経営など、様々な分野で人材の強化が求められます。

2-2. 業績面での課題

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf
https://drive.google.com/file/d/1kP-7xQpApnQsQ9v44hZYmXrayqH_i2XM/view
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

減収減益傾向: 主力ゲームの収益減少や新作のヒット不足により、エンターテインメント事業の減収が続いています。ライフスタイルサポート事業も競争激化により、顧客獲得コストが増加し、収益性が悪化しています。これらの要因が重なり、全体の売上高と利益が減少傾向にあります。

広告宣伝費の高さ: エイチームの費用構造において、広告宣伝費は大きな割合を占めています。2023年7月期には、ライフスタイルサポート事業における認知度向上のための広告投資が積極的におこなわれた結果、売上高の約48%にまで上昇しました

低い収益性: 
一部のライフスタイルサポート事業において、収益性が低いサービスが存在し、全体の収益を圧迫しています。ゲーム開発費やマーケティング費用など、先行投資も負担となっています。

自己資本の有効活用: 2023年7月期末時点で、エイチームの自己資本比率は70%と高く、実質無借金経営を続けています。また、総資産に占める現預金の割合も43%と高水準です。これは財務の安定性を示す一方で、資本効率の観点からは、資金が十分に活用されていないとも解釈できます。

海外展開の遅れによるリスク: 海外市場への展開が遅れているため、収益の地理的な偏りが課題となっています。 為替変動リスクや海外市場の競争激化など、海外事業に関連するリスクも抱えています。

エイチームの今後の課題は、これらの投資をいかに早期に収益化し、企業価値向上につなげるかという点にあります。

2-3. 上場適合性に関する課題

上場適合性に関するリスク

エイチームは、東京証券取引所プライム市場の上場企業ですが、2022年10月時点で、プライム市場の上場維持基準の一つである流通株式時価総額が基準の100億円を満たしていない状態でした。

2023年7月末時点でもこの状況は改善されておらず、同社の流通株式時価総額は80億円にとどまっていました。

上場維持基準不適合の理由

  • 流通株式時価総額が基準を満たしていない主な理由は、業績低迷による株価下落です。

  • 2018年7月期をピークに業績が伸び悩み、2022年7月期には営業損失を計上するなど、業績の低迷が続いています。

上場維持に向けた取り組み

  • エイチームは、2025年7月末までの上場維持基準適合を目指し、東京証券取引所に「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出し、流通株式時価総額100億円以上の達成を目指しています。

3. アドバンテッジ・アドバイザーズからの資金調達の意義

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

3-1.資金調達の概要

エイチームは、2024年6月に、アドバンテッジ・アドバイザーズ(以下、AA社)が管理・運営するファンドを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約50億円の資金調達を行いました。

この資金調達は、上記の成長戦略を加速させるためのものです。具体的には、デジタルマーケティング事業の強化やM&Aの実行、人材採用などに充当される予定です。

AA社は、プライベート・エクイティのアドバンテッジ・パートナーズのグループ企業であり、投資先企業の成長支援に強みを持っています。今回の資金調達を通じて、エイチームはAA社から事業戦略や経営管理に関するアドバイスも受けることができ、成長戦略の実行を強力にサポートしてもらえる体制が整いました。

3-2.資金調達のスキームの詳細

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

今回の資金調達は、AA社が管理・運営するファンドを引受先とする第三者割当増資によって行われました。
CB約25億円、新株予約権約25億円の計約50億円です。

転換価額は643円と前日終値668円から約3.8%のディスカウントになっています。主な資金使途はM&A 約19億円です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

4. 「売上向上支援カンパニーへの変革」の詳細

「売上向上支援カンパニーへの変革」は、エイチームが目指す新たな姿です。具体的には、以下の3つの柱を中心に据えています。
toC領域で行ってきたサービス運営力を元に、toBサービスの強化に舵を切っていくようです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf
  1. デジタルマーケティング事業の強化: SEO対策、コンテンツマーケティング、データ分析などの分野でサービスを拡充し、企業のマーケティング活動を総合的に支援します。

  2. 既存事業の成長加速: 主力事業であるライフスタイルサポート事業において、新規メディアの立ち上げや既存メディアの改善、広告運用効率の向上などを進め、さらなる成長を目指します。

  3. 新規事業の創出: M&Aや事業提携を通じて、新たな事業領域に進出し、収益源の多角化を図ります。

5. 直近実施したM&Aの意義

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

エイチームは、2024年5月にmicroCMS社を約15億円、同年6月にPaddle社の株式を約3.7億円(67%分)で取得し、子会社化しました。これらのM&Aは、「売上向上支援カンパニーへの変革」を加速させるためのものです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf


microCMS社は、ヘッドレスCMSというWebコンテンツ管理システムを提供しており、企業のWebサイト制作や運用を効率化することができます。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/tdnet/2458407/00.pdf

Paddle社は、暗号資産交換アプリを提供しており、ブロックチェーン技術を活用した新たなサービス開発に貢献することが期待されます。

これらの企業の技術やノウハウを活用することで、エイチームはデジタルマーケティング事業を強化し、より多様な顧客ニーズに対応できる体制を構築できると考えています。

まとめ

エイチームは、「売上向上支援カンパニーへの変革」という新たなビジョンを掲げ、デジタルマーケティング力を活かした事業展開を進めています。

プライム市場の上場維持基準への適合という課題を抱えながらも、M&Aや資金調達を通じて事業を拡大し、成長戦略を加速させています。今後のエイチームの変革に、ぜひ注目していきましょう。

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