トランコムのMBO
案件概要
開買付けの背景と目的
物流業界の構造的課題への対応: 物流業界は、人材不足、輸送コストの上昇、競争激化といった構造的な課題に直面しています。対象会社は、これらの課題を克服し、持続的な成長を遂げるためには、抜本的な改革が必要であると認識しています。
非公開化による迅速な意思決定: 上場企業である限り、短期的な業績や株価への配慮から、大胆な改革を実行することが困難になります。非公開化によって、短期的な業績圧力から解放され、長期的な視点に立った戦略を実行できるようになります。
ベインキャピタルの戦略的支援: ベインキャピタルは、豊富な経験とグローバルネットワークを持つプライベート・エクイティ・ファンドです。ベインキャピタルの支援により、対象会社は、海外事業の拡大やM&Aなど、成長戦略を加速させることができます。
公開買付けの詳細
買付者: 株式会社BCJ-86(ベインキャピタルが間接的に支配する特別目的会社)
対象会社: トランコム株式会社(東証プライム上場)
買付価格: 1株当たり10,300円
買付期間: 2024年9月18日~2024年10月31日(30営業日)
買付予定数: 対象会社株式の全て(自己株式を除く)
資金調達: 銀行借入(三井住友銀行、みずほ銀行)
公開買付け後の計画:
二段階買収による完全子会社化
対象会社の非公開化
ベインキャピタルの支援による成長戦略の実行
公開買付けのポイント
MBO: マネジメント層が主体となって、株式を非公開化すること。経営陣の主体的な経営判断を促し、企業価値向上を目指す。
プレミアム: 買付価格は、公表日前日の終値に対して44.66%のプレミアムとなっており、市場からも評価されている。
公正性担保: 少数株主の利益保護のため、独立した特別委員会の設置、第三者算定機関による株式価値算定など、公正性確保のための措置が講じられている。
今後のスケジュール
公開買付期間: 2024年9月18日~2024年10月31日
決済の開始日: 2024年11月6日(予定)
株式併合: 2024年11月下旬~12月上旬(予定)
上場廃止: 2024年12月中旬(予定)
案件目的
非公開化による企業価値向上
短期的な業績圧力からの解放: 上場企業は、四半期ごとの業績発表や株価変動に常にさらされています。非公開化によって、短期的な業績圧力から解放され、中長期的な視点に立った経営が可能になります。
大胆な構造改革の実行: 物流業界は、人材不足、輸送コストの上昇、競争激化など、多くの構造的な課題を抱えています。これらの課題を克服し、持続的な成長を遂げるためには、抜本的な構造改革が必要となります。非公開化によって、短期的な業績悪化や株価下落を懸念することなく、大胆な構造改革を実行することができます。
機動的な経営体制の構築: 非公開化によって、意思決定プロセスを簡素化し、迅速な経営判断が可能になります。変化の激しいビジネス環境において、競争優位性を維持するためには、機動的な経営体制が不可欠です。
株主構成の安定化: 非公開化によって、株主構成を安定化させることができます。これにより、経営陣は、長期的な視点に立った経営戦略を実行しやすくなります。
ベインキャピタルとの連携による成長戦略の加速
海外事業の拡大: ベインキャピタルは、豊富な海外ネットワークとノウハウを持っています。この強みを活かし、対象会社は、海外市場への進出や海外企業との提携などを加速させることができます。
M&A戦略の推進: ベインキャピタルは、M&Aに関する豊富な経験と実績を持っています。対象会社は、ベインキャピタルの支援のもと、M&A戦略を積極的に推進し、事業規模の拡大や新たな収益源の獲得を目指します。
デジタル技術の活用: ベインキャピタルは、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革にも積極的に取り組んでいます。対象会社は、ベインキャピタルの支援のもと、デジタル技術を活用した業務効率化や新たなサービス開発などを推進します。
ESG経営の強化: ベインキャピタルは、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営にも注力しています。対象会社は、ベインキャピタルの支援のもと、ESG経営を強化し、持続可能な企業価値向上を目指します。
買主と対象企業の関係性
買主と対象企業の関係性についてですが、公開買付者である株式会社BCJ-86は、ベインキャピタルが間接的に議決権の全てを保有する株式会社BCJ-85-2の完全子会社として、2024年9月6日に設立されたばかりの会社です。その主たる目的は、対象会社であるトランコム株式会社の株式を所有し、その事業活動を支配・管理することです。
資本関係、人的関係、取引関係のいずれにおいても、公開買付者と対象会社との間に特別なつながりはありません。 簡単に言えば、両社は独立した企業であり、今回の公開買付け以前には直接的な関係を持っていなかったということです。
また、公開買付者はMBO(マネジメント・バイアウト)を実施しますが、これは経営陣の一部が買収側に加わるタイプの買収です。トランコム株式会社の取締役会長である武部氏が、MBO後も引き続き取締役会長として経営に関与する予定です。この点において、武部氏個人は買収側・被買収側の双方に関係することになりますが、会社としては独立した関係と言えるでしょう。
加えて、対象会社の主要株主であるダルトングループも、MBO後のトランコム株式会社の親会社となる株式会社BCJ-85-1の親会社であるBCPE Nexus Cayman L.P.に対して出資を行う予定です。このことから、ダルトングループも、MBO後も間接的にトランコム株式会社との関係を継続すると言えるでしょう。
案件背景
トランコムを取り巻く経営環境の変化: トラックドライバーの時間外労働の上限規制やドライバーの高齢化などによる人材不足、輸送能力不足や輸送コストの上昇、求貨求車事業における競争激化や物流効率化に伴う需要減少といった課題に直面しています。
抜本的な対策の必要性: これらの課題に対応するため、抜本的な経営改善・改革が必要であると認識しています。
上場維持によるリスク: 抜本的な対策には多額の初期投資や継続的な投資が必要となり、短期的な業績悪化や株価下落のリスクがあります。上場を維持したままでは、資本市場からの評価が得られず、株主に対して悪影響を与える可能性を懸念しています。
非公開化によるメリット: 非公開化することで、短期的な業績悪化や株価下落のリスクを回避し、抜本的な対策を迅速かつ果敢に実行できると判断しています。
ベインキャピタルとの協働: ベインキャピタルは豊富な投資経験、実績、人材、経営ノウハウ等を有しており、トランコムの成長戦略の実行を支援する最適なパートナーであると判断しています。
MBOによる独立性維持: MBOにより、トランコムは企業としての独立性を維持しながら、ベインキャピタルの支援を受け、成長戦略を追求することができます。
創業家による継続的な関与: 創業家である武部氏は、MBO後も取締役会長として、中長期的かつ大局的な視点で、トランコムの経営方針や資本政策、海外戦略の策定・推進などに関わっていく予定です。
案件後の経営方針
基本方針
ベインキャピタルによるハンズオン支援: ベインキャピタルは豊富な投資経験に基づき、経営陣と密接に連携しながら、トランコムの企業価値向上を支援します。
独立性の維持: トランコムは企業としての独立性を維持したまま、ベインキャピタルの支援を受け、独自の事業戦略を実行していきます。
成長戦略の加速: ベインキャピタルは、トランコムの成長戦略を加速させるための様々な施策を支援します。具体的には、以下の点が挙げられます。
具体的な施策
人材・組織基盤の強化:
ベインキャピタルのグローバルネットワークを活用した人材紹介
既存経営陣を支える人材の採用・育成
組織体制の強化
M&AおよびPMIの支援:
非連続的な成長を実現するためのM&A戦略の策定
M&A後の統合プロセス(PMI)の円滑な実行
グローバル展開の支援:
ベインキャピタルのグローバルネットワークを活用した海外進出
海外事業の拡大
DX化の推進:
デジタル技術を活用した業務効率化・生産性向上
新規事業創出
創業家の役割
武部氏はMBO後も取締役会長として、経営に継続的に関与します。
中長期的かつ大局的な視点で、経営方針、資本政策、海外戦略の策定・推進などに関わります。
重要取引先との連携・取引関係の深耕においても責任のある役割を担います。
案件検討の経緯
1. 経営課題への対応模索 (2023年9月頃~)
トランコムは、トラックドライバー不足や輸送コスト上昇など、深刻化する業界課題への対応に迫られていました。
これらの課題解決には、抜本的な施策が必要だと認識し、事業会社との提携や株式非公開化を含む資本政策の検討を開始しました。
この検討は、創業家であり最大株主である武部氏と協議しながら進められました。
2. MBOという選択肢 (2024年2月~5月下旬)
抜本的な施策は、短期的には業績に悪影響を及ぼす可能性があり、上場維持による株価下落リスクを懸念しました。
非公開化による迅速な意思決定と、外部からの経営支援の必要性を認識しました。
特に、トランコムの独自性の高い事業モデルと企業カルチャーを維持するためには、事業会社傘下ではなく、創業家が関与するMBOが最適と考えました。
複数のプライベートエクイティファンドと接触し、意見交換や協議を行いました。
3. ベインキャピタルとの出会い (2024年5月下旬~6月中旬)
M&Aアドバイザリー会社であるフーリハン・ローキーを通じて、ベインキャピタルと接点を持ちました。
ベインキャピタルは、グローバルで豊富な投資経験と実績を持つだけでなく、トランコムの事業分野に対する深い理解を示しました。
特に、コンサルティングアプローチによる成長戦略支援に強みを持ち、トランコムの企業価値向上に積極的に貢献する姿勢が評価されました。
トランコムと武部氏は、ベインキャピタルが信頼できる最適なパートナーであるとの結論に至りました。
4. MBO提案の受諾 (2024年6月中旬~7月1日)
トランコムは、武部氏が引き続き経営に関与することを前提に、ベインキャピタルと共同でMBOを実施する意向を伝えました。
6月25日、ベインキャピタルから意向表明書を受領し、7月1日から具体的な検討を開始することに合意しました。
ベインキャピタルも、トランコムの事業基盤や将来性、経営陣を高く評価し、MBOによる成長支援に意欲を示していました。
5. 交渉と特別委員会による検討 (2024年7月1日~9月13日)
公正性・透明性確保のため、特別委員会を設置し、ファイナンシャルアドバイザー(フーリハン・ローキー)、リーガルアドバイザーを選任しました。
特別委員会は、ベインキャピタルとの交渉過程に実質的に関与し、取引条件の公正性を精査しました。
公開買付価格については、複数回の協議・交渉を経て、最終的に1株あたり10,300円に決定しました。
特別委員会は、MBOの目的、条件、手続きの妥当性を認め、取締役会に賛同意見を答申しました。
6. 取締役会決議 (2024年9月17日)
トランコム取締役会は、特別委員会の答申、ファイナンシャルアドバイザーの株式価値算定書などを踏まえ、MBOに賛同することを決議しました。
株主に対しては、公開買付けへの応募を推奨する意見を表明しました。
取引スキームの特徴点
1. 二段階買収による非公開化
まず、公開買付けで過半数の株式を取得し、その後株式併合によるスクイーズアウトを実施することで、完全子会社化を目指しています。
これは、公開買付けだけで全ての株式を取得することが難しい場合に備え、確実に非公開化を実現するための戦略です。
少数株主の権利保護のため、株式併合に伴う端数株式に対しては、公開買付価格と同等の対価を支払う予定です。
2. 創業家とベインキャピタルによる共同出資
本取引は、単なるファンドによる買収ではなく、創業家とベインキャピタルが共同で新会社に出資する点が特徴です。
公開買付けの実施主体となる公開買付者(株式会社BCJ-86)は、ベインキャピタルが投資助言を行うファンドが出資する株式会社BCJ-85-2の完全子会社です。
さらに、BCJ-85-2は、株式会社BCJ-85-1の完全子会社であり、BCJ-85-1の親会社はBCPE Nexus Cayman L.P.です。
本自己株式取得後、武部氏と、武部氏が設立する武部家資産管理会社は、BCJ-85-1に合計で30.7%出資(本再出資(創業家))し、ダルトングループはBCPE Nexus Cayman L.P.に合計で14.40%出資(本再出資(ダルトングループ))します。
このスキームにより、創業家は経営への関与を継続し、長期的な視点で企業価値向上に貢献することができます。
また、ベインキャピタルは豊富な経験とノウハウを提供することで、トランコムの成長をサポートします。
さらに、ダルトングループは中長期的にトランコム株式を所有してきた経験を活かし、ベインキャピタルに知見を共有します。
3. 株式の種類によるリスクコントロール
創業家である武部氏は、BCJ-85-1への出資において、普通株式だけでなく、議決権のないA種優先株式も活用します。
これは、普通株式のみで出資した場合に比べて、リスクを抑制できるというメリットがあります。
A種優先株式は、BCJ-85-1株式が上場された場合には、社債または劣後ローン債権に転換することができる予定です。
4. 複雑な組織再編
本取引は、公開買付け、株式併合、創業家・ダルトングループによる再出資、優先株式の発行など、複数の複雑な組織再編を伴います。
各ステップは相互に関連しており、綿密な計画と実行が必要となります。
取締役会の意見
1. トランコムの置かれた厳しい経営環境
トラックドライバー不足、輸送コスト上昇、競争激化など、トランコムを取り巻く経営環境は厳しさを増しています。
これらの課題に対応するには、抜本的な経営改革が必要であり、迅速な意思決定と外部からの支援が不可欠であると判断しました。
2. 非公開化によるメリット
上場を維持したまま改革を進めると、短期的な業績悪化による株価下落リスクが懸念されます。
非公開化することで、短期的な業績変動に左右されることなく、中長期的な視点で企業価値向上に向けた取り組みを推進できると判断しました。
3. ベインキャピタルの豊富な経験とノウハウ
ベインキャピタルは、グローバルで豊富な投資経験と実績を持つだけでなく、トランコムの事業分野に対する深い理解を示しました。
コンサルティングアプローチによる成長戦略支援に強みを持ち、トランコムの企業価値向上に大きく貢献できると期待されています。
4. 創業家の継続的な関与
MBO後も創業家である武部氏が取締役会長として経営に関与することで、トランコムの企業文化や強みを維持しながら、新たな成長を目指せると判断しました。
5. 特別委員会による精査と妥当な公開買付価格
独立した特別委員会が、取引条件の公正性や手続きの妥当性を厳格に審査しました。
公開買付価格は、第三者機関による株式価値算定の結果を踏まえ、少数株主にとって妥当な水準であると判断されました。
6. 独立した検討体制と情報開示
取締役会は、利益相反を避けるため、武部氏を除く取締役のみで審議・決議を行いました。
また、公開買付けに関する詳細な情報を適時適切に開示することで、株主が十分な情報に基づいて判断できるよう配慮しています。
取締役会の意見表明は、上記のような点を総合的に判断した結果であり、MBOがトランコム、そして株主にとって最善の選択であるとの結論に至ったことを示しています。
価格の算出方法
DCF法の概要
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)は、企業が将来にわたって生み出すと予想されるフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引くことで、企業価値を算出する評価手法です。
DCF法の適用
予測期間: 2025年3月期から2029年3月期までの5年間を予測期間としています。
FCFの算出: トランコムが作成した事業計画に基づき、各年度の売上高、EBITDA、営業利益、フリーキャッシュフローを予測しています。
割引率: 5.20%から6.20%の割引率を採用しています。割引率は、リスクフリーレート、市場リスクプレミアム、ベータ値などを考慮して決定されます。
継続価値: 2029年3月期以降の継続価値については、永久成長率法を採用し、0.00%から1.00%の永久成長率を適用しています。
DCF法による算定結果
上記の前提条件に基づき、DCF法によるトランコム株式1株あたりの価値は、9,344円から13,288円と算定されました。
事業計画とDCF法における考慮点
フーリハン・ローキーは、トランコムが新たに作成した2025年3月期から2029年3月期までの5年間の事業計画をDCF法の算定根拠としています。
この事業計画は、トラックドライバー不足や輸送コスト上昇などを踏まえ、売上高や営業利益率の目標値を下方修正したものです。
特にフリーキャッシュフローについては、複数の顧客の生産拠点近隣で計画されている物流センター新設に伴う投資額の変動を反映し、各年度で大幅な増減を予測しています。
買付価格決定までの過程
1. 交渉の初期段階 (2024年7月~8月)
ベインキャピタルは、トランコムに対して、当初提案として1株あたり9,000円の買付価格を提示しました。
しかし、特別委員会は、この価格がトランコムの企業価値を著しく低く見積もっているとして、再提案を要求しました。
特別委員会は、独立したファイナンシャルアドバイザーであるフーリハン・ローキーから、トランコム株式の価値に関する助言を受けていました。
その後もベインキャピタルは価格を引き上げましたが、特別委員会は依然として価格が不十分であると判断し、交渉は難航しました。
2. 交渉の進展 (2024年9月)
9月に入ると、ベインキャピタルは買付価格を10,000円に引き上げました。
しかし、特別委員会は、依然としてトランコムの将来の収益力や成長性を十分に反映していないと判断し、さらなる価格の引き上げを要求しました。
トランコムは、2025年3月期通期の連結業績予想の修正の可能性や、売上高が増加する一方、各段階利益は変更がない見込みであることをベインキャピタルに説明しました。
ベインキャピタルは、これらの情報を踏まえ、最終的に買付価格を10,300円に引き上げることを決定しました。
3. 特別委員会の承認と取締役会決議
特別委員会は、最終的な買付価格10,300円を承認し、トランコム取締役会に対して、公開買付けに賛同する旨の答申を行いました。
トランコム取締役会は、特別委員会の答申を受け、公開買付けに賛同することを決議しました。
最終価格のプレミアム
最終的に決定された買付価格10,300円は、以下のプレミアム水準となっています。
公表日前営業日の終値(7,120円)に対して 44.66% のプレミアム
過去1ヶ月間の終値単純平均値(6,918円)に対して 48.89% のプレミアム
過去3ヶ月間の終値単純平均値(6,570円)に対して 56.77% のプレミアム
過去6ヶ月間の終値単純平均値(6,255円)に対して 64.67% のプレミアム
これらのプレミアム水準は、経済産業省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表された2019年6月以降に公表された国内MBO事例におけるプレミアムの中央値と比較しても、合理的かつ妥当な水準であると判断されています。
公正性担保措置の内容(特に「マジョリティ・オブ・マイノリティ」「マーケットチエック」に関する事項)
1. マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の不採用
マジョリティ・オブ・マイノリティ条件とは、公開買付けにおいて、買付者が、独立した少数株主の過半数の賛成を得なければ公開買付けを成立させないという条件です。
本件においては、公開買付者はこの条件を設定していません。
公開買付者は、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設定すると、公開買付けの成立を不安定化させ、応募を希望する少数株主の利益を損なう可能性があると判断したためです。
ただし、この条件を設定しない代わりに、以下の公正性担保措置を講じています。
独立した特別委員会の設置: 公開買付者から独立した委員で構成された特別委員会を設置し、取引条件や手続きの公正性を厳格に審査しています。
第三者算定機関による株式価値算定: 独立した第三者算定機関であるフーリハン・ローキーに、トランコム株式の価値算定を依頼し、その結果を公開買付価格の決定に反映しています。
十分なプレミアムの付与: 公開買付価格は、市場株価に対して十分なプレミアムを付与した水準であり、少数株主にとって有利な条件となっています。
情報開示の充実: 公開買付けに関する情報を、適時適切に開示することで、株主が十分な情報に基づいて判断できる環境を整えています。
特別委員会は、これらの措置が講じられていることから、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設定しなくても、少数株主の利益は十分に保護されると判断しました。
2. マーケットチェックの実施状況
マーケットチェックとは、公開買付けの対象会社が、他の潜在的な買収候補者を探し、より有利な条件を引き出すための活動です。
トランコムは、積極的なマーケットチェックは実施していません。
情報管理の観点から、その実施は容易ではないと判断したためです。
また、本取引では、上記のような充実した公正性担保措置が講じられており、公正な手続きを通じて株主の利益が十分に配慮されていると判断されました。
一方で、公開買付期間を法定最短期間よりも長い30営業日に設定することで、間接的なマーケットチェックの機会を確保しています。
この期間中に、他の買収希望者が現れれば、対抗的な公開買付けを行うことも可能です。
公開買付けに賛同する旨の意見表明を維持することが取締役の善管注意義務に反する懸念が生じた場合には、トランコムは公開買付者に対して買付価格等の変更を協議する権利を有しています。
特別委員会は、積極的なマーケットチェックを実施していないものの、間接的なマーケットチェックの機会が確保されていること、および他の公正性担保措置が充実していることから、マーケットチェックの不足による不利益は生じないと判断しました。
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