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忘れないでいたい、あのときのキュン


ふとしたきっかけで、それまで忘れていた懐かしい記憶が蘇る。


きのう、しばらく使っていなかった二番手のシャープペンシルを手に取った。高校時代は普段から愛用し、模試や受験でもお世話になったシャープペンシル。200円もしない安いものだったけれど、シンプルな作りと可愛い色で、気に入っていた。

そのときにふと思い出されたのが、高校2年生のある時期の記憶。ちょっと気になる存在だった男の子と席替えで前後の席になり、彼が自分と色違いのシャープペンシルを使っているのを知った。

たったそれだけのことにすごくドキドキしてうれしくて。そんな淡い気持ちが、じわじわと蘇ってきた。

ときどきこうやって、懐かしい気持ちや感覚が当時のまま、戻ってくる。


なんてことない、その辺で売っている、よくあるシャープペンシル。1クラス40人もいれば、誰かとお揃いになることだってあるだろう。

頭の中ではそんな風に冷静に考えていたし、その男の子のことを好きかどうかさえもわからなかった。それなのにドキドキはなくならなくて、そのシャープペンシルは、その日からもっと特別になった。

実は、一度壊れてしまい、今持っているものは2代目。どうしても同じものが良くて、何件もお店を探し回った。そのくらい、特別だった。


最後まで何も起こらず、口にも出していない、全てわたしの中で完結する小さな想い出。

休み時間にわたしの席に座られていたり、お互い遅刻の常習者で下駄箱から教室まで揃ってダッシュしたり、そういうのがうれしかった気がする。

もうずっと、忘れていた。
たった数年前なのに、ずっと昔のことのよう。


彼は元気にしているだろうか。


誰も知らない、わたしだけの想い出だけど、忘れてしまうのはもったいないと思った。

せっかく思い出したのだから、このキュンは忘れないでいたい。

もう失くさないように、ここに書き留めておく。





(今思えば、やっぱりあれは、好きだったんじゃない?)


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