もしも脚本家がご令嬢だったら?膝枕外伝「脚本家が見た膝枕」に令嬢を入れてみた
みなさま、ごきげんよう。
宮村麻未ですわ♪
・・・失礼いたしました(苦笑)
早速本題に入りますわね(どこまでも令嬢を引きずっておりますの)
「脚本家が見た膝枕」の脚本家に令嬢を入れてみましたわ
これから読んでいただくお話は、二次創作作品です。
まずは短編小説「膝枕」をお読みくださいませ。
2021年5月31日からClubhouseで続いている朗読&創作リレー(#膝枕リレー)のはじまり。
脚本家 今井雅子先生の作品ですのよ。
その他派生作品(外伝)は、こちらのマガジンからお読みいただけますわ。
そして、これから公開いたしますのは・・・
今井雅子先生が公開された「膝枕」外伝
「脚本家が見た膝枕」の派生作品ですの。
(本家は以下のリンクからお読みくださいませ)
この作品に登場する「脚本家」が
もしもご令嬢だったなら・・・。
そんな妄想からこのお話は誕生しましたの。
太字になっている箇所は
脚本家に令嬢入れした「セリフ」『心の叫び』もしくはモノローグですのよ。
お読みになる際には、好きなようにアレンジを加えていただいて構いませんわ。
また、音声SNS Clubhouseでの朗読も大歓迎ですのよ。
ただし。
「膝枕」のお母さまである今井雅子先生に対する礼儀と感謝を忘れないこと。
これだけがわたくしからのお願いですわ。
前置きが長くなりましたわね。
では、作品にまいりましょう。
ごきげんよう♪
今井雅子作「膝枕」外伝 「令嬢脚本家が見た膝枕」令嬢入れ:宮村麻未
「カメオの男のスケジュールが空いた」
と待ち合わせの喫茶店に現れるなり、プロデューサ ーは脚本家に告げた。
「カメオの男」というのは、脚本家が一年かけて本直しを重ねてきた超低予算映画『膝枕』にカメオ出演する予定の若手俳優のことだ。当初は主役の「男」役を打診したのだが、予算が30倍ほどついている超大作娯楽映画の主演が決まっており、撮影期間が重なるということで、「カメオ出演なら」と向こうから言ってきた。向こうというのは、本人ではなく、窓口になっている事務所のマネージャーのことだ。
「向こうは、なんと仰っているんですの?」
氷が解けてすっかり薄くなったアイスコーヒーをストローですすり、脚本家が聞いた。先週提出した44稿目で脱稿したはずだったが、また直しだ。どれぐらいの分量になるかは、向こうのリクエストの度合いによって変わる。
主人公の男の元に膝枕を届ける配達員。それがカメオの男の役だった。出演シーンは冒頭の 一箇所だけ、セリフは「受け取ってもらっていいっすか」の一言だけだった。
「セリフを増やしてくれ」なら30 分で直せるが、「出番を増やしてくれ」だと別シーンに登場させなくてはならない。取ってつけたようなチグハグさを出さないためには、前後とのつながりもいじる必要がある。
『一日がかりになるかもしれませんわね』
主人公の男がもう一人のヒロインであるヒサコと出会う居酒屋で配達員がバイトしている設定を思いついたが、『ご都合ですわね』とすぐさま打ち消した。
「主役、戻せないかな」
「コーヒー」と店員に告げた流れで、プロデューサーが切り出した。
カメオの男を主役にできないか、とコーヒーを注文するのと同じノリでサラッと言いやがっ・・・ 仰いますこと。
たしかに主役をオファーいたしましたが、断って来たのは向こうですわ。ですから私どもは別な役者を当たりました。カメオの男ほどの人気はございませんが、カメオの男より演技力 は勝(まさ)っており、現場受けもいい小劇場上がりの俳優ですのよ。役への入れ込みぶりは噂以上で、クランクイン一か月前から箱入り娘膝枕と二人暮らしを始めていらっしゃるとか。
主演作の撮影が延期になってスケジュールが空いたからといって、すでに役作りを始めている役者を追いやって主役の座に収まろうというのは虫が良すぎますこと。それがまかり通ると思っていらっしゃるのは、前例があるということなのでしょうね。
「・・・ まさか、引き受けていらっしゃらないですわよね?」
「一旦預からせてもらった」
「預からないで、断ってくださいませ!」
脚本家の声が大きくなり、隣のテーブルでミニスカートの女を勧誘しているスカウト風の男 が、なんだよと咎めるような視線を向けてきた。君はいいものを持っているから、レッスン を受けたらすぐデビューできるよとスカウト男が口説き、ミニスカ女がその気になってきた ところを邪魔したらしい。『あなた、騙されていらっしゃいますわよ』と女に教えてやりたくなる。無事にデビューできたところで、化かし合いは日常茶飯事だ。
ついでに、スカート短すぎますわよ。太ももまで見えてしまっていますわ。「膝枕」のお話をしている横で、生のお膝が視界に入って来るのは何とも落ち着きませんこと。
「例えばの話だけど、ヒサコを男にするっていうの、ある?」
「例えばの話」とプロデューサーが言うときは、一例ではなく本命だ。この設定に乗れるかどうかを聞いている。脚本家になりたての頃はその流儀を理解しておらず、アイデア出しのきっかけなのだと思っていた。
「ヒサコを男にいたしますと、主人公の男の設定が変わりますわよね」と脚本家が言うと、
「まぁ、女になるかな」とプロデューサーは言った。夏になったら、半袖になるよな、のノリだ。
『・・・設定を変えるのを 衣替え感覚で仰らないでいただけますかしら。』
「そうなりますと、結局、今決まっている主役を動かすことになりませんこと?」
そうだよなとプロデューサーは納得したそぶりを見せ、「主人公の男はそのままにしよう」 と折れたかに見せた上で、
「例えば、主人公の男と配達員の男と箱入り娘膝枕の三角関係にするのはどう?」
またしても「例えば」を持ち出した。
「そういたしますと、男ではなく、膝枕が二股かけてる感じになりませんこと?これってラブコメでしたかしら?」
「それもありだと思うんだよな」
「ございません」
「例えばの話をしただけだよ」とプロデューサーは言うが、脚本家が乗れば、「じゃあ、その線で直してよ」と言ったに違いない。
「主人公の男がヒサコの代わりに配達員の男と箱入り娘を二股にかける設定でいこう」
「・・・ と仰いますと、主人公の男は、男も女も愛せる設定と言うことですの?」
「箱入り娘膝枕は女っていうか、モノだから」
「そうなりますと、何がしたいのだか、わからなくなってまいりますわよね。混ぜてはなら ないものを混ぜている感じがしますわ」
「いや、どうかな。普遍的なメッセージを打ち出せるかもしれないよ」
プロデューサーが適当なことを言ってから続けた。
「愛には性別どころか人間であるかどうかさえ関係がない。究極のバリアフリーでダイバーシティーでSDGs (エスディージーズ)。こういう映画、見たことある?」
『見たことがないのは、誰も作っていないからですわ。プロデューサーの無責任な思いつき を、理性を働かせた誰かが食い止めて来たのではないですか!』
「一旦、お預かりいたしますわね」
脚本家は原稿を持ち帰ることにした。
まったくもって割に合いませんわ。1年がかりで、45 稿。これが最後とも限りません。作品の予算規模から考えて、脚本料は、せいぜい50万円。時給に換算したら、喫茶店でコーヒーをお運びしているほうが稼げるでしょうね。ギャラの足しにと劇中に登場する「箱入り娘膝枕」が送られてまいりましたが、呑気に膝枕商品に頭を預ける余裕がどこにあると仰るの。 このわたくしを労うつもりがおありなら、せめて生身のお膝をお寄越しなさいませ!
生身のお膝 ⁉︎
『そうですわ!』と脚本家は閃いた。主人公の男と配達員が箱入り娘を取り合うのは、うまく話を組める自信がなかったが、生身の膝であるヒサコを取り合うのなら成立する。
原作の設定通りの「主人公の男と箱入り娘膝枕とヒサコの三角関係」に配達員を加えた四角関係。これならラブコメテイストも入れられますわね。
配達員とヒサコがくっついてもよろしいですし、男とヒサコがくっつき、振られて余った配達員と膝枕がくっついても・・・ 男と箱入り娘膝枕が溶け合って一体化するところは見せ場になりそうですし、CGデザイナーも張り切っていらっしゃいますから、そこを残すとなりますと・・・ヒサコと配達員をくっつけるのが良さそうですわね。
脚本を書くのはパズルのような作業で、キャラクターの設定をちょっと変えると、それが脚本全体に影響する。配達員を「ヒサコに想いを寄せ、ヒサコと両想いになる」設定にするこ とで、傷は最小限に済みそうだ。
・・・といたしますと、ヒサコが主人公の男にこっぴどく振られる場面が必要になりますわね。
膝枕と切り離される外科手術を受けた男が、身は別々になっても心は箱入り娘膝枕と分かち がたく結びついていることに思い至り、本当に愛しているのはヒサコではなく箱入り娘なのだと悟る。ようやく男が振り向いてくれると期待していたヒサコは今度こそ失恋し、失意の底に突き落とされる。
そんなヒサコの目の前に現れる配達員。二組のカップルが生まれてハッピーエンド。 うん、これですわ。
一気に書き上げた。プロデューサーと別れてから、わずか4時間。
『このスピードで改訂稿を上げてきたら、舌をお巻きになるでしょうね。今日のオーダーにこれ以上の形でお応えできる脚本家が他にいらっしゃるかしら。いいえ、いらっしゃいませんわね。手前味噌ですけど。』
「改訂」に原稿の「稿」と書いて、改訂稿。脚本家のMacBook は日本語に弱いらしく、「かいていこう」と打って変換すると、「書いて行こう」と出る。英語にするとKeep writing 。「腐らず頑張れ」と励ましてくれているようで可愛い。
45 稿で決定稿となった。日本語が苦手な脚本家のMacBook は「けっていこう」と打ち込んで変換すると、「蹴って行こう」と出る。Keep kicking 。理不尽をはねのける威勢の良さがある。
久しぶりに枕を高くして深い眠りに落ちた脚本家は、あくる朝、プロデューサーからの電話で目が覚めた。
「ネットニュース見た?」
撮影延期になっていたカメオの男の主演映画が、急遽クランクインすることになったらしい。
『・・・そういうことは、早めにお知らせくださいませんこと?配達員膨らませてしまったではないですか!』
「参ったよ」
プロデューサーがため息をつくが、どこか他人事(ひとごと)な響きがあった。
「よろしいではありませんか。あのレベルの役者なら、いくらでもいらっしゃいますわ」 と脚本家が言うと、
「彼に肩入れしてたんじゃなかったっけ」とプロデューサーは意外そうに言った。
話が噛み合わないと思ったら、役を降りたのはカメオの男ではなく、主役の男だった。役作りのために二人暮らしを始めた箱入り娘膝枕に溺れ、部屋から出て来なくなってしまったという。映画『膝枕』の撮影より前にスケジュールしていた仕事も軒並みキャンセルしているらしい。
「でしたらカメオの男を主役に」と脚本家は言いかけたが、その線は消えてしまっている。
「では次、どなたに当たられますの?」
「次なんて、ないよ。クランクインまで2週間切ってるんだから。今、スケジュールが空いているってことは、売れてないってことだよ」
プロデューサーの声が、くぐもって聞こえる。横になって話しているのだろう。
『こんな大事な話をするときに、箱入り娘膝枕に頭を預けてやが・・・ いらっしゃるに違いありませんわ。』
「主役がつかまらなかったら、クランクインできないではありませんか」
「だよなー。これ流れるパターンだ」
何と言うことでしょう。企画が流れるかどうかはプロデューサーの踏ん張りにかかっている と言うのに、完全に腰がひけていらっしゃる。腰抜けですわ。いいえ、骨抜きになっているのでしょう。箱入り娘に。
ここは怒るところですわ。ヘラヘラしていると、つけ込まれてしまいます。
終わりの見えないダメ出しに弱音を吐きそうになりながらも「書いて行こう」と前を向いて書き続けられたのは、作品を少しでも良い形にして届けたいという作者の意地があるからですわ。
作品になれば苦労は消し飛びますが、作品を世に出せないと、徒労感だけが残ってしまいます
怒らなくては。わたくしが書いた登場人物たちに代わって。ここで怒らなくては、主人公の男も、箱入り娘膝枕も、ヒサコも、配達員も、彼ら彼女らのセリフも、誰にも届かないまま埋もれてしまいます。
もちろん、その脚本の書き手であるわたくしの存在も。
なかったことにしてはいけません。怒らなくては。怒らなくては。怒らなくては・・・・・・!
なのに、体に力が入りません・・・ 。
昨夜、45稿が決定稿になった達成感で、脚本家は、届いたまま部屋の隅に追いやっていたその箱を開けた。中身を取り出し、頭を預け、マシュマロのような感触に受け止められた。 それっきり、一度も起き上がっていない。
脚本家の頭は、箱入り娘の膝枕に深く沈み込んでいた。
『このお膝があれば、もう何もいりませんわ・・・ 』
AIPicasso様に「令嬢 本」とお願いしてみましたの
AIの進化がめざましい今日この頃
わたくしも時々、AIPicasso様にイラストをお願いしておりますのよ。
AIPicasso様にイラスト、AIチャットくんに文章をお願いして
NFTも作成してみましたわ♪
というわけで
「令嬢 本」でAIPicasso様にイラストをお願いしてみましたの。
「膝枕」はまだ認識していただけませんでしたわ。
「脚本家」も認識いただけず。
・・・AIPicasso様には 教育が 必要かもしれませんわね。うふふ。
最後までお読みいただきましたこと
心より感謝申し上げますわ。
なんちゃってご令嬢 宮村麻未(※ド庶民です!)
※TOP画像は
伊藤巴@漫画家カウンセラー様のイラストを使用させていただきました。
感謝申し上げます。