キッチハイクは孤食時代へのカウンター。総勢20名のスタートアップがつくる、食でつながる未来の暮らし。
先日、『マーケティングホライズン』という業界誌(特集:外食2.0)に寄稿する機会があって、慣れない固めの文章をウンウンうなりながら書きました(大変だった...!)。
せっかく頑張ったので取れ高MAX*にしちゃおうと思い、note向けに書き直してみました。言ってることはほぼ同じですが、だいぶ肩の力抜けてます。
*キッチハイク共同代表・山本雅也の口癖です。私も好きな言葉。
人類史上、もっとも食が個人化された時代
突然ですが、私たちは人類史上、もっとも食が個人化された時代に生きています。
どういうことかって?人類にとって、食はもともと共同作業によって初めて成立する営みでした。集団で狩りをしたり、農耕を営んだり。
そこまで歴史をさかのぼらなくても、私たちの親世代、ほんの半世紀ほど前までは、家族みんなで食事をとる、サザエさん的な食卓が一般的だったはずです。
それが21世紀に入って、ファストフードやコンビニが街にあふれ、私たちは好きな時間に、一人でもササッと食事を済ませられるようになりました。食の好みや習慣がかつてなく細分化した、自由な時代です。
一方で、人と食べたい欲求が湧き上がる時代でもあります。
農林水産省が20歳以上の3,000人を対象に調査した最新の『食育白書』(2018)によると、週に半分、誰とも食事を摂らない「孤食」の人が15.3%となり、2011年から5ポイント増加したそうです。
「時間や場所が合わないため仕方ない」(35.5%)、「一緒に食べる人がいない」(31.1%)などが理由で、好き好んで1人で食べているわけではありません。
食でつながる暮らしをつくる
世の中にこれだけ食べる場所があって、人がいて、今この瞬間にも星の数ほど食事が行われているのに、一緒に食べる相手がいないなんて!
そんな時代にキッチハイクが目指すのは、「食でつながる暮らしをつくる」こと。
これは私自身の原体験にもつながっています。大学に入って東京で一人暮らしを始めたんですが、壁に向かって一人で食事をするって、全然食べた気がしないんですよね。誰とも会話をしないからあっという間に食べ終わって、単に空腹を満たすだけの行為になってしまう。まさに、孤独な食事でした。
食事という日々の行為に人とのつながりが生まれると、日常はずっと豊かで幸福なものになります。そんな暮らしが当たり前になる未来を夢見て、私たちは日々前進しています。
↑キッチハイクのまかない風景。みんな食べることが大好きで、まかないを楽しみに働いています(たまに、おやつも!)。
キッチハイクにジョインして2年が経ちますが、これはずっと変わらず。私たち自身が、食でつながる暮らしを実践しています。
おいしいもの好きで集まれるアプリ
キッチハイクでは、アプリに載っているお店の中から、同じ日時に食べに行きたい人どうしで集まって、食事ができます。
参加者は企画料を事前にキッチハイクに支払いますが、当日の注文や会計は、普段の飲食店利用と同じ。都内を中心にこれまで300店近くでキッチハイクが開かれてきました。
例えば、週に1度はキッチハイクを利用する、会社員のAさん(30代、女性)。友人は多いけれど、結婚してたり子育て中だったりで以前のように気軽に誘えなくなってしまい、ごはん仲間を求めていました。
最初は緊張したそうですが、同じものを食べたくて集まった人同士で盛り上がるのが楽しくて、最近ではすっかり休日の趣味に。ほかの参加者からおすすめのごはん会の情報を聞くと、ついまた予約してしまうそうです。
こんな風に、日常的にキッチハイクを使うユーザーさんが増えていますが(ありがたい!)、キッチハイクには3つの提供価値があります。
"食の好みが合う人と出会える"
"お店の幅が広がる"
"スケジュール調整しなくてOK"
"食の好みが合う人と出会える"
同じものを食べたい人で集まると、共通の話題が尽きません。「この味付け、いいですね!」「あそこのお店、おすすめですよ」。
知らない人同士という、一見ストレスになりそうなシチュエーションですが、食の趣味という共通点が約束されているから、和やかに進むんです。
また、羊肉やパクチー、激辛料理など、友だちを誘うのに躊躇する料理でも、キッチハイクなら安心。それが食べたくて集まった人同士だから、遠慮なく欲求を満たせます。
"お店の幅が広がる"
自分では選ばないお店に行けるのもポイント。みんなのおすすめやスタッフが厳選したお店で連日いろんなごはん会が開かれているから、自分では選ばないようなお店に出会えます。
「キッチハイクで行ったお店が良かったから、後日友達を連れていった!」なんて声もよく聞きます。
"スケジュール調整しなくてOK"
ふだんの外食で地味に大変なのが、一緒に行く人を探したり、誰かと日程を合わせたりすること。せっかくお店を予約しても、急な予定変更でキャンセルしないといけなくなったり、みんなの予定が合う日が、行きたいお店の定休日だったりもします。
キッチハイクなら、自分で行きたいお店と日程を選ぶだけなので、誰とも調整せずにお店めぐりができちゃいます。
「検索」では叶わない出会いを作りたい
さらに最近取り組んでいるのが、「誰と食べるか」と「どの店に行くか」の掛け合わせで、外食にワクワクを設計する「おまかせ予約」です。
3月にリリースしたばかりの新機能で、自分の食の好みやスケジュールを登録すると、キッチハイクのデータベースを元におすすめのお店が予約されます。
さらに、そこには自分の食の好みと近い人たちが3〜5人ほど集められていて、同じものを食べたい人同士のごはん会に、完全おまかせで行けてしまうんです。
膨大な数の飲食店から、自分に合うお店を探し出すのは至難のわざ。まして、一緒に食べる仲間は見つけられません。
キッチハイクを使うと、検索では叶わない外食体験ができます。
孤食時代にカウンターパンチを喰らわせたい
つらつら書いてきましたが、キッチハイクは孤食時代に対するカウンターであり、未来の暮らしを良くするミッションを(勝手に)背負っています。
共同代表・山本の「「みんなで食べる」 を生活の新しい態度にしたい」という考えが好きです。そう、ポイントは人々の態度を変えることであり、そのための仕組みなんです。
強いメッセージを発しても、人は三日坊主な生き物なので、一過性で終わってしまいます。
私たちがビジネスというフィールドやスタートアップ的なスケールにこだわるのは、キッチハイクを社会に根付く仕組みにしたいから。
「今日は誰かと食べたいな」と思ったとき、街のあちこちでキッチハイクが開かれていて、自分を受け入れてくれる。たわいもない会話をしながら、お腹も心も満たされる食事ができる。
私たちは、孤食時代にカウンターパンチを喰らわす覚悟を決めました。キッチハイクのこれからを、見守っていてくださいね。