インド・チェンナイの飲酒事情について。
インドでは、日本ほどオープンに飲酒できる状況にはありません。
全面禁酒ということではないですが、酒をオープンに飲むことが憚られる雰囲気があります。
州ごとによって、飲酒事情は大きく異なりますが、私が住んでいるチェンナイ(タミルナドゥ州)を中心に、以下まとめます。
1.禁酒法とドライデー
インド全体の傾向として、オープンな飲酒は社会的に見栄えが良くないこととされています。
私のドライバーも飲酒は社会的に見栄えが良くないことと認識しており、道端で酔いつぶれている人をたまに見かけると、「自分はこうはなりたくない」と強く思うようです。
(私はどちらかといえば道端で酔いつぶれる側の人間です。気を付けます)
宗教でいうと、イスラーム教(教徒はインド国民の14%、2011年国勢調査)は酒を禁じており、ヒンズー教(教徒はインド国民の80%、2011年国勢調査)でも酒は良いものとはされていません。
法律でいうと、ガンジーやモディ現首相の出身地であるグジャラート州をはじめ、ビハール州、マニプル州、トリプラ州、ミゾラム州では禁酒法が施行されています。
(ただし、グジャラート州ではリカーパーミット(飲酒許可書)制度があります。)
また、タミルナドゥ州やケララ州は準禁酒州となっており、酒類の販売及び消費は、5つ星ホテルや公営の酒屋等に限定されています。
禁酒法が施行されていない州でも、ドライデー(禁酒日)が月に1~2日設定されている場合があり、この日は種類を一切販売することができません。
2.統計上はインド人の飲酒量は増えている
統計上は、インド人の飲酒量は増えています。
WHOの報告書によるとインド人の1人あたりの年間飲酒量は2005年の2.4Lから2016年の5.7Lに、2.4倍に伸びました。
世界平均は2005年は5.5L、2016年は6.4Lとなっており、インドは世界平均以下の水準ではありますが、その伸び率は世界平均の1.2倍を大きく上回っています。
ちなみに、私の職場の同僚もお酒を飲みます。
日本ほどノミニケーションを重視はしませんが、仕事終わりに飲みに行くことはあります。
3.タミルナドゥ州のお酒の流通はTASMACが独占
ここまではインド全体の話ですが、ここからはチェンナイがあるタミルナドゥ州の話となります。
タミルナドゥ州のお酒の流通は「TASMAC(タスマック): Tamil Nadu State Marketing Corporation」という州政府の公社が独占しています。
スーパーなどの一般的な小売店ではお酒は販売されておらず、消費者はTASMACの店舗でのみ、お酒を購入することができます。
また、お酒を提供する飲食店への卸売もTASMACが独占しており、飲食店はTASMACからお酒を仕入れることとなります。
4.TASMACでお酒を買うには
写真は大型ショッピングモール内にあるTASMACです。
明るい印象の店構えで、ビールの他、ワイン、ウイスキー等の洋酒を中心に取り扱っています。
大型ショッピングモール内でも地下フロアの端っこなど、目立たない場所に店舗を構えています。
また、路面店もありますが、入口や看板は通りからは目視できないようになっています。
店舗自体も地下の薄暗いところにあり、カウンターを介してお酒を買うスタイルとなっています。
前者のショッピングモールの客層は富裕層や、若者、外国人が多いですが、後者の路面店はアルコール中毒者と思しき方もよく見かけます。
また、路面店では女性客を見かけたことがありません。
一例として、左は国産ビールの「BRITISH EMPIRE」でMRP(Maximum Retail Price:最大小売価格)は500ml缶で120ルピー(約180円)、右はベルギー産ビールの「BUHO」でMRPは500ml缶で250ルピー(約375円)です。
インドのビールの輸入関税率は100%、その他のアルコール飲料は150%なので、その分、輸入品は割高となります。
また、いずれの商品も「For Sale in Tamil Nadu Only(タミルナドゥ州でのみ販売)」、「Consumption of Alcohol is Injurious to Health(飲酒は健康を害します)」、「 Be Safe, Don't Drink and Drive(飲酒運転は禁止です)」と明記されています。
5.チェンナイの飲食店でお酒を飲むには
お酒を飲める場所は増えてきてはいますが、インドの酒類販売許可ライセンス料が高いため、お酒を提供する飲食店はまだまだ限定的です。
5つ星ホテルであればこの酒類販売許可ライセンスをまず有しており、これに入居する飲食店はお酒提供しているケースがほとんどです。
厳密にいえば飲食店ではなくホテルがライセンスを持っているため、食事は飲食店のレジで、お酒はホテルのレジで、というように別々にお会計することもあります。
また、秘密裏にお酒の提供を行う飲食店もあると聞きますが、これらについては警察も目を光らせており、立ち入り検査も行っています。
お酒が店内の見える場所に陳列されていない、メニューにも記載されていない、口頭でのみお酒を勧めてくる、という状況であればおそらくその店舗はモグリです。
表向きは客に頼まれて買ってきたということになりますので、くれぐれもご注意ください。
なお、上記のTASMAC、酒類販売許可ライセンスをもつ飲食店であってもドライデーはお酒の販売・提供は一切行いません。
私自身もドライデーでお預けを食らったことがありますので、TASMACや飲食店に行く際は予め確認しておくと無難です。