インド・チェンナイでの住居選びについて。
生活の基盤となる住居選びは重要ですが、当地では問題のある住居およびその大家も散見されます。
私は赴任当初は単身ですが、半年後を目安に家族を呼び寄せる計画であったため、単身用の住居(半年程度の一時的滞在)と世帯用の住居の両方を探しました。
以下、住居選びのポイントをまとめます。
1.契約条件
(1)契約期間
都市によって異なりますが、チェンナイ駐在員については1年契約としている方が多いです。
なお、11か月を超える契約期間の場合、FRRO(外国人登録)の際に、裁判所登録を求められ、借主と大家にそれぞれ費用と負担がかかるため、契約期間を11か月とするケースもあるようです。
(2)ロックイン期間
ロックイン期間中は借主も大家も共に契約を解除することができません。
この条件の有無、期間については大家によって異なりますが、だいたい6~12か月で設定するケースが多いようです。
(3)退去通知
ロックイン期間が終了すると、借主または大家は退去通知を出すことができます。
例えば、この期間を「1か月」に設定した場合、「退去日の1か月前までに先方に通知」しなければなりません。仮に「1週間後」の退去が急遽決まった場合であっても、「向こう1か月分」の家賃を支払わなければなりません。
できるだけ短い期間に設定するのが良いように見えますが、仮に「3日」に設定した場合、裏を返せば大家から「3日後に退去してくれ」と言われる可能性があります。
また、住居選びは余裕をもって「1か月」かかると見積もっておいたほうが良いです。
以上から借主と大家双方の妥協点として、退去通知期間を1か月とするケースが多いようです。
(4)デポジット(敷金)
修繕費や未払いの電気代などを引いて退去時に返却されるものです。
しかし、大家によっては多額の修繕費がかかることを理由にデポジットを返還しないケースもあります。
チェンナイでは6か月以上のデポジットを契約締結時に納めることが普通であり、入居に際しては多額のインドルピーが必要となります。
また、退去時にデポジットが返還されたとしても、インドルピーは国外への持ち出しを禁止されており、国外ではオフィシャルには他通貨に両替できません。
さらに、年70万ルピー以上の国外送金分については5%課税されます(2021年2月時点)。
このように赴任当初はインドルピー不足に悩まされ、帰任直前は過剰のインドルピーに悩まされることになります。
ちなみに、インドルピーの紙幣はすべてガンジーの肖像が描かれています。
まさかこの顔に悩まされる日が来るとは思いもしませんでした。
(5)仲介手数料
不動産エージェントに支払う手数料で、相場は家賃の1か月分です。
2.契約形態
(1)サービスアパートメント(ホテル)
ホテルの部屋にキッチン設備、洗濯機が備え付けられているイメージです。
家具・家電・調理器具・食器も備わっており、インターネット、ケーブルテレビ、電気ガス水道および、ハウスキーピングや家電・設備のメンテナンスも含まれています。
メリットは以下の通りです。
・デポジットが少額もしくは不要
・仲介手数料が発生しない
・建物内にジム、レストランなどが併設されている場合がある
・電気ガス水道といったライフライン設備が比較的しっかりしている
・家電・設備のメンテナンスに時間を割かれない
デメリットは以下の通りです。
・家賃が高い
・キッチン設備や洗濯機が設置されておらず、家事が制限されるケースがある
・専有面積が比較的狭い(単身はワンルームもしくは1ベッドルームとするケースが多いです)
(2)家具付き物件
家具・家電およびガスや電子レンジなどの基本的設備が備えられている物件です。
インターネット、ケーブルテレビ、電気ガス水道代などは別途借主が負担します。
ハウスキーピングは含まれておらず、必要であれば別途借主が雇用する必要があります。
また、設備のメンテナンスや修繕の責任の所在については「メジャープロブレム」か「マイナープロブレム」かで区別されることがあり、前者は大家負担、後者は借主負担となります。
メリットは以下の通りです。
・家具・家電などの基本的設備が備え付けられている
・専有面積が広い(一般的な部屋タイプは3~4ベッドルームです)
デメリットは以下の通りです。
・多額のデポジット必要
・仲介手数料が発生する
・家電・設備のメンテナンスに対応しなければならない
(3)家具なし物件
家具・家電をはじめほとんどの物品を自分で購入するかレンタルを手配することになります。
その分、家具付き物件と比べ費用を抑えることができる可能性があります。
前述のサービスアパートメントか家具付き物件が人気ですが、長期駐在を予定している場合は、家具なし物件も選択肢としてはあり得ます。
3.チェックポイント
(1)大家
「物件選びは大家選びである」といっても過言ではないです。
大家との良好な関係を築ければ、家電・設備に関するトラブルは真摯かつ迅速に対応してくれ、また、デポジットの返還に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
どんなに良さそうな物件であっても、停電、水漏れ、家電の故障といったトラブルは起こります。
トラブルが起こった時に大家が親身になって対応してくれるかどうかで、住環境の快適さ、安心度が変わってきます。
そして住居関係で一番深刻なトラブルは、多額のデポジットが返還されないことです。
デポジットの金額が100万円くらいになることもざらにあり、返還を巡って法廷闘争に発展するケースもあります。
大家とのコミュニケーションの中で不信感を抱いたり、お金に執着している様子が見られた場合は、その大家との契約を避けた方が無難です。
(2)水
水道水は飲めません。料理にも使いません。
ペットボトル入りの飲料水やウォーターサーバーを別途用意する必要があります。
物件によってはウォーターサーバーが設置されていることもあります。
生活用水についても、水道から出る水が濁っていることもあり、住居選びにおいては水質にも注意する必要があります。
またギザ(給湯器)の容量が十分でないと、シャワーの途中でお湯が足りなくなることもあり、注意が必要です。
(3)騒音
道路ではクラクションが鳴り響き、寺院では爆音で祈りを捧げ、結婚式場やパーティー会場では爆音に合わせて踊り狂う、このようにインドは騒音に囲まれています。
時期、曜日、時間帯によって交通量やお祈り・パーティーのタイミングは変わるため、入居前にすべてを把握することは困難ですが、物件の立地環境を確認する際に、「騒音」という観点も念頭においておくと良いです。
ちなみに私の物件と同じ建物の地上階にレストランバーがあり、週末の夜はナイトクラブの様相となります(コロナの影響もあり、今は比較的おとなしいようです。それでも重低音で建物が震えます)。
そのため、地上階からできるだけ離れた高層階を選びました。
4.私はどうしたか
赴任直後~2か月目は一時的滞在先として、サービスアパートメントをインド渡航前に2か月間分予約しました。
ホテルと同様に日本からも予約ができ、支払いも現地でクレジットカード払いができました。
この間に物件選びを行う予定でしたが、サービスアパートメントでの生活が快適で、特段問題はなかったため、同物件での契約交渉に本腰を入れました。
コロナの影響で部屋の稼働率はかなり低く、ホテルの宿泊レートも当時は底値だったようです。
そのため、サービスアパートメントの一番のデメリットである価格が高い点は、そこまで大きな問題にはなりませんでした。
また、契約交渉の間、サービスアパートメントの担当者は親身になって対応してくれ、信頼関係を築くことができました。
結局、2か月目~6か月目は単身用のワンルームをそのまま延長、6か月目以降は世帯用の1ベッドルームで1年契約を結びました。
結果、デポジットや仲介手数料といった初期費用を抑えることができました。
また、電気ガス水道といったライフライン設備が比較的しっかりしているため日常生活に支障はありません。
さらには、家電・設備のメンテナンスについてもサービスアパートメント側が対応してくれ、私の時間が割かれることはありません。
今のところは快適に暮らすことができています。