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【雑記】 「先生の白い嘘」原作漫画を性犯罪被害者が読んでみた。

こんにちは。

産後間もなくでなかなか頭が働かない痲-ma-です。

産後間もなくで頭が働かないにも関わらず、今話題の「先生の白い嘘」原作の漫画を完読してしまいました。漫画はサクサク読めるので良いね。

※漫画自体はサクサクは読めるけど、内容的にはサクサク読むようなものじゃない

読んでみてまだ整理が出来ていない部分もあるけれど、思ったことを書いてみる。
ちなみに私は大学院生時代、アメリカに在住時に性犯罪の被害に遭っています。漫画とは違い、加害者は知らない人で通り魔的な遭遇です。なので、漫画のケースとはちょっと違う。

加害者に好意を抱くという錯覚

漫画でも描写があり、私も共感した部分は、被害者の加害者に対する好意。

漫画では、最初に被害に遭う瞬間の被害者達の表情が本当に痛々しくて見てられない。表情だけで、心が死んだ瞬間を感じる。でも、そんな目に遭ったのにその後も逃げることなくズルズルと逢瀬を重ねてしまう彼女たち。被害者のうちの一人は、自分たちの関係こそ愛があるといって自己犠牲的に献身してしまう。はたからみると全然愛されてなどないことは分かりきっているのに。

私の場合は知らない人に夜道で襲われたので、加害者に会ったのは被害に遭ったその日と、警察署のマジックミラー越しに相手を見た日、2回のみ。彼の人となりも知らなければ、何故行為に至ったのか、どういう環境で生きてきたのかなども分からない。あくまで推測出来ることとして、近くにあったかなりの貧困地域で育った人だろうということくらい。

加害者の彼が捕まるまで私は気が気でない日々を過ごしてた訳だけど、経験してしまったことをフラッシュバックする中で、だんだんと「致し方ない彼の事情」をかってに想像して、記憶として補完するようになっていた。あの時彼はどうしようもなく傷ついていて、私に救いを求めてたのかもしれない…とか。目が合ったとき、なんだか心が通じ合った気がする…とか。

今思うと、そんなことは多分(いやほぼ確実に)ない。でも、そういう、ある意味でロマンチックな空想で補完しないと、自分の中での辻褄を合わせる事が出来なかった。何の理由もなく、自分がただ暴力を受けたという事実を認めるのがとても大変だった。

漫画では、割とサクッと表現されていた気がするのだけど、経験者は読むと痛みを伴うかもしれないのでそこは注意かもしれない。

被害を受けるほどに、無意識に媚びてしまう

あとは、漫画では直接的に説明はなかったけれど、気になったのが、主人公はじめとする登場人物たちの服装。

主人公は、真面目なシャツとパンツ姿でありつつも、被害にあいつづけている先生時代はピッタリとして体のラインがわかるような服を着ている。スキニーっぽいパンツをはいた後ろ姿も、よく描かれていた。

他の登場人物も、自分が性的に見られてしまって本当は傷ついているはずなのに、その部分を強調するような服装をあえて選んで、進んで「選ばれる性」としての自分をアピールしてしまっていたり。かなり意図的に作者は表現しているのだと思う。

これって、性の関係性やコンプレックス、心の傷のようなものを抱えているうちは、意識しないようにしててもどうしてもそっち側に寄ってしまうというか。もう本当にどうでもいいなと吹っ切れた時に初めて、心から自分の好きな格好をしたり自分らしくいられるようになるのだと思う。

似たような描写が、確かこの本にもあった気がする。

自分が抱えていた恋愛や性愛、人との関わりにおいての傷の部分が癒えていくに従って、例えば女性らしくいなきゃいけないとか選んで貰える自分にならなきゃいけない…みたいな思い込みが溶けてなくなって自然体になる。

「先生の白い嘘」の漫画も、服装的に最後の部分は救いが感じられたような気がするので、そこは良かったなと思いました。

心が死ぬ感覚は伝わるのかどうか

漫画を読んでいてちょっと思ったのは、被害を受けた人たちの「心が死ぬ感覚」が経験したことがない人にも伝わっているのかどうかという部分。加害者は本当に胸糞悪い人物として描かれているので、その人に対して嫌悪感を抱く人はかなり多いかと思うのだけど、被害者も被害者で悪くない?と思わせている部分ももしかしたらあるような気がする。

それも含めてあえての表現なのだしたらさすがだなぁと思うけれど。

同じように性被害を描いたストーリーでlovely bonesという小説があるのだけれど、この小説は被害を受けた瞬間の心が死んでいく感じ、幽体離脱感がものすごくリアルで苦しくなるくらいだった。

漫画と小説という違いがあるからというのもあるけれど、自分の身体が自分のものではなくなる感覚…幽体離脱するような感覚というのを、ダイアログだけではなくもっと色んな表現で見たかったなぁと少し思いました。でも漫画でそれをやると、あまりにも辛すぎるのかも。

美奈子の虚言癖はどこからやってきたのだろう?

主人公には美奈子という友人がいて、彼女が加害者の婚約者でもある。

美奈子には出会った当初から虚言癖があるという設定。そして、お金もちの娘という設定。母親も漫画の中では登場するのだけれど、表面的には順風満帆な家庭そうで、若いころの回想シーンでも、既に美奈子は虚言癖持ちだしで、いまいち美奈子が虚言癖に至った経緯がよくわからない。

加害者の方は育った環境の回想シーンなどがあるんだけど、美奈子は何故この加害者に惹かれて、色んなことがありつつもこの人と結婚しようとまで思い至ったのだろうか。

被害者、加害者を中心に話が展開していくのでどうしても美奈子の話の詳しいところまでは描かれなかったのかもしれないけれど、私はこの美奈子がどのようにして美奈子になるに至ったのかのストーリーを知りたいなと思った。

まとめ

なんとも、産後に読むには重すぎる内容の漫画ではありましたが、難しいテーマをたくさん盛り込んでいて良くまとまったなぁというか、色々と改めて考えさせる漫画だったなぁと思う。

最後、あれは救いがあったのかどうか、という部分もそうだし、両義的な話があまりにも多いので人によって受けとる部分も違うのだろうなと思う。

今は頭があんまり働いてないので、また時間をおいて再読したいなと思います。そしたらまた違うものが見える気もする。

おわり。

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