【私の経験】ルート営業
仕事の経験を書きたい、と思うと膨大な量になりそうだし、まとめられるのか。「職種ひとつひとつをnoteに書いてみよう」と書き始めました。
第4弾はルート営業。
大学卒業後、営業職として入社。
新卒研修期間が結構あって、配属は6月21日付だった。
顧客サービス課に配属、文字のごとくお客様担当。300社ほど担当させていただいた。
そこから17年間、部門内で人事異動がありながらも営業職として勤務した。
●主な仕事
社外(営業先)
コピー機の使用状況、
困りごとのヒアリング
コピー機のサンプル回収
個別の仕事を教えていただく
雑談から課題確認
複合機・ソフトウエアのデモンストレーション
社内
見積書作成
提案書作成
打ち合わせ
日報、報告書等の作成
●商品が進化するたびに自分をアップデート
17年間営業していると、技術は革新されコピー機単体が、複合機(マルチコピー機)と呼ばれるようになった。
従来のコピー機にファクス機能、プリンター機能、スキャナー機能が搭載された。
そこで新たな知識を吸収することになる。
複合機になると欠かせないのはネットワークの知識。ネットワークの専門部隊はいるけれど、毎日お客様と接する中で、自ら説明をすることは当然の仕事。毎回「調べてきます」では、お客様から「この営業に任せて大丈夫だろうか」となるだろう。もちろん、本当に調べないと分からないこともあるのは事実。お客様先で、ある程度話をしようと思うと知識をインプットしていくしかない。自学習が欠かせなかった。
ネットワークと並行してパソコンスキルを身につけることも必要だ。
パソコンネイティブではない世代。最初に触ったPCはWindows3.1だったと思う。
触るスキルはもちろんだけど、複合機導入提案の際にはパソコンセットアップに必要な知識も身につけた。
あの頃はわからないことだらけで、研修で渡された膨大な資料をまずは読む。
そのあとに詳しい人に教えてもらう、エンジニアさんに教えてもらう。
だからと言って一朝一夕で知識、スキルが身につくわけではない。
技術革新に合わせて自分をアップデートする。新商品が出たら機能を覚える、新しい機能はどんな特徴があるか。その特徴から、お客様に提供できるのはどんな価値があるか。
ざっくり知った後に、お客様固有の課題に照らし合わせる。
それの繰り返しだった。
●印象深かった営業経験
入社1~2年目の真冬の出来事。
地元の建設業者の社長から営業とは何か、大切なことを教わった。
私が担当した地域にある中小企業の決裁者は社長。建設会社の社長は帰社が非常に遅い。
今日ならいらっしゃるかも、と思ったのは雪の日。
初めまして、ではあったけれど、事務の方からかわいがっていただいていたので会社名・名前は覚えてくださっていた。
営業によっては拝み倒して「買ってください」「仕方ないな、貸しひとつな」という冗談のような会話で購入してもらう先輩がいたり、「いいじゃないっすか、買ってくださいよ」という後輩がいたり。
お客様との関係性といえばそれまでだけど、いろんな営業スタイルに人に囲まれていた。
その社長は全くそれが通じなかった。
必要な投資はするけれど不要な投資はしない。
一度「お願いします、どうしても実績が足りないんです」という自分都合の発言で購入していただいたことがある。先輩から「そう言ってこい」と言われたのもある。その時の社長は「…っ(大きなため息)そうじゃないだろう。営業はそうじゃないだろう、ちゃんと考えろ」といったのち、今回だけだ。といって購入してくださった。
そのあとどうなったか。
建設会社には必要な図面用のコピー機が販売された。一般のコピー機と異なったこと、競合相手が少なかったこと。お値段的には上級。お客様にとっての価値は十分ある商品だ。
社長は不在がちだったので事務員さんに仕事の流れや図面使用方法をわかる範囲で教えてもらっていた。社長に面談するときにはお客様にとって図面用コピー機を購入するメリットを伝えた。
値引き交渉等はあったけれど、導入していただいた。
その後も、自宅にファクスが必要だからと連絡をいただいたこともあった。
これが叱られた後の私がとった行動の結果ではないか、としばらくたってから思ったことだ。
10分以上の保留音に、お客様の憤りを感じた
納品後、足が遠のいていたお客様からの連絡を受けて私から折り返しの連絡。この時点で「足が遠のいていること」に対するお叱りだろうと想像はついていた。
折り返しの電話をかけ保留音が続く…これはもう、お怒りを態度であらわしているに違いない。
再度お電話をかけ、ようやくお電話をつないでいただいた。
「大変申し訳ございません」
「そのお詫びの意味は何か」
「(保留が長時間だった理由は)私が貴社へ足が遠のいていることに対する叱責と受け止めました」
「今から来なさい」
その後お客様からお叱りをうけ、猛省することになった。
それ以降は定期的に訪問することを心掛けて叱責を受けることもなくなった。
上司から指示される訪問サイクルとお客様が望む訪問サイクルに差があり対応も含め難しさを感じた一件だった。
夜討ち朝駆け
地域の核となる民間事業所を担当したことがある。
入札とまではいかないけれど、大口案件の入れ替えを死守しなければならない立場としては、身が引き締まるというか緊張を強いられる商談だった。初めての大口案件でもあったので、前任の先輩と相談しながら営業を進めていった。
「足で稼ぐ営業スタイル」が主流のころ。提案書と見積書を提出した後は夜討ち朝駆けはやって当然。
事務所から車で小一時間、夜討ちで20時過ぎに訪問は当たり前。
そこから帰宅すると22時過ぎ。今では考えられない「足で稼ぐ」スタイルではあったけれど、時代のせいもありほかの人もやっているので「帰り着くのが毎日遅いなぁ…」とは思いながら大きな疑問は持たなかったように思う。
話を聞いていたらコピー機が1台売れた
農家と建設業を兼業している企業様に訪問した際のこと。
事務所のそばでとれたてラッキョウを洗っていた奥様。
「こんにちは~!!!えっ?それは???」
「ラッキョウだよ」
玉ねぎの親戚のような形なので見た瞬間にあ、ラッキョウだ、とは思ったけれど「えっ?それは(なんですか)???」と聞いたおかげで話が進みやすかった。
ラッキョウをきれいに洗浄している横で奥様がしてくださる話をただ聞いていた。
内容はもう覚えてもいない。
ラッキョウの洗浄が終わるまで話をずっと聞いていた。
すると奥様が突然、
「コピー機、買ってほしいんでしょう。1台持っておいで」
「はい、そうなんですよ。ご提案をと思ってきたんですけど」
「うん、わかった。(コピー機)持ってきていいよ」
交渉なしで商談成立。
上司から梯子を外された
この話はnoteに書いているのでぜひお読みください。
梯子を外されても、ちゃんと見ている人がいて安心した話です。
長く営業をやってきたので、よいことも叱られた経験もたくさんある。
数字目標は大変じゃない?と聞かれたことも多々ある。
営業の仕事は、スケジュールが自分でたてられる。お客様先で何を話すか、何を教えていただくか、それも自分次第。
私には裁量がある仕事が向いている、と気づかされたのはずっとずっと後のこと。仕事のどこかに自分で判断して自分で進めていく。仕事をするうえで大切なことの一つだったように思う。
●安定した実績を出し続けることの難しさ
担当エリアが決まっていて担当するお客様も固定。
これはルート営業である以上、やむなし。
対応年数から考えた場合コピー機(マルチコピー機)は4~5年で入れ替えるお客様が多かった。
それ以上の期間ご利用いただくお客様もいるので年数が経過すれば購入していただけるわけではない。
お客様の課題をお聞きして改善提案をしていく。
先輩から言ってみたらいいよ、と言われた
「買ってください」の一押しができない自分に気づく。
後輩の「A案にしますか、B案にしますか」と選択をしてもらう方法を真似てみたり。
お客様に合わせながらこのお客様はこのやり方、あのお客様は…といろんな人の営業スタイルを組み合わせながら個別対応してきた、と思っている。
今から約1年前、私の強みは外商のような営業スタイルだとストレングスのコーチから言われた。
つまり、じっくり人間関係を構築し「あなたが言うなら」といってもらえるようになるスタイルがらしさだといわれた。
ラッキョウの洗浄を見て話をじっくり聞いていたらコピー機を買ってもらえた話はまさにそうだ、と言われたときに、腑に落ちた感があった。
●営業とは何か
私が在職した企業ではセールスレップという呼び方をした。
会社の代表として営業をする、ということ。
新入社員研修でセールスではなくセールスレップなんだ、会社を代表しているということを肝に据えて営業するように、と当時のトレーナーは熱く語っていた。
お客様の業務上課題をヒアリングし解決手段を考える。
コピー機が複合機になってからはヒアリングする項目が増えた。質問の仕方も以前より工夫が必要。限られた時間、どれだけ多くの話をうかがえるか。
「課題は何ですか」と直球で聞いても答えが返ってくるわけはない。
雑談の中からも、コピー機の使い方からもヒントを得て仮説を立てる。
そこからアプローチして、「違うよ」と言われたら、そこから会話が進みだす。
こう考えたんですけど、どのあたりが違ってましたか?!
お客様とどれだけ会話を重ねるか、そこからどれだけ仮説が立てられるか。
そこから始まるんじゃないのかなぁ、と営業を離れて20年以上たってもそう思っている。