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あたりまえにそこにあったものが、なくなった
「丸和あたりが火事らしいよ」
丸和は北九州の台所と呼ばれる旦過市場に隣接している。
年末になると、旦過市場には人があふれる。
軒先に並んだ魚、野菜、飾り餅、お節料理の食材、正月飾り。
様々な商品を取り扱う商店が決して広くない通路に並んでいる場所。
我が家も例にもれずその場所に買い出しに出かける。
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そのあたりが火災だ、と聞こえたのだ。
友人と食事した帰りのバスセンター。
西鉄バスの係員の「迂回運行」の声が拡声器から聞こえる。
久しぶりに会った友人とバスセンターでも会話していて気分は高揚したままのわたし。臭いはするものの炎は見えない。
その事実をさらっと、さらっと受け止めていた。
ルート変更されたバスの車窓から見えた様子に愕然。「バク」っと、心臓がイヤな音を立てた。呆然とその炎を見つめた。
隣で友人がなにか言っていたけれどその声もよく聞き取れない。
車窓のざわめき。
真っ赤な炎と黒煙。
夜なのに黒煙って見えるんだ…そんなことを思った。バスの中にも独特な臭いが立ち込める。
帰宅後、自宅マンションから火災方向を見つめる。真っ赤な炎と黒煙。
どうなってしまうんだろう。
せめて、せめて被災が最小限で済みますように。
翌日、地元のニュースはその話題で持ちきりだった。
我が家から、まだ白煙は見えるし、上空にはヘリコプターもいる。
独特な臭いは部屋の中にいても入ってくる。
それから4か月後。
再び火事が起きた。場所は前回と同じエリア。この火災で昭和館が焼け落ちた。
映画好きの方はご存じかと思うが、ここはミニシアターだ。
大きな映画館(シネプレックスとか)とは取り扱う作品が違うようだ。俳優さんから好まれた映画館のようで、トークショウなどがイベントとして行われたりもした。
※私の理解が浅く、表現が好ましくなかったらごめんなさい。
![](https://assets.st-note.com/img/1717557392280-QeHtxeJhVI.jpg?width=1200)
その映画館が焼失したのだ。
80年以上の歴史を持つ映画館。
そこにあってあたりまえ、だと思っていたものがなくなった。
館主である樋口智巳さんのことを存じ上げているわけではない。
この2年の間、館主の話を直接聞く機会があった。
映画が好き、映画館が好き、みんなの居場所を作りたい、持ち続けたい。
昨年発売された「映画館を再生します」には、火災から復活までの477日というサブタイトルがある。
行きつ戻りつしながらの記録。
昭和館がなくなって、わたしには「場」がなくなりました。
中略
一度目の火災では…
昭和館がみんなの「場」になりました。警察や、消防や、記者の方々に、ロビーでくつろいでもらいました。
中略
劇場の座席で記事を書いている記者さんもいました。
第3章のタイトルはズバリ「わたしたちの居場所。」
誰しも、自分の居場所を求めるのだと思う。
それが職場なのか、自宅なのか、それとも第三の場所と言われる場所なのか。
そこにいると、そこにいくとホッとする場所。自分らしくいられる場所。
昭和館は多くの方々にとって「自分の居場所」なんだと思う。
昭和館は昨年12月、営業を再開した。
映画好き、昭和館好きの方々は待望の再開だったと思う。
あたりまえにそこにあったものがなくなってから再生に至るまでの記録。
再開するまでの館主の悩み、苦悩。
再開を待ち望む方々、俳優、監督など制作スタッフの願い。
そして昭和館は再開した。
行く場所がある
行きたい場所がある
自分らしくいられる場所がある
なんて素敵なことなんだ。
わたしにとっての居場所、居心地のいい場所。好きな人たち、仲間といられる場所はきっとそう。
あなたにとっての自分の居場所はどこですか。そこにいると、どんな心地がしますか。