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わが卒論①(プロ野球のチケット販売におけるフレックス・プライシングの枠組みと効果)

初めまして。希ガス(@ma211126)と申します。
私は2023年3月に大学の経済学部を卒業し、4月から社会人となります。
大学では計量経済学を学ぶゼミに入っており、この度卒業に際して卒業論文を執筆したのですが、苦労して書いたにも関わらずこのまま誰の目にも触れずに消えていくのはあまりにももったいないと考えたため、内容を再構成してお届けしようとした次第です。

さて、私は大の野球ファンです。昔から、日ごろから野球の試合を神宮球場を中心に観戦しておりましたほか、2022年の9月には現在MLBのロサンゼルス・エンゼルスで活躍されている大谷翔平投手を生で観るために本拠地の「エンゼルス・スタジアム・オブ・アナハイム」に来場しており、さらにその近隣にあるロサンゼルス・ドジャースの本拠地「ドジャー・スタジアム」にも来場しました。



エンゼル・スタジアム・アナハイム
ドジャー・スタジアム

どちらの試合もとても楽しく拝見しましたが、実はチケットを購入する際に、今回の卒業論文につながる「気づき」がありました。それは、
「メジャーのチケット代、球場によって違いすぎね?」
というものです。

今回のチケット確保には「gametime」という米国のサイトを使用しましたが、球場によってチケットの最低価格が全く異なるのです。2月28日時点では、4月10日に開催されるエンゼルス・スタジアム・オブ・アナハイムでの「エンゼルスvsナショナルズ」のチケット最低価格は2ドル(このほか手数料を支払う必要あり)ですが、一方で4月14日に開催されるフェンウェイ・パークでの「レッドソックスvsエンゼルス」のチケット最低価格は37ドルとなっています。
実際私が観戦した際にもエンゼルス戦のチケット代は約7ドルでしたが、ドジャース戦は約28ドルでした。

このように、MLBでは試合によって大きく価格差があるのです。こうした価格差の原因として、MLBのチケットはgametimeなどの民間業者が多く販売しており、こうしたサイトは「ダイナミック・プライシング」という、予想される需要に倣って数分ごとに価格を変化させるシステムを採用していることにあります。需要に合わせてチケットの価格は大きく下がり、また大きく上がるのです。

翻って日本はどうかというと、巨人や広島ではすべての試合で同一の価格を採用しており、またDeNAなどカテゴリー制(フレックス・プライシングという)をとっているチームでも最高カテゴリーの価格が最低カテゴリーの倍を切るなど、比較的価格の幅が小さくなっています。


アメリカのような価格の幅が大きい販売体系の場合では、チケットを売り出す球団側のメリットとして、

  • 人気のある試合では可能な限り価格を釣り上げて収益性を高める

  • 不人気が予想される試合では価格を下げて空席を減らし、球場内の売店等での収入確保を目指すことができる(顧客側は安く試合に入場できるというメリットを享受する)

というのがあります。このシステムは球団側に大きなメリットがあり、一見すると日本でも一刻も早く全面的に導入するべきのように思えます。実際福岡ソフトバンクなどは全面的に導入しており、他の球団でも一部の席で導入しています。

しかし、全球団で全面的に導入する、というわけにはいかないようです。それは、日本でダイナミック・プライシングを導入するデメリットとして、

  • 数分ごとに価格が変化することによって生まれる購入側の不公平感

  • (主にIT系でない企業)ダイナミック・プライシングのシステムを導入する際のコスト

があります。

ここで、日本オリジナルである「フレックス・プライシング」、つまりカテゴリーごとに価格を分けるシステムが日本でどのように展開され、其の結果施行前と比較してチケットの売り上げにどれほどの影響を与えているかを研究しようと考えました。

研究対象としたのは2014年からフレックス・プライシング導入を開始した阪神、2016年から開始した東京ヤクルト(著者のひいきチーム)、2018年の横浜DeNAです。

②に続く

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