マネージング・フォー・ハピネスでよりよいチームづくりの探求を始めませんか?
Management 3.0 アドベントカレンダー2022の11日目の記事です。
今年はようやく(時々距離を置くこともありながら)長年コツコツと進めてきた「マネージング・フォー・ハピネス」を世に出すことができました。もう読まれましたか?もしまだの方はご自分へのクリスマスプレゼントとしてぜひポチッといってもらえたら…(宣伝失礼しました)
というのがマネージング・フォー・ハピネスの主要なメッセージのひとつですが、この本においては10章で「(エンゲージメントを高めるために)システムをマネジメントする」といった書かれ方で伏線回収されています。具体的には、「ムービングモチベーターズ」というやり方が紹介されています。
これは著者のヨーガン・アペロ氏がいろんな文献から拾ってきた「人をドライブさせるモチベーター(やる気にさせる何か)」をチームで一緒に仕事をするというビジネス文脈に沿って10個に選択/集約したものです。
抜粋するとこんな感じですね。
マネージング・フォー・ハピネスのなかでは、これを「システムをマネジメントする」という目的のために、
チームや組織のメンバーが何のモチベーターを大事にしているかを理解しあう
そのうえでそのモチベーターが満たされるような仕組み(システム)をチームや組織に導入する
という使い方が紹介されています。
例えば、私はこのなかでいうと1番大事なのは「熟達」ですが、もう少し具体的に書くと「マネージャーとして、チームや組織にいる各個人が在りたい姿を見つけてそこに辿り着けるように自分からトライ&エラーを重ねて邁進していき、なおかつ共通の目的を達成するためにそれぞれの個を活かしたコラボレーションを発揮し、総体としてのパフォーマンスを最大化する状況に持っていく能力を研鑽する」という意味での「熟達」です。
なので、これが満たされる状況を考えると
チームメンバーが(単なる会社の目標管理ではない)自身の目標を持ってくれている
チームメンバー同士が仕事上の課題解決のためのMTGを自分から開催してくれている(私がいないところで、だとなお良し)
チームメンバー同士のディスカッションにおいて妥協や甘えがなく、成果を高めることに対して真摯に向き合ってくれている
チームメンバーが自身の成果をアピールしてくれる
チームのアウトプットがステークホルダーに評価されている
みたいなところが挙げられます。
で、次は、こういう状況になる可能性が高まるようなアグリーメントとかルールとかプロセスとか約束とか制度をチームや組織に導入するにはどういう方法があるかを考えます。
例えば、2.や3. を実現するには、チームメンバー同士の会話が発生しやすくなるような何か
雑談会/懇親会
バディ制での仕事
価値観の共有(4章)
好き嫌いの共有(2章)
あるいは、会話の質が上がるような何か
コミュニケーションのルールとしてNVCやフィードバックラップ(7章)をおく
悪魔の代弁者みたいな役割を意図的に設ける
レビュー時に指摘はあくまで成果に対するものでレビュイーに対するものではないですよ的なグランドルールをおく
が有効かもしれません。
というのを、自分のモチベーションをドライブさせるという観点で考えただけでもいくつか考えられますが、当然チームは自分だけではなく。
これをチームメンバーそれぞれの観点でも同じように考えて、お互いに理解し、最後にチームとして合意できるラインのアクションを決めていくような感じにしていきます。
例えば、なかには関係性や受容を大事にしていて厳しい指摘をすることに抵抗を感じるメンバーもいるかもしれません。こういう場合、自分を押し通す/自分が身を引くよりも、Liberating StructuresのWicked Questions的に二兎を得るためにはどうしたらいいかという方向に話を向けるのがよいと思います。
抽象度の高いレイヤーでは相反しているように見えても、前提や場合分けについて掘り下げたり、上位の目的についての理解や合意を得るようにすれば、お互いに納得できる結論に辿り着きやすくなります。ここの対話にかけた時間の量がチームの関係の質をつくる側面もありますしね。
もちろん、そこで決まった最初のアクションがそのまま当たる可能性も高くはないので、アクションした結果を踏まえてどう改善していくか(ピボットするか、研ぎ澄ますか)を決められるふりかえりの場をセットでつくっていくのが大事です。
こういったふりかえりのフォーマットはたくさんありますが、マネージング・フォー・ハピネスで揃えるならセレブレーショングリッド(12章)を使ってみるのもよいでしょう。
さらには、一連の流れ(ディスカッションの場づくりや当日の進行から意思決定、アクションの実施からふりかえり)では複雑系思考という考え方をベースにして捉えていきます。
簡単にいうと、複雑系思考とは、
コントロールよりもエンパワーメント
ヒエラルキー(or要素還元)よりもネットワーク
のように後者に重きを置いた考え方です。
なので、例えばメンバーとモチベーターについて話すMTGについてマネージャーが発言の順番や次にやることを仕切って「従わせる」ようなやり方は、もしかしたら期待した状況を遠ざけるような結果になるかもしれませんね。
アクションについても、権限委譲の7段階(3章)で1(指示する)、2(説得する)、3(相談する)にあたるような決め方だと、結局は決定権がマネージャーにあるという前提をチームメンバーが持ってしまう可能性があるため、チームメンバーが自分から動くという状況を遠ざけるような結果になるかもしれません。
特にMTGといった皆が集まる場においては、その場の権限(権威かな)が今どこにあるのか、等しく分配できているかどうか、特定の誰かにホールドされていないかどうかという観点が大事になってきます。
「個人の振る舞いはその人の特性と周りの環境(システム)によって決まる」といったことがレヴィンの法則として表現されていますが、上記の観点を踏まえて「うまく」導入できた仕組みは、チームや組織の振る舞いに影響をあたえる「システム」として機能していくはずです。
これが「人ではなくシステムをマネジメントする」ということにあたるのかな、と思います。
まあ、システムも動的なので、1回導入して終わりではなく、構成している要素(関わっている各メンバーや各組織)のつながりや結びつきの度合いや、コントロールとエンパワーメントの度合いをミキサーのスライダーとかつまみを調整するイメージで手入れしていく必要はあります。
この辺は変化を導入する人(チェンジエージェント)のことをファーマー(庭師)として表現し、土壌を耕していく(Cultivate)というメタファーがしっくりきています。とはいえ、その庭師もシステムの一員という視点はお忘れなく。複雑系は神なき世界。
というのが、マネージング・フォー・ハピネスにおける探求かなーと思っているところですが、もし興味関心持っていただけたら、ぜひマネージング・フォー・ハピネスであなた自身の探求を始めてもらえると嬉しいなーと思います。