19:お注射

好きな季節を聞くと、秋と答える人が多い気がする。読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋。何事も適度な環境が整い、活動するのにはもってこいだ。

ただ、僕にとって秋は嫌な季節だ。

なぜなら、注射の秋でもある。
僕は注射が大っっっ嫌い!!!なのだ。

思えば子供の頃から嫌だった。
予防接種を幼稚園の仲良し何人かで一緒に病院に行ったときも泣きながら、「やりたくない!ヤダヤダ」とゴネたのをよく覚えている。
先生から「前の〇〇君は何も言わずに注射したわよー!君もがんばろうねっ!!」と言われ劣等感に苛まれたのも覚えている。
なんであんな凶器を受け入れるのか。 
先端恐怖症も相まって、より怖い。そして痛い。 

人間なんてただでさえ穴だらけだ。
これ以上、増やさないでほしい。切に思う。


中学からはしばらく注射を打たない日々を過ごすことになる。受験期にインフルエンザの予防接種を受けろと言われたが、「俺はかからないから!」と一喝しやり過ごしてきた。

実際に、30年かかったことはない。



そんな逃げ続けた僕が再度、相見えることになる。


秋口に行う、健康診断だ。


入社後はそこまで注射に不安はなく数年過ごしたが、ある決定的な出来事が25歳ごろに起こる。


会社内でいつも通りに健康診断を受ける。
体重の増加で、痩せないと!と意気込みつつも採血を迎える。

身長測定、触診など行い最後に採血がある。

利き手の右腕を出し、注射針を刺して血を抜く。
刺した瞬間、いつもよりピリッとした。

痛いなと思いつつも、他の診断に向かう。

色んな診断をこなすも、中々その痛みが無くならない。
むしろ、脈を打って痛みが増してきた。


怖くなり、翌日に小さい診療所に向かうも
針を刺した際に、神経が損傷している可能性があるが、ここでは判断できないと言われ大きい病院へむかった。

道中、当時の知人にその旨を伝えると
知人のの元同僚がある有名な大学病院で治療をした際に、麻酔針で神経を損傷し、麻痺が数ヶ月経っても取れず裁判沙汰になってると聞かされた。

利き手の右が痺れる僕は、当然ながらより怖さが増してしまう。病院に向かう際に、偶然にも入口で元上司にふと出逢ったが、僕が顔面蒼白で心の診察に来たかと勘違いしていた。

乱れた心で診察を受ける。
神経は傷ついてるけど、数日で治るとの言われ、乱れた心は少し落ち着いた。本当に怖かった。


2度と利き腕で採血をしないと心に誓った。




けど、
僕の腕は利き手の方が良い血管があるらしく、ナースは毎回利き手でやりたがる。

勘弁してくれ、、、腕を毎回捨てる覚悟で挑んでいる。そんな採血なんだ。

本当に嫌だ。




ふと、風呂上がりに太ももに青タンがあることに気づく。
特にぶつけた記憶もないのだが、数日後に青タンの原因のフラッシュバッグが走った。






採血の際に、
思いっきりツネってるんだ!


痛みを腕から太ももに移すため。より痛いのがあれば、そっちが気になる戦法だ。





人は、極限状態になると新たな技をつくりだす。きっと、また何か生まれるだろう。

限界を超えた先にあるのは、
注射の恐怖の払拭だ。


ひとまず、太もも殺しを使える僕にはしばらく戦う猶予はでた。負けない。
みんな、なにか怖かったらこの技を使うんだ。
必殺!太ももツネり!!!


注射とのソーシャルディスタンスを取るべきの会 会長 鈴木ゼウス