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45:誤毒
自分が間違って理解してしまうこと、逆に相手が間違って理解して物事が進むことがある。功を奏してそれが新たな価値になることもあったのだが、大抵は良いことはない。
僕は疲れると声が出なくなるのもあるが、誤読がすごく多くなる。
街中の看板や広告、特にメールが酷い。人妻からメールが来た!とドキッとしたら、人事からだった。
この文を打っているときにまた心は揺らいだが、疲れると集中力が落ちてしまう。
そんな誤読で、思い出すことがある。
あれは小学校高学年ごろであろうか、母と近所のスーパーに向かった。いざ入店すると、店頭コーナーに炭酸水が入った段ボールに特売のPOPが貼ってあり、
ゲロルシュタイナー
○○円!!
とデカデカと書いてあった。
今思えばなんてことのないPOP。
これはドイツ生まれの炭酸水なのだが、日本では認知度が高くなく印象だ。しかし、当時の僕は「ゲロしたいなー」と読んでしまい、それが面白くて堪らなかった。
なんで、
吐きたいのかと。
それも「したいなぁ」という字面にも思えるので、そこまで緊急性はない。吐きたかったら「ゲロシタインデスケドマジデー」になるはずだし。
「ナンカフクロトミズモッテキテー」を2本目に飲みたい気分にもなる。
家族といるときに笑顔がない僕ですら、笑みが溢れる素敵なスーパーでの出来事だった。
ではなぜ唐突にこんなことを思い出したのか。
それは今僕が、
ゲロルシュタイナーだからだ。